進め方が合わない、担当者が変わって話が通らない、進捗が止まっている。仲介契約を解約したいという場面は、実際にあります。何を確認し、どう申し入れるかを整理します。
まず契約書を読む
解約を考えたら、最初にすることは契約書の確認です。見るのは4か所です。
① 有効期間。6か月・1年といった定めと、自動更新の有無。
② 中途解約の条項。何日前に通知すればよいか。書面が要るか。
③ 解約時の費用。違約金、既払い報酬の返還、実費の精算。
④ テール条項。契約終了後、一定期間内に紹介先と成約した場合に報酬が発生する定め。
感情が動いている状態で申し入れる前に、必ず読んでください。
担当の変更という選択肢
解約の前に、担当者の変更を申し入れるという手があります。
会社そのものではなく担当者との相性が問題であることは、実際に多くあります。会社を替えれば、資料の提供からやり直しになり、時間を失います。
申し入れは、担当者本人ではなくその上長または会社の窓口へ。理由を具体的に伝えてください。「合わない」ではなく「連絡が2週間返ってこない」「候補先の選定理由が説明されない」といった事実です。
応じる会社は多くあります。まずここから試す価値があります。
違約金の定めがある場合
中途解約に違約金を定めている契約書があります。金額の考え方は会社によって異なります。
確認すべきは、何に対する対価なのかです。すでに行った作業(企業概要書の作成、候補先への打診)に対する実費相当なのか、契約期間の残りに対する補償なのか。
前者であれば、実際に行われた作業の内容と量を示してもらってください。後者の場合、金額が過大であれば交渉の余地があります。
ただし、契約は契約です。署名した以上、一方的に無効を主張するのは難しい。だからこそ、締結前の確認が重要になります。
既に払った着手金・月額報酬
着手金や月額報酬を支払っている場合、返還されるかどうかは契約の定めによります。
実務では、返還されない設計が一般的です。着手金は着手に対する対価、月額報酬はその月の稼働に対する対価、という位置づけだからです。
月額報酬については、日割りの精算があるかを確認してください。月の途中で解約した場合の扱いです。
返還を求める場合、根拠が要ります。約束された作業が行われていない、といった事実があれば主張できますが、記録が残っていることが前提です。やり取りはメールなど形に残る方法で行ってください。
中間金を払っている場合
基本合意まで進んで中間金を支払った後に解約する、という場面もあります。
中間金は返金されない設計が多いのが実際です。当社も、基本合意後に不成立となった場合、返金はいたしません。
これは依頼者にとって不利な条件であり、だからこそ基本合意に進む判断が重いということでもあります。
逆に言えば、基本合意の前であれば、中間金の負担なしに離脱できます。迷いがあるなら、基本合意の署名前に整理してください。
テール条項をどう読むか
解約で最も重要な論点がこれです。
テール条項とは、契約終了後の一定期間内に、その会社が紹介した相手と成約した場合、報酬が発生するという定めです。紹介だけ受けて契約を切り、直接交渉するという行為を防ぐためのものです。
中小企業庁「中小M&Aガイドライン(第3版)」(令和6年8月)は、テール期間を最長でも2年〜3年以内とすることを目安として示し、あわせて対象を、その仲介会社が実際に紹介した相手先に限定することを求めています。
「あらゆる相手との成約」を対象にする条項は、この考え方に沿いません。契約書を確認してください。
紹介先のリストをもらう
実務上、必ず行うべきことです。解約にあたって、その会社がどこに打診したかの一覧を書面で受け取ってください。
これが無いと、次の会社に移ったときに同じ相手へ二重に打診することになります。相手から見れば、別々のルートから同じ案件が持ち込まれる状態です。心証が悪くなります。
また、テール条項の対象範囲を確定させる意味もあります。「紹介した」と後から主張されないために、記録を残すということです。
次の会社を決めてから切るか、先に切るか
順番の問題です。
先に解約する。すっきりしますが、次が決まるまで案件が止まります。
次を決めてから解約する。空白がありません。ただし、専任条項がある状態で他社と実質的に契約を進めることは、契約違反になり得ます。
実務的には、専任契約の期間中でも、他社に「話を聞く」ことは妨げられないと考えられます(ガイドラインもセカンドオピニオンを妨げないよう求めています)。ただし、正式な依頼は解約後にしてください。この線は守るべきです。
締結前が、唯一の交渉の機会
まとめます。解約の場面で使える手は、契約書に書いてあることだけです。
だからこそ、締結前に確認してください。有効期間、中途解約の条件、違約金の有無、テール期間と対象範囲。この4つは、署名前なら交渉できます。
「期間を6か月にしてほしい」「テールの対象を実際に紹介した先に限定してほしい」。いずれも、ガイドラインの考え方に沿った、無理のない要求です。
当社は専任でお引き受けする場合も、この4点を書面で明示し、締結前にご説明しています。