買収資金の調達で、信用保証協会の保証を使えないかというご質問をいただきます。制度の枠組みと、確認すべきことを整理します。要件は変わるため、必ず窓口でご確認ください。

信用保証協会とは

まず仕組みを整理します。信用保証協会は、中小企業が金融機関から借り入れる際に、公的な保証を行う機関です。各都道府県などに設置されています。

保証が付くことで、金融機関は貸し倒れのリスクが軽減され、融資を受けやすくなります。

借りる側は、信用保証料を負担します。金利とは別の費用です。

手続きは、金融機関を経由して申し込むのが一般的です。金融機関の窓口で「保証協会付きで」と相談する形になります。

事業承継に関連する保証

信用保証協会には、事業承継やM&Aに関連する保証の枠組みが設けられています。

代表的なものとして、事業承継特別保証があります。これは、一定の要件のもとで経営者保証を不要とすることを特徴とする制度です。

また、経営承継借換関連保証など、承継に伴う借入の借換えに関する枠組みもあります。

ただし、制度の内容・要件・期限は改正されます。本稿は2026年9月時点の一般的な説明であり、適用の可否は必ず金融機関または保証協会の窓口でご確認ください。

買収資金に使えるかは個別判断

率直に整理します。「買収資金だから使える・使えない」という単純な線引きではありません。

保証の対象となる資金使途、申込人の要件、対象となる事業承継の形態。これらを個別に満たす必要があります。

また、保証協会ごとに運用が異なることがあります。都道府県の制度融資と組み合わせる場合、その自治体の要件も関わります。

したがって、一般的な情報で判断せず、実際に相談してください。相談自体に費用はかかりません。

経営者保証を不要とする制度

買い手にとって、金利以上に重要な論点です。

経営者保証に関するガイドラインでは、法人と個人の資産が明確に分離されていること、財務基盤が強固であること、適時適切に財務情報が開示されていることなどを満たす場合に、保証を求めない可能性が示されています。

金融庁の公表では、経営者保証に依存しない新規融資の割合は2024年度上期で52%に達しています。

保証協会の制度にも、経営者保証を不要とする枠組みがあります。要件を満たせるかを、早い段階で確認してください。

保証が付くかどうかは、買収の可否そのものに関わることがあります。

保証料を計算に入れる

費用として見落とされやすい項目です。

信用保証料は、保証を受ける対価として支払います。料率は、保証の種類、企業の財務内容、保証期間によって決まります。

借入額が大きければ、保証料も相応の金額になります。金利と合わせた実質的な負担で比較してください。

なお、自治体によっては保証料の一部を補助する制度があります。これも窓口で確認する価値があります。

「金利は低いが保証料を入れると高い」ということがあり得ます。総額で比べてください。

申込みから実行までの時間

日程に影響する点です。

保証協会の審査が加わるため、金融機関のプロパー融資より時間がかかるのが通常です。

金融機関での審査、保証協会への申込み、保証協会の審査、保証の承諾、融資の実行。それぞれに日数がかかります。

クロージングの日程から逆算して、余裕を持って着手してください。「あと2週間で実行してほしい」という依頼は、現実的ではありません。

基本合意の前後には相談を始めるのが実務的です。

必要な資料

申込みにあたって求められる資料の例を挙げます。実際の必要書類は金融機関・保証協会にご確認ください。

買い手側。決算書、試算表、登記事項証明書、納税証明書、資金繰り表。

対象会社。決算書、事業の概要。

買収に関する資料。基本合意書、株式譲渡契約書(案)、譲渡代金の内訳。

事業計画。買収後の収支と返済の見通し。

対象会社の資料が必要になるため、売り手の同意が要ります。秘密保持契約の条項も確認してください。

プロパー融資との組み合わせ

実務でよく取られる形です。

保証協会付きの融資と、金融機関のプロパー融資を組み合わせる。

保証には限度額があるため、必要額の全部を保証で賄えないことがあります。不足分をプロパーで補う設計です。

また、既存の保証枠を使っている場合、新たに使える枠が限られます。自社が現在どれだけ保証枠を使っているかを、先に確認してください。

金融機関の担当者に、枠の状況を聞くのが早い。

窓口で確認すべきこと

まとめます。相談の際に聞くべき項目です。

① 買収資金は対象になるか。資金使途としての可否。

② どの保証制度が使えるか。事業承継関連の枠組みを含めて。

③ 経営者保証を不要とする制度は使えるか。要件を満たすか。

④ 保証料の料率と総額。

⑤ 申込みから実行までの期間。

⑥ 必要書類。

⑦ 自社の保証枠の残り。

本稿は2026年9月時点の一般的な整理です。制度は改正されるため、必ず最新の情報を窓口でご確認ください。

※ 本稿は一般的な考え方をご紹介するものであり、個別の法務・税務アドバイスではありません。実際の取り扱いは会社の状況や契約の定めによって異なります。専門家にご確認ください。

よくあるご質問

A.「買収資金だから使える・使えない」という単純な線引きではありません。資金使途、申込人の要件、対象となる事業承継の形態を個別に満たす必要があり、保証協会ごとに運用が異なることもあります。必ず金融機関または保証協会の窓口でご確認ください。
A.事業承継特別保証や経営承継借換関連保証といった枠組みがあります。事業承継特別保証は、一定の要件のもとで経営者保証を不要とすることを特徴とする制度です。ただし制度の内容・要件・期限は改正されるため、窓口でご確認ください。
A.経営者保証に関するガイドラインでは、法人と個人の資産が明確に分離されていること、財務基盤が強固であること、適時適切に財務情報が開示されていることなどを満たす場合に保証を求めない可能性が示されています。保証協会の制度にも経営者保証を不要とする枠組みがあります。
A.料率は保証の種類、企業の財務内容、保証期間によって決まります。借入額が大きければ相応の金額になるため、金利と合わせた実質的な負担で比較してください。自治体によっては保証料の一部を補助する制度があります。
A.保証協会の審査が加わるため、プロパー融資より時間がかかるのが通常です。金融機関での審査、保証協会への申込みと審査、保証の承諾、融資の実行とそれぞれに日数がかかります。基本合意の前後には相談を始めてください。

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Author & Supervisor

執筆・監修:株式会社プラチナパートナーズ 取締役副社長 神垣 宏康

東京都千代田区(日比谷)のM&A仲介・事業承継アドバイザリーファーム、株式会社プラチナパートナーズ取締役。成功報酬型のもと、中小企業の事業承継・会社売却を初回相談から成約まで一気通貫で支援しています。役員紹介・会社概要はこちら