「自社株を売りたい」と考えたとき、上場企業の株式のように市場で売ることはできません。買い手を自分で見つけ、会社の承認を得て、価格を交渉し、手続きを踏む必要があります。本稿では、非上場の自社株を売却する際の選択肢と、それぞれの現実的な進め方を整理します。会社ごと譲渡する場合の全体像は「M&Aとは」をご覧ください。

まず確認|その株式は自由に売れないことが多い

中小企業の株式のほとんどには、譲渡制限がついています。定款に「当会社の株式を譲渡により取得するには、取締役会(または株主総会)の承認を要する」といった定めがあるものです。

この場合、売りたい相手が決まっても、会社の承認がなければ譲渡できません。承認を求めたうえで、会社が承認しない場合には、会社または会社が指定する者が買い取る手続きに進みます。

まずご自身の会社の定款を確認してください。譲渡制限の有無と、承認機関がどこかを見ます。定款の整備については「定款を見直す」で扱っています。

売却先の4つの選択肢

非上場の自社株を売る相手は、実務上おおむね次の4つです。

相手どんな場面か主な論点
第三者(他社・個人)会社ごと譲渡する。事業承継の手段として最も一般的相手探し。価格交渉。従業員・取引先への影響
後継者(親族)親族内承継の一環として買い取ってもらう後継者の資金。価格の妥当性
役員・従業員MBO・EBO。社内の人に引き継ぐ資金調達。個人保証の引き継ぎ
会社自身(自己株式の取得)少数株主の整理、相続した株式の換金財源規制。みなし配当課税

オーナー経営者がすべての株式を手放す場合は、多くが1つめになります。一部だけを手放す、あるいは少数株主が持ち分を売るという場合は、3つめ・4つめの検討になります。

会社に買い取ってもらう場合の注意

相手が見つからないとき、会社自身に買い取ってもらう(自己株式の取得)という方法があります。ただし、二つの注意点があります。

一つめは、財源の制限です。会社が自己株式を取得できる金額には上限があり、分配可能額の範囲内に限られます。利益の蓄積が少ない会社では、そもそも買い取れないことがあります。

二つめは、税金の扱いです。個人株主が発行会社に株式を売った場合、対価のうち資本金等の額を超える部分はみなし配当として総合課税の対象になり得ます。通常の譲渡(第三者への売却)であれば申告分離課税の20.315%ですが、みなし配当は累進税率が適用されるため、手取りが大きく変わることがあります。

詳しくは「みなし配当とは」「自己株式の取得(金庫株)を使った事業承継」をご覧ください。適用関係は個別の事情によりますので、必ず税理士にご確認ください。

価格はどう決まるか

非上場株式には市場価格がありませんので、当事者の合意で決まります。ただし、何の根拠もなく決めてよいわけではありません。

実務では、時価純資産法、年買法、EBITDA倍率、DCF法といった手法で算定した結果を土台に、交渉で調整していきます。手法ごとに金額は異なりますので、一点の数字ではなく幅として出るのが普通です。

注意が必要なのは、税務上の評価額と、取引価格は別物だという点です。相続税の計算に使う評価額と、第三者に売るときの価格は一致しません。この違いは「税理士が出した株価とM&Aの価格が違うのはなぜか」で解説しています。

また、親族間や同族会社との取引で著しく低い価額で売買すると、贈与とみなされる可能性があります。身内への譲渡ほど、価格の根拠を残しておいてください。

手続きの流れ

第三者に売却する場合の、おおまかな流れです。

  • 相手を探し、秘密保持契約を結んで情報を開示する
  • 条件を交渉し、基本合意を結ぶ
  • 買い手によるデューデリジェンス(調査)を受ける
  • 株式譲渡契約を締結する
  • 会社に譲渡承認を請求し、承認の決議を得る
  • 代金の決済と、株主名簿の書換えを行う

必要書類と各段階の実務は「株式譲渡の手続きと必要書類」に整理しています。株主名簿が整っていない、名義株が残っているといった場合は、売却の話を進める前に整理が必要です(「名義株とは」)。

期間は案件によって異なりますが、相手探しから決済まで数か月から1年程度を要することが珍しくありません。「売りたい」と思ってから実際に現金が入るまでには時間がかかるということは、資金計画を立てるうえで押さえておいてください。

まとめ|売れるかどうかは、準備で変わる

要点を整理します。

  • 非上場株式に市場はない。買い手を見つけ、会社の承認を得る必要がある
  • 売却先は第三者・後継者・役員従業員・会社自身の4つ
  • 会社に買い取らせる場合、財源の制限とみなし配当課税に注意
  • 価格は合意で決まるが、算定の根拠は残す。身内への譲渡ほど重要
  • 株主名簿・名義株の整理は、話を進める前に済ませる

当社は相談料・着手金・月額報酬0円でご相談を承っています。成功報酬は移動総資産レーマン方式(基準額=株式価値+負債総額)で算定し、最低報酬額は2,000万円(税別)です。中間金は基本合意時に成功報酬額の10%をお預かりし、成約時に成功報酬から全額を差し引きます(基本合意後に不成立となった場合、返金はいたしません)。詳細は料金体系をご覧ください。

よくあるご質問

A.会社または他の株主に買い取りを求めるのが一般的です。ただし会社には財源の制限があり、他の株主にも資金の問題があります。譲渡制限がある場合は会社の承認も必要です。話し合いで進まない場合の手続きもありますが、まずは弁護士にご相談ください。
A.可能ですが、買い手が限られます。第三者が中小企業の株式を一部だけ取得しても経営権を持てないため、通常は全部または過半数の取得を望みます。一部の譲渡は、後継者への段階的な移転や、少数株主の整理といった場面で用いられることが多い形です。
A.個人が第三者に譲渡した場合、譲渡所得に対して20.315%(所得税15%・復興特別所得税0.315%・住民税5%)の申告分離課税が原則です。ただし発行会社への譲渡ではみなし配当の論点があり、扱いが変わります。金額は取得費や譲渡費用によっても変わりますので、必ず税理士にご確認ください。

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相手探しから手続きまで、初回のご相談から成約まで一気通貫で支援します。相談料・着手金・月額報酬は0円です。基本合意時の中間金と成功報酬については料金体系をご覧ください。
メール(info@platinumpartners.jp)でも承ります。

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Author & Supervisor

執筆・監修:株式会社プラチナパートナーズ 取締役副社長 神垣 宏康

東京都千代田区(日比谷)のM&A仲介・事業承継アドバイザリーファーム、株式会社プラチナパートナーズ取締役。成功報酬型のもと、中小企業の事業承継・会社売却を初回相談から成約まで一気通貫で支援しています。役員紹介・会社概要はこちら