M&Aの支援を行う事業者には、国のM&A支援機関登録制度があります。実務者にとっては日常の前提ですが、譲渡を検討される経営者からは「登録があれば安心なのか」と聞かれる制度でもあります。本稿では、この制度が何を担保し、何を担保しないのかを整理します。なお、株式会社プラチナパートナーズは現在、同制度への登録手続を進めている段階です(本稿執筆時点で登録は完了していません)。当社の状況は中小M&Aガイドライン遵守宣言に掲載しています。

制度の趣旨|何のために作られたか

中小企業のM&Aが増えるなかで、支援の質にばらつきがあることが課題として指摘されてきました。この制度は、中小M&Aガイドラインを遵守する事業者を登録し、公表する仕組みです。登録された事業者は、登録データベースで検索できます。

制度の骨格は次のとおりです。

  • 登録の要件として、中小M&Aガイドライン(第3版・令和6年8月)の遵守を宣言すること
  • 遵守宣言の内容を、自社のウェブサイト等で公表すること
  • 登録された事業者は、公的なデータベースに掲載され、誰でも検索できること
  • 事業承継・M&A補助金(専門家活用枠)の対象となる支援は、登録された支援機関によるものであることが求められる場合があること

最後の点が、実務上いちばん分かりやすい効果です。補助金の活用を検討される依頼者にとって、支援先が登録されているかどうかは直接に影響します。補助金の要件は年度により変わりますので、申請の前に必ず公募要領で確認してください。

制度の趣旨を一言でいえば、「守るべきことを宣言し、公表させることで、比較できるようにする」ことにあります。品質を国が審査して保証する制度ではない、という点が次の論点になります。

登録要件としてのガイドライン遵守|何を約束しているのか

遵守宣言は、抽象的な心構えではありません。中小M&Aガイドラインは、仲介者・FAが守るべき事項を具体的に定めています。実務に直結する主なものを挙げます。

項目約束していること
仲介・FAの別の明示自らの立場と、それに伴う利益相反の可能性を、契約前に説明する
手数料の明示報酬体系・算定基準・発生時点を、書面で明確に示す
専任条項の扱い期間を適切に設定し、他者への相談を不当に制限しない
テール条項の扱い期間と対象を限定し、乱用しない
秘密保持情報の管理・開示範囲を適切に扱う
説明と記録重要な事項を説明し、記録を残す

実務者にとって重要なのは、これらが「良い心がけ」ではなく、登録の前提として公表した約束であるという点です。宣言と実務がずれていれば、それは単なる不手際ではなく、公表内容との不一致になります。ガイドラインの実務対応は「中小M&Aガイドライン第3版の実務対応」で詳しく扱っています。

とくに専任条項とセカンドオピニオンの扱いは、依頼者の利益に直結します。当社は、他社へのご相談を制限しません。比較されることを前提に説明する姿勢については「セカンドオピニオンをどう扱うか」に書いています。

登録で分かること・分からないこと

依頼者に説明するときに、ここを正確に伝えられるかどうかが実務者の力量です。

登録で分かること

  • その事業者が、ガイドラインの遵守を宣言し、公表していること
  • 宣言の内容を、誰でも読める形で確認できること
  • 補助金の対象となる支援機関の範囲に入っていること(要件は公募要領による)
  • 公的なデータベースに、事業者として掲載されていること

登録では分からないこと

  • 担当者の力量——登録は事業者単位で、担当者ごとの経験や技量を示すものではありません
  • 手数料が安いかどうか——明示することが要件であって、水準が定められているわけではありません
  • 自社に合うかどうか——規模・業種・地域との相性は、登録の有無とは別の話です
  • 個別の案件が適切に進むかどうか

つまり、登録は「入口の足切り」であって、選定の答えではありません。依頼者に対しては、この点を正直に伝えるべきです。登録の有無だけで選べますと説明するのは、制度の説明として不正確であり、結果として依頼者の比較検討を浅くします。

そのうえで、依頼者が実際に見るべき点は次のようなものです。宣言した内容が自社のサイトで読める形になっているか。手数料の体系が、金額の計算根拠まで書かれているか。専任やテールの条項が具体的にどう書かれているか。これらは、登録データベースではなく、各社の公表物と契約書案を読むことでしか分かりません。

当社の状況と、実務者としての向き合い方

当社は、M&A支援機関登録制度への登録手続を進めている段階です。本稿執筆時点で、登録は完了していません。登録が完了しましたら、中小M&Aガイドライン遵守宣言のページで登録番号を公表します。

登録が未了であることは、依頼者に対して隠す事柄ではありません。補助金の活用をお考えの場合、支援機関の登録が要件となることがありますので、その点は先にお伝えする必要があります。補助金の要件は年度の公募要領によって変わりますので、具体的な適用については公募要領と、必要に応じて税理士・専門家にご確認ください。

一方で、遵守宣言そのものは既に公表しています。当社は、ガイドラインが定める遵守事項の全文を、要約せずに掲載しています。手数料の体系も、相談料・着手金・月額報酬が0円、基本合意時の中間金が成功報酬額の10%、成約時の成功報酬が移動総資産レーマン方式・最低2,000万円(税別)という形で、計算根拠まで料金体系に開示しています。

実務者としての向き合い方は、次の三点に集約されます。

  • 制度の説明を正確にする——登録の有無で担保されることと、されないことを分けて伝える
  • 自社の状況を、聞かれる前に言う——未了なら未了と言う。後から知られるほうが、はるかに重い
  • 宣言した内容を、日々の実務で守る——公表は出発点であって、到達点ではありません

まとめ|制度は比較の材料であって、判断の代わりではない

要点を整理します。

  • M&A支援機関登録制度は、中小M&Aガイドライン(第3版・令和6年8月)の遵守宣言を要件とする登録・公表の仕組み
  • 事業承継・M&A補助金(専門家活用枠)の対象となる支援は、登録された支援機関によることが求められる場合がある
  • 遵守宣言は、仲介・FAの別の明示、手数料の明示、専任・テール条項の適切な設定などを含む
  • 登録で分かるのは宣言の有無まで。担当者の力量や手数料の水準、自社との相性は分からない
  • 依頼者が見るべきは、公表された宣言の中身、手数料の計算根拠、契約書案の条項
  • 当社は現在、登録手続中。完了後に登録番号を公表する

制度は、比較を可能にするための土台です。土台があることと、良い支援が受けられることは、同じではありません。実務者としては、そこを正確に説明できることが、制度を活かすということだと考えています。

関連して「中小M&Aガイドライン第3版の実務対応」「利益相反管理の実務」もあわせてお読みください。

よくあるご質問

A.現在、登録手続を進めている段階で、本稿執筆時点では登録は完了しておりません。完了しましたら、中小M&Aガイドライン遵守宣言のページで登録番号を公表いたします。遵守宣言の内容そのものは、すでに全文を掲載しています。
A.登録は、ガイドラインの遵守を宣言し公表していることを示すもので、担当者の力量や手数料の水準、自社との相性まで担保するものではありません。公表された宣言の中身、手数料の計算根拠、契約書案の専任条項やテール条項の書かれ方まで、ご自身で確認されることをおすすめします。
A.事業承継・M&A補助金(専門家活用枠)では、支援機関の登録が要件とされる場合があります。要件は年度の公募要領によって変わりますので、申請をご検討の際は必ず公募要領をご確認ください。当社にご相談いただく場合も、この点は先にご説明します。
A.中小企業庁が公表している資料で、第3版(令和6年8月)が最新です。当社は遵守宣言の全文を自社サイトに掲載しています。内容を要約・改変せずに掲載しているのは、宣言した内容をそのまま確認いただけるようにするためです。

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登録の状況も、手数料の計算根拠も、先に開示します。

当社は現在、M&A支援機関登録制度への登録手続中です。他社へのご相談を制限することもありません。
ご相談はメール(info@platinumpartners.jp)でも承ります。

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Author & Supervisor

執筆・監修:株式会社プラチナパートナーズ 取締役副社長 神垣 宏康

東京都千代田区(日比谷)のM&A仲介・事業承継アドバイザリーファーム、株式会社プラチナパートナーズ取締役。成功報酬型のもと、中小企業の事業承継・会社売却を初回相談から成約まで一気通貫で支援しています。役員紹介・会社概要はこちら