表明保証は、ガイドラインが「認識の有無にかかわらず対応するリスク」として挙げる3項目の1つです。 つまり、案件ごとに気づいたら対応するのではなく、毎回必ず扱う論点として位置づけられています。
そして、説明しなければならないことが具体的に指定されている、数少ない条項でもあります。
表明保証とは何か
表明保証は、契約の当事者が、一定時点において一定の事項が真実かつ正確であることを表明し、保証する条項です。
中小M&Aでは、売主が買主に対して、たとえば次のような事項を表明保証します。
- 株式が有効に発行され、売主が適法に保有していること
- 決算書が正確であること
- 簿外債務・偶発債務が存在しないこと
- 重要な契約に違反がないこと
- 未払いの残業代や社会保険料がないこと
- 訴訟・紛争が存在しないこと
- 必要な許認可を取得し、維持していること
そして、表明保証に違反があった場合に損失を補填するのが補償条項です。 表明保証と補償はセットで、片方だけでは機能しません。
役割はシンプルです。買主が確認しきれない事実について、売主が「そうである」と保証し、 違っていたら金銭で調整する。情報の非対称を、契約で埋める仕組みです。
ガイドラインが名指しした2つの危険
ガイドラインは、仲介者・FAが依頼者に説明しなければならないこととして、次を挙げています。
表明保証の内容はデュー・ディリジェンス(DD)の結果を踏まえて適切に検討されるべきであり、 期間や責任上限が設定されていない場合や適用場面が一義的に明確でない規定が存在する場合、 譲り渡し側が過大な表明保証責任を負担することとなり、当事者間で争いが生じるリスクがある旨を説明しなければならない。
危険として名指しされているのは2つです。
| 危険 | 何が起きるか |
|---|---|
| 期間が設定されていない | 何年経っても請求され得る。売主はいつまでも終わらない |
| 責任上限が設定されていない | 受け取った譲渡代金を超える請求もあり得る。売って損をする事態が生じ得る |
| 適用場面が一義的に明確でない | 何が違反にあたるかで争いになる。解釈で揉める |
中小M&Aの売主は、多くの場合引退する高齢の経営者です。 譲渡代金を老後資金や納税に充てた後で、数年越しの請求が来る——という事態は、 本人の生活に直接響きます。だからガイドラインは、ここを説明義務にしています。
DDとの関係|省くと、責任が後ろに移る
ガイドラインが表明保証とDD非実施を同じ分類(認識の有無にかかわらず対応するリスク)に置いているのは、 2つが表裏だからです。
- DDをやらない
- 買主は、リスクを自分で確認できない
- 確認できないぶんを、表明保証で売主に負わせる
- 売主は、自分でも把握していない事実について責任を負う
だからガイドラインは、「予算の制約がある場合であっても、検討対象を絞るなどの工夫をした形での DDの実施を推奨することが望ましい」としています。
逆に言えば、DDで見つかったものは、表明保証の対象から外せます。 買主が知ったうえで買うなら、それは価格や条件で調整する話であって、後から補償を求める話ではなくなります。
DDは、売主にとって「責任の範囲を確定させる手続」でもある—— この説明ができるかどうかが、実務でも試験でも問われる理解です。
資料3での位置づけ
表明保証は、資料3の複数の科目に現れます。
| 科目 | 項目 | 優先 |
|---|---|---|
| M&A実務 | 最終契約 表明保証条項 | ● |
| 法務 | 最終契約 表明保証に関する法律知識 | — |
| 財務・税務 | 最終契約 表明保証に関する税務知識 | — |
実務科目側に●が付いている点が示唆的です。 条項の法的解釈より、条項をどう設計し、どう説明するかが問われるということです。
あわせて、最終契約の項目には「リスクの抽出・評価、対応方針の検討(●)」「リスクへの対応(●)」 「リスク事項説明(●)」が並びます。抽出 → 対応 → 説明が一続きの流れとして設計されています。
試験で押さえる形
- 表明保証は補償条項とセット
- 内容はDDの結果を踏まえて検討されるべき
- 期間・責任上限がないと、売主が過大な責任を負う
- 適用場面が一義的に明確でない規定も争いの元
- これらのリスクは説明しなければならない(努力目標ではない)
- DD非実施・経営者保証と並ぶ「認識の有無にかかわらず対応するリスク」の1つ
ガイドラインは、最終契約について 「可能な限り、中小M&Aに関する知見と実務経験を有する弁護士の関与の下で締結することが望ましい」としています。 仲介者・FAの業務例にも「最終的には譲り渡し側・譲り受け側双方が弁護士等への確認を依頼することを推奨」とあります。
条項の設計そのものは、弁護士の領域です。支援者に求められるのは、 「期間と上限は入っているか」「何が違反になるか明確か」を確認し、 入っていなければリスクを説明して弁護士につなぐこと——ここが線です。
本記事は一般的な制度の説明です。個別の契約条項の評価は、必ず弁護士にご確認ください。
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本記事は、中小企業庁が公表した資料をもとに、株式会社プラチナパートナーズが作成したものです。 本試験の実施主体・運営事業者が作成・監修・承認したものではありません。
試験の名称・科目構成・出題数・出題範囲・合格基準・実施時期等は、2026年9月時点で公表されている 検討会資料および企画競争募集要領に「想定」「現状案」として示された内容です。 試験名は資料上「中小M&A資格試験(仮称)」と表記されています。実際の試験と異なる可能性がありますので、 受験にあたっては必ず公式の試験案内をご確認ください。
本記事の法務・税務・会計に関する記述は一般的な制度の説明です。 個別の案件における判断は、必ず弁護士・税理士・公認会計士等の専門家にご確認ください。
出典:「中小M&A市場の改革に向けた方向性について」(中小企業庁・第4回 中小M&A市場の改革に向けた検討会 資料2、2026年3月17日)/ 同 資料3「試験科目詳細」/ 「中小M&A資格試験実施事業」企画競争募集要領(中小企業庁、2026年3月27日)/ 中小M&Aガイドライン(第3版)(中小企業庁、2024年8月)/ 中小M&A専門人材(個人)向け 使命・倫理行動規範・知識スキルマップ をもとに当社が作成。
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中小M&A資格試験 合格テキスト|一次資料で体系的に学ぶ、4科目の要点
同じシリーズの基本書です(2026年10月3日刊行)。序章で制度創設の経緯・4科目と配点・合格基準・禁忌肢・CBTでの実施形式・学習プランを示し、第1章 M&A実務/第2章 中小M&A市場動向・中小企業政策/第3章 財務・税務/第4章 法務/第5章 倫理・行動規範の順に解説しています。付録は用語集・重要数値一覧・スキーム比較表・出題範囲対応表・学習記録シート。数値・期間・条文には出典を併記し、制度の数値は2026年10月1日時点です。
問題集で問われ方を確かめ、間違えた問から本書の該当節に戻る形を想定しています。付録の出題範囲対応表が、2冊の往復の索引になります。
本書は試験の実施主体・運営事業者が作成・監修したものではありません。制度の内容は2026年9月時点の公表資料に基づく「想定」「現状案」です。受験にあたっては公式の試験案内をご確認ください。