手数料の見積もりを受け取ったとき、その金額が税抜なのか税込なのかで、用意する資金が1割近く変わります。株式の譲渡代金そのものには消費税がかからないため、混同が起きやすい部分です。請求の場面で確認すべき点を整理します。

仲介手数料は課税取引

M&A仲介会社やFAが提供しているのは、相手先の探索、企業価値の評価、交渉の調整、契約の取りまとめといった役務の提供です。国内の事業者が国内で行う役務の提供にあたるため、消費税の課税対象になります。

したがって、中間金にも成功報酬にも消費税が加算されます。当社の料金体系でも、成功報酬の最低額は2,000万円(税別)と表示しています。税別と明記しているのは、この加算があるためです。

株式の譲渡代金には消費税がかからない

混同が起きやすいのがここです。株式の譲渡そのものは、消費税法上非課税とされています。オーナーが受け取る譲渡代金に消費税は上乗せされません。

「代金には消費税がつかないのに、手数料にはつくのか」と驚かれることがありますが、性質が違います。株式の売買は資本の移転であり、仲介の手数料はサービスの対価です。同じ取引の中に、非課税のものと課税のものが混在していると理解してください。

なお事業譲渡の場合は、譲渡する資産のうち課税対象のものについて消費税が生じます。詳しくは事業譲渡とのれんの消費税をご覧ください。

見積書で確認する三つのこと

第一に、表示が税抜か税込か。「成功報酬2,000万円」とだけ書かれていたら、どちらなのかを必ず確認してください。税抜であれば、実際の支払いは2,200万円です。

第二に、中間金にも消費税がかかること。中間金は成功報酬の一部前払いという性格ですが、消費税の扱いは同じです。

第三に、実費との区別。登記費用や印紙代といった実費のうち、印紙税や登録免許税のように消費税の課税対象でないものがあります。請求書でどう区分されているかを見てください。

中間金と成功報酬で、消費税はどう精算されるか

当社の場合、基本合意の締結時に中間金として成功報酬額の10%を申し受け、これは成約時の成功報酬から全額を差し引きますが、基本合意後に不成立となった場合、返金はいたしません。

この「差し引く」という処理は、税抜の本体価格どうしで行うのが通例です。中間金を支払った時点でその分の消費税も納付されており、成約時には残りの本体価格に対応する消費税を支払うことになります。

結果として、消費税を二重に払うことにはなりません。ただし請求書の表記は会社によって違うため、精算の考え方を先に聞いておくと安心です。

インボイスと仕入税額控除

譲渡企業が法人で、課税事業者である場合、支払った手数料の消費税は仕入税額控除の対象になり得ます。そのためには、仲介会社が発行する請求書が適格請求書(インボイス)の要件を満たしている必要があります。

確認すべきは、その会社が適格請求書発行事業者の登録を受けているかです。登録番号が請求書に記載されていない場合は、控除が受けられない可能性があります。

ただし、株式譲渡ではオーナー個人が手数料を負担する場合もあります。個人が負担する場合、仕入税額控除という考え方は適用されません。誰が支払うかによって扱いが変わるため、契約の前に整理しておいてください。

買い手側の手数料は、こちらの負担ではない

仲介の場合、買い手も仲介会社に手数料を支払います。ここで確認しておきたいのは、その金額が譲渡企業の負担に影響しないかです。

当社がお客様にご請求する手数料は料金体系で公開しているとおりで、買い手側の手数料の有無や金額によって変わることはありません。仲介として双方から手数料を受け取る場合は、その事実と相手方の手数料体系を、両当事者に事前にご説明します。中小M&Aガイドライン(第3版)が求める利益相反の開示にあたる部分です。

逆に言えば、「買い手からもらうので売り手は安くします」といった説明には注意が必要です。どちらからいくら受け取るのかが不透明なまま進むと、利益相反の判断ができません。聞いてよい質問ですので、遠慮なく確認してください。

手数料は経費になるのか

株式譲渡の場合、譲渡に要した費用は譲渡所得の計算上、取得費や譲渡費用として控除できる場合があります。仲介手数料は譲渡費用にあたると整理されることが一般的です。

この場合、控除できるのは消費税込みの支払額か、税抜の本体価格かという論点があります。個人が消費税の納税義務者でない場合、支払った消費税は取り戻せないため、税込で考えることになります。

金額が大きいため、手取りへの影響も小さくありません。必ず税理士に確認してください。

契約前に、総額で聞く

実務としてお勧めしているのは、「成約したとき、最終的にいくら支払うことになりますか」と総額で聞くことです。

料率や最低額を個別に説明されても、消費税と実費を足した総額は、自分で計算しないと見えません。中小M&Aガイドライン(第3版)も、手数料の体系と金額について契約締結に先立ち書面で説明することを求めています。

当社では手数料の計算機を公開しており、株式価値と負債総額を入れると成功報酬・中間金・成約時の請求額が出ます。入力した数字は端末内で計算するだけで、当社には送信されません。

※ 本稿は一般的な考え方をご紹介するものであり、個別の法務・税務アドバイスではありません。実際の取り扱いは、会社の状況や契約の定めによって異なります。弁護士・税理士等の専門家にご確認ください。

よくあるご質問

A.当社の表示は税別です。実際のご請求には消費税が加算されます。他社の見積もりでも、税抜か税込かは必ずご確認ください。1割近く変わるため、用意する資金の計画に直接影響します。
A.かかりません。株式の譲渡は消費税法上非課税とされています。代金には消費税が上乗せされない一方、仲介の手数料には課税されるため、同じ取引の中に非課税と課税が混在することになります。
A.なりません。中間金を成功報酬から差し引く処理は税抜の本体価格どうしで行うのが通例で、成約時には残りの本体価格に対応する消費税をお支払いいただきます(なお、基本合意後に不成立となった場合、中間金は返金いたしません)。請求書の表記は会社により異なるため、精算の考え方を事前にご確認ください。
A.株式譲渡では、仲介手数料は譲渡費用として譲渡所得の計算上控除できると整理されるのが一般的です。ただし消費税の扱いを含め、個別の事情で結論が変わります。必ず税理士にご確認ください。
A.仲介の場合、買い手も仲介会社に手数料を支払います。当社が譲渡企業様にご請求する金額は公開している料金体系のとおりで、買い手側の手数料によって変わることはありません。双方から受け取る場合は、その事実と相手方の体系を両当事者に事前にご説明します。

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手数料の体系と金額は、ご契約の前に必ず書面でお示しします。
相談料・着手金・月額報酬はいただきません。基本合意時の中間金と成功報酬については料金体系をご覧ください。

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Author & Supervisor

執筆・監修:株式会社プラチナパートナーズ 取締役副社長 神垣 宏康

東京都千代田区(日比谷)のM&A仲介・事業承継アドバイザリーファーム、株式会社プラチナパートナーズ取締役。成功報酬型のもと、中小企業の事業承継・会社売却を初回相談から成約まで一気通貫で支援しています。役員紹介・会社概要はこちら