「デューデリジェンスには何百万円もかかると聞いた」。ご心配になる方がいらっしゃいます。結論から申し上げると、デューデリジェンスの費用は、原則として買い手が負担します。ただし、売り手にまったく費用がかからないわけではありません。どこに何がかかるのかを整理します。
デューデリジェンスは、買い手のための調査
デューデリジェンスは、買い手が「この会社を、この条件で買ってよいか」を確かめるための調査です。買い手が公認会計士・税理士・弁護士・社会保険労務士などに依頼して実施します。
調査の目的が買い手のリスク把握である以上、費用は買い手が負担するのが原則です。売り手が調査費用を請求されることは、通常ありません。
費用の額は、会社の規模と調査の範囲によって大きく変わります。財務・税務だけに絞る場合と、法務・労務・環境まで広げる場合とでは、桁が変わることもあります。いずれにせよ、売り手が気にする必要のない部分です。
売り手にかかるのは「時間」
売り手が負担するのは、費用よりもまず時間と手間です。
デューデリジェンスでは、決算書、総勘定元帳、契約書、議事録、賃金台帳、許認可証、不動産の権利関係といった資料を求められます。数十項目から百項目を超えることもあります。
これらを集め、質問に答え、追加の資料を出す。この作業が、通常の業務と並行して数週間続きます。ここが、売り手にとって実質的にもっとも重い負担です。日常の資料が整っている会社ほど、この負担は軽くなります。
売り手側の専門家費用
売り手が費用を負担する場面もあります。代表的なのは次のものです。
顧問税理士への追加報酬。資料の作成や質問への対応を依頼する場合、顧問契約の範囲を超える作業として、別途報酬が発生することがあります。弁護士への相談料。最終契約書のレビューを自社の弁護士に依頼する場合の費用です。
鑑定評価や調査の費用。不動産の鑑定、土壌汚染の調査などを売り手側で行う場合。これらは案件によって必要になったりならなかったりします。
いずれも、事前に「いくらかかるか」を確認しておけば、想定外にはなりません。
仲介・FAの手数料との関係
仲介会社やFAに支払う手数料は、デューデリジェンス費用とは別のものです。当社の手数料体系については料金体系のページで全額を公開しています。
ここで確認しておきたいのは、手数料に何が含まれ、何が含まれないかです。資料作成の支援、買い手候補の探索、交渉の同席、契約書のドラフトへの関与。会社によって範囲が違います。
また、案件が成立しなかった場合にどうなるかも確認してください。当社では相談料・着手金・月額報酬をいただいておりません。一方、基本合意の締結時に中間金として成功報酬額の10%を申し受け、成約時の成功報酬から全額を差し引きますが、基本合意後に不成立となった場合、返金はいたしません。
買い手がDD費用を理由に条件を動かすとき
デューデリジェンスで問題が見つかると、買い手は価格の見直しを求めてきます。このとき、「調査にこれだけ費用をかけたのだから」という主張は、条件交渉の理由にはなりません。
見直しの根拠になるのは、見つかった事実そのものです。未払残業代がいくら、簿外債務がいくら。金額の根拠を示してもらい、こちらも検証する。これが正しい進め方です。
売り手としては、指摘の根拠を確認する姿勢を持ってください。「専門家が言っているから」で受け入れる必要はありません。アドバイザーは、この検証を支える役割を担います。
費用を抑えるためにできること
デューデリジェンスの費用は買い手負担ですが、調査が長引けば、それは間接的に交渉にも影響します。資料が出てこない会社は、買い手の警戒を招きます。
準備としてできるのは、日常の資料を整えておくことです。月次の試算表、契約書のファイリング、議事録の整備、労務関係の書類。これらが揃っていれば、調査は短く済みます。
月次決算の整備や労務の点検は、そのまま調査の負担を軽くする準備になります。
費用の全体像を、最初に聞いておく
最後に、実務上のお願いです。アドバイザーと契約する前に、成約までに発生し得る費用の全体像を、書面で説明してもらってください。
手数料の体系と金額、支払いの時期、含まれる業務の範囲、不成立の場合の扱い、別途必要になる可能性のある実費。中小M&Aガイドライン(第3版)も、契約締結に先立つ重要事項の説明を求めています。
説明を渋る相手、口頭でしか答えない相手には注意してください。費用の説明の丁寧さは、その後の仕事の丁寧さと相関します。当社の遵守状況はガイドライン遵守宣言で公表しています。