資料3「試験科目詳細」を見ると、「重要事項説明」に●(優先項目)が2回付いています。 秘密保持契約のところと、アドバイザリー契約のところです。
案件の入口で、2度、説明が求められるという構造です。そして、この重要事項説明こそ、 将来資格保持者が行うことを求める方向で検討されている手続きでもあります。
秘密保持契約は2種類ある
資料3は、秘密保持契約を2つに分けて記載しています。
- 依頼者・支援機関間の秘密保持契約書の作成
- 譲り渡し側・譲り受け側間の秘密保持契約書の作成
前者は、相談を受ける段階で結ぶものです。後者は、ネームクリアの前提になります。 ガイドラインは、ネームクリアについてこう定めています。
ノンネーム・シート(ティーザー)に興味を示した候補先に対して、譲り渡し側からの同意を取得し、 候補先との秘密保持契約を締結した上で、実施される必要がある。
つまり、名前を出すには①売り手の同意 ②買い手候補とのNDAの2つが揃っている必要があります。 どちらかを欠いたまま名前を出すことは、この規定に反します。
契約の内容として問われる3点
資料3は、秘密保持契約書の内容として次を挙げています。
- 秘密保持が求められる情報の定義・範囲
- 秘密保持の期間
- 秘密保持に違反した場合の扱い
加えて、締結方法として「双方押印、差し入れ型」が挙げられています。 差し入れ型は、一方だけが義務を負う形式です。譲り受け側だけが秘密保持義務を負うケースなどで用いられます。
また、契約締結前に説明すべき事項にも、秘密保持に関する事項が含まれています。
秘密保持に関する事項(依頼者に秘密保持義務を課す場合にはその旨、秘密保持の対象となる事実、 士業等専門家や事業承継・引継ぎ支援センター等に開示する場合の秘密保持義務の一部解除等)
最後の「一部解除」は、専任条項のセカンド・オピニオンと直結します。 相談先を秘密保持義務がある者や公的機関に限定するという配慮が、ここで契約の形になります。
重要事項説明は、2つの契約の締結時に行われる
資料3では、重要事項説明が2か所に現れます。
- 秘密保持契約の項目の中(●)
- アドバイザリー(仲介・FA)契約の項目の中(●)
何を説明するのかは、ガイドラインが契約締結前の説明事項として列挙しています。 担当者の保有資格・経験年数・成約実績、手数料に関する事項、相手方の手数料、秘密保持、直接交渉の制限、 専任条項、テール条項、契約期間、解除・中途解約、責任(免責)、契約終了後も効力を有する条項、 利益の対立が想定される事項、譲り受け側に対して実施する調査の概要、業界内での情報共有の仕組みへの参加有無——と、 14項目前後にのぼります。
形式も定められています。手数料の算定基準と提供する業務の内容については、 書面を交付して(電磁的方法を含む)説明しなければならないとされています。
「納得が得られなかった場合」の規定
見落とされやすい一文があります。
契約締結前の説明において仮に依頼者から納得が得られず、仲介者・FAに対して業務や手数料に関する 交渉が申し入れられた場合には、誠実に対応を検討しなければならない。
説明して終わりではなく、交渉を申し入れられたら誠実に検討するところまでが義務です。 基本姿勢にある「十分に説明して納得を得た上で進める」の、具体化にあたります。
また、受領する手数料が提供する業務の内容に見合っているかという点について依頼者から納得を得ることが重要 とも明記されています。金額の説明だけでなく、対価としての釣り合いまで含む、というのがガイドラインの水準です。
資格試験との関係|ここが「資格保持者が行う」候補になっている
資料2には、制度の将来像として次の記載があります。
中小M&Aガイドラインにおいて、「M&A支援機関登録制度」の登録機関に対して、 自社の担当者への当該資格取得の推奨や重要事項説明を当該資格保持者が行うことを求めるなど、 資格の浸透を通じた市場の健全化を図ることを検討。
もしこれが実装されれば、資格がなければ案件の入口の手続きができないことになります。 「あると良い資格」から「ないと担当できない資格」への変化です。
試験対策としては、重要事項説明の項目を一覧で言えるようにしておくのが有効です。 14項目前後という分量は、正誤判定の設問を作りやすく、 「◯◯は説明対象に含まれない」という形の出題に対応できる必要があります。
とくに間違えやすいのは次の3つです。いずれも説明対象に含まれます。
- 相手方(買い手)の手数料に関する事項
- 譲り受け側に対して実施する調査の概要
- 業界内での情報共有の仕組みへの参加有無(参加していない場合はその旨)
この記事について(出典と免責)
本記事は、中小企業庁が公表した資料をもとに、株式会社プラチナパートナーズが作成したものです。 本試験の実施主体・運営事業者が作成・監修・承認したものではありません。
試験の名称・科目構成・出題数・出題範囲・合格基準・実施時期等は、2026年9月時点で公表されている 検討会資料および企画競争募集要領に「想定」「現状案」として示された内容です。 試験名は資料上「中小M&A資格試験(仮称)」と表記されています。実際の試験と異なる可能性がありますので、 受験にあたっては必ず公式の試験案内をご確認ください。
本記事の法務・税務・会計に関する記述は一般的な制度の説明です。 個別の案件における判断は、必ず弁護士・税理士・公認会計士等の専門家にご確認ください。
出典:「中小M&A市場の改革に向けた方向性について」(中小企業庁・第4回 中小M&A市場の改革に向けた検討会 資料2、2026年3月17日)/ 同 資料3「試験科目詳細」/ 「中小M&A資格試験実施事業」企画競争募集要領(中小企業庁、2026年3月27日)/ 中小M&Aガイドライン(第3版)(中小企業庁、2024年8月)/ 中小M&A専門人材(個人)向け 使命・倫理行動規範・知識スキルマップ をもとに当社が作成。
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中小M&A資格試験 合格テキスト|一次資料で体系的に学ぶ、4科目の要点
同じシリーズの基本書です(2026年10月3日刊行)。序章で制度創設の経緯・4科目と配点・合格基準・禁忌肢・CBTでの実施形式・学習プランを示し、第1章 M&A実務/第2章 中小M&A市場動向・中小企業政策/第3章 財務・税務/第4章 法務/第5章 倫理・行動規範の順に解説しています。付録は用語集・重要数値一覧・スキーム比較表・出題範囲対応表・学習記録シート。数値・期間・条文には出典を併記し、制度の数値は2026年10月1日時点です。
問題集で問われ方を確かめ、間違えた問から本書の該当節に戻る形を想定しています。付録の出題範囲対応表が、2冊の往復の索引になります。
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