この試験の設計で、いちばん多くを語っているのが配点です。
4科目のうち、倫理・行動規範が25%。法務(17〜18%)より重く置かれています。 知識の試験としては不自然にも見えますが、制度の出発点を読むと理由がはっきりします。
4科目と出題割合
試験は4科目をまとめて120分で実施され、設問数は最大60問程度です。
| 試験科目 | 出題割合 | 60問の場合の出題数 |
|---|---|---|
| M&A実務(うち、中小M&A市場・中小企業政策) | 35〜40%程度(5%) | 21〜24問程度(3問) |
| 財務・税務(うち、税務) | 20〜23%程度(3〜5%) | 12〜14問(2〜3問) |
| 法務 | 17〜18%程度 | 10〜11問 |
| 倫理・行動規範 | 25%程度 | 15問程度 |
資料2は、この配分の理由を明記しています。 「M&A実務」と「倫理・行動規範」は重要度を考慮して割合を高く設定し、「財務・税務」は税務を含む科目であることを加味して「法務」より高く設定した、というものです。
「中小M&A市場動向・中小企業政策」は独立科目ではなく「M&A実務」に含まれますが、必ず出題される想定です。
なぜ倫理が重いのか|制度の出発点にさかのぼる
企画競争募集要領の「事業目的」に、制度がつくられた理由が書かれています。
中小M&A市場の拡大に伴い、新規参入者が多くなるにつれ、不慣れな中小企業者に対して十分な説明がなされていない事案や、当事者との関係で利益相反が生じた状態で取引が進んでしまっている事案等、不適切な支援対応を実施している事案が見受けられた。また、各種報道等では、経営者保証が解除されない等の不適切な買い手が排除されていないという問題もクローズアップされたところである。
ここに挙がっている3つの問題——説明不足・利益相反・不適切な買い手——は、いずれも知識不足ではなく、判断の問題です。 M&Aの手続きを知らないから起きたのではなく、知っていながら成約を優先したから起きています。
だから配点が倫理に寄っています。知識があるかを測る試験であると同時に、この仕事をしてよい人かを測る試験だということです。
その象徴が、倫理・行動規範の科目にだけ設定が検討されている禁忌肢です。 複数の設問に禁忌肢を置き、一定数を誤答すると、総得点にかかわらず不合格とする設計が想定されています。
各科目が「何を判定するか」は定義されている
資料2・募集要領には、科目ごとの設置目的が書かれています。
- M&A実務……中小M&Aの実務遂行に必要となる一連のプロセスの知識
- 財務・税務……専門家連携に必要となる財務・税務の基礎知識および財務・税務リスクに係る知識
- 法務……専門家連携に必要となる法律の基礎知識および法務リスクに係る知識
- 倫理・行動規範……支援人材として求められる倫理観および行動規範に関する基本的な考え方から、実務上留意すべき禁止事項・望ましい対応の知識
財務・税務と法務に共通して置かれている「専門家連携に必要となる」という言葉が重要です。 合格者像も「財務・税務、法務の基礎的な知識をもって、M&Aプロセスを進める際に検討が必要な論点を見極め、士業専門家と連携できる水準」と定義されています。
自分で結論を出す水準ではなく、論点を見つけて専門家につなぐ水準。 この線引きは、合格しても士業の独占業務ができるわけではないという制度の前提と一貫しています。
なお、一部の中項目は「M&A実務」と「法務」で重複しますが、 オペレーションに関する内容は「M&A実務」で、そのオペレーションに必要な法律知識は「法務」で出題する、と整理されています。
出題範囲は公表されている|251項目・うち優先54項目
資料3「試験科目詳細」に、試験科目一覧が表で示されています。当社で数えたところ、 大項目6・項目251、うち「特に重要度が高く優先的に出題する項目(現状案)」の印が付いているものが54項目でした。
| 大項目 | 項目数 | うち優先 |
|---|---|---|
| M&A実務 | 84 | 13 |
| 中小M&A市場動向 | 8 | 1 |
| 中小企業政策 | 12 | 4 |
| 財務・税務 | 47 | 11 |
| 法務 | 49 | 24 |
| 倫理・行動規範 | 51 | 1 |
法務は項目数こそ49ですが、優先項目が24と突出しています。 会社法・民法・労働法・弁護士法、そして秘密保持契約・アドバイザリー契約・基本合意・法務DD・最終契約・クロージング・リスク/係争と、 契約の各段階に1つずつ印が付いている構成です。
逆に倫理・行動規範は51項目に対して優先の印が1つだけですが、これは重要度が低いという意味ではありません。 配点は25%で最も重い科目です。項目そのものが行動規範の条項に対応しており、印を付けて絞る性質のものではない、と読むべきでしょう。
なお資料3の冒頭には「あくまで来年度以降の試験実施に向けた現状案であり、今後、試験実施に係る試験案内等で公表する際には変更が生じうる」と注記されています。
どこから手を付けるか
配点から逆算すると、優先順位は明確です。
「M&A実務」と「倫理・行動規範」で、全体の60〜65%を占めます。 そしてこの2科目は、出典が中小M&Aガイドライン(第3版)と中小M&A専門人材(個人)向けスキルマップにほぼ限定されています。 つまり、読むべき資料がはっきりしています。
とくにガイドライン第2章の「M&A専門業者」の章は、倫理・行動規範科目の中核であると同時に、 M&A実務科目の各工程の行動指針でもあります。1つの章が2科目にまたがって効くという意味で、最初に読む価値が最も高い箇所です。
財務・税務(20〜23%)と法務(17〜18%)は、合わせて4割弱。 「専門家連携に必要な基礎知識」の水準とされていますが、簿記や会社法の土台がない場合は別途の基礎学習が要ります。
この記事について(出典と免責)
本記事は、中小企業庁が公表した資料をもとに、株式会社プラチナパートナーズが作成したものです。 本試験の実施主体・運営事業者が作成・監修・承認したものではありません。
試験の名称・科目構成・出題数・出題範囲・合格基準・実施時期等は、2026年9月時点で公表されている 検討会資料および企画競争募集要領に「想定」「現状案」として示された内容です。 試験名は資料上「中小M&A資格試験(仮称)」と表記されています。 実際の試験と異なる可能性がありますので、受験にあたっては必ず中小企業庁および試験運営事業者の 公式の試験案内をご確認ください。
出典:「中小M&A市場の改革に向けた方向性について」(中小企業庁・第4回 中小M&A市場の改革に向けた検討会 資料2、2026年3月17日)/ 同 資料3「試験科目詳細」/ 「令和7年度補正中小企業活性化・事業承継総合緊急支援事業(中小M&A資格試験実施事業)に係る企画競争募集要領」(中小企業庁、2026年3月27日) をもとに当社が作成。
よくあるご質問
Book
この試験の勉強に使えるもの:試験範囲マップ|251項目と当社コラムの対応表で、どの項目にどの記事が対応しているか(と、当社が書けていない項目)を一覧できます。
当社取締役副社長 神垣宏康が執筆した問題集です。中小M&Aガイドライン第3版・知識スキルマップ・検討会資料「試験科目詳細」といった公表資料だけから全300問を作成し、全問に出典を明記しています。
中小M&A資格試験 合格テキスト|一次資料で体系的に学ぶ、4科目の要点
同じシリーズの基本書です(2026年10月3日刊行)。序章で制度創設の経緯・4科目と配点・合格基準・禁忌肢・CBTでの実施形式・学習プランを示し、第1章 M&A実務/第2章 中小M&A市場動向・中小企業政策/第3章 財務・税務/第4章 法務/第5章 倫理・行動規範の順に解説しています。付録は用語集・重要数値一覧・スキーム比較表・出題範囲対応表・学習記録シート。数値・期間・条文には出典を併記し、制度の数値は2026年10月1日時点です。
問題集で問われ方を確かめ、間違えた問から本書の該当節に戻る形を想定しています。付録の出題範囲対応表が、2冊の往復の索引になります。
本書は試験の実施主体・運営事業者が作成・監修したものではありません。制度の内容は2026年9月時点の公表資料に基づく「想定」「現状案」です。受験にあたっては公式の試験案内をご確認ください。