専任条項は、試験で数字が問える数少ない論点です。 ガイドラインが「最長でも6か月〜1年以内を目安」と明示しているためです。
ただし、数字だけを覚えても半分です。なぜその期間なのかが分かると、 関連する論点(セカンド・オピニオン、中途解約、情報管理)が一本につながります。
専任条項には合理性がある、という出発点
ガイドラインは、まず専任条項の合理性を認めます。
例えば、マッチングにおいて、譲り受け側となり得る同一の候補先に対し同一の譲り渡し側について 複数のM&A専門業者が重ねて打診した場合に、当該候補先の心証を害することや、 譲り渡し側に関する情報が拡散することを抑止するという観点で、それ自体は一定の合理性が認められる。
同じ会社の話が複数のルートから買い手に届けば、買い手は「売り急いでいる」と受け取ります。 交渉力にも、秘密保持にも響きます。専任条項は依頼者のためでもある、というのがガイドラインの立場です。
設問で「専任条項は依頼者に不利なので設けるべきでない」という趣旨の選択肢があれば、それは誤りです。
問題は、セカンド・オピニオンが取れなくなること
そのうえで、ガイドラインは問題点を指摘します。
依頼者である譲り渡し側が、依頼したM&A専門業者の助言等の内容に疑義を持った場合等に、 他のM&A専門業者やその他の支援機関にセカンド・オピニオンを求めることができないとすると、 当該助言の妥当性を判断できず、ひいては中小M&Aの手続についても適切な判断を行えなくなるおそれがある。
ここは情報の非対称性の問題そのものです。依頼者は助言の良し悪しを自分では判断できない。 判断できないまま、他の意見も聞けないとなると、依頼者は自分の会社の重大な判断を検証する手段を失います。
だからガイドラインはこう結論します。
仮に専任条項を設けるとしても、その対象範囲を可能な限り限定すべきである。 例えば、依頼者が意見を求めたい部分を明確にした上、これを妨げるべき合理的な理由がない場合には、 M&A専門業者は当該依頼者に対し、他の支援機関に対してセカンド・オピニオンを求めることを許容すべきである。
ただし、情報管理には配慮する
セカンド・オピニオンを認めると、今度は情報が広がるリスクが戻ってきます。ガイドラインはそこも書いています。
当該他の支援機関から、相手方当事者に関する情報も含む中小M&Aに関する情報が漏えいするリスクもあるため、 セカンド・オピニオンにおいては、相手方当事者に関する情報の開示を禁止したり、 相談先を法令上又は契約上の秘密保持義務がある者や事業承継・引継ぎ支援センター等の公的機関に限定したりする等、 情報管理に配慮する必要がある。
つまり、「セカンド・オピニオンは全面的に自由」でも「一切禁止」でもありません。 相談先と開示範囲を絞ったうえで認める、が答えです。二択で考えると誤ります。
期間の目安|最長でも6か月〜1年以内
もう1つの論点が期間です。
専任条項に長期間拘束されることにより、依頼者が適時に他の仲介者・FAへ依頼できなくなるおそれがあるため、 専任条項を設ける場合には、仲介契約・FA契約の契約期間を最長でも6か月〜1年以内を目安として定めるべきである。 加えて、例えば、依頼者が任意の時点で仲介契約・FA契約を中途解約できることを明記する条項等も設けることが望ましい。
数字は6か月〜1年。テール条項の2年〜3年と混同しやすいので、セットで覚えるのが安全です。
| 条項 | 期間の目安 | 趣旨 |
|---|---|---|
| 専任条項 | 最長でも6か月〜1年以内 | 他の仲介者・FAへ依頼できない期間を限る |
| テール条項 | 最長でも2年〜3年以内 | 契約終了後に手数料が発生し得る期間を限る |
| 直接交渉の制限 | 契約終了まで | 契約が切れたら制限も切れる |
3つとも「無限定にしない」という同じ発想から出ています。依頼者の自由な経営判断を損なわない限度で、が共通の物差しです。
試験ではどう問われるか
押さえる順序は次のとおりです。
- 専任条項自体には合理性がある(情報拡散と心証悪化の抑止)
- ただし対象範囲は可能な限り限定すべき
- 妨げる合理的な理由がなければ、セカンド・オピニオンを許容すべき
- ただし相談先と開示範囲を絞る等、情報管理に配慮する
- 契約期間は最長でも6か月〜1年以内が目安
- 中途解約できる旨の明記が望ましい
なお、専任条項は契約締結前に説明すべき事項としても列挙されています (「専任条項(セカンド・オピニオンの可否等)」)。可否を説明する、まで含めて一組です。
この記事について(出典と免責)
本記事は、中小企業庁が公表した資料をもとに、株式会社プラチナパートナーズが作成したものです。 本試験の実施主体・運営事業者が作成・監修・承認したものではありません。
試験の名称・科目構成・出題数・出題範囲・合格基準・実施時期等は、2026年9月時点で公表されている 検討会資料および企画競争募集要領に「想定」「現状案」として示された内容です。 試験名は資料上「中小M&A資格試験(仮称)」と表記されています。実際の試験と異なる可能性がありますので、 受験にあたっては必ず公式の試験案内をご確認ください。
本記事の法務・税務・会計に関する記述は一般的な制度の説明です。 個別の案件における判断は、必ず弁護士・税理士・公認会計士等の専門家にご確認ください。
出典:「中小M&A市場の改革に向けた方向性について」(中小企業庁・第4回 中小M&A市場の改革に向けた検討会 資料2、2026年3月17日)/ 同 資料3「試験科目詳細」/ 「中小M&A資格試験実施事業」企画競争募集要領(中小企業庁、2026年3月27日)/ 中小M&Aガイドライン(第3版)(中小企業庁、2024年8月)/ 中小M&A専門人材(個人)向け 使命・倫理行動規範・知識スキルマップ をもとに当社が作成。
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中小M&A資格試験 合格テキスト|一次資料で体系的に学ぶ、4科目の要点
同じシリーズの基本書です(2026年10月3日刊行)。序章で制度創設の経緯・4科目と配点・合格基準・禁忌肢・CBTでの実施形式・学習プランを示し、第1章 M&A実務/第2章 中小M&A市場動向・中小企業政策/第3章 財務・税務/第4章 法務/第5章 倫理・行動規範の順に解説しています。付録は用語集・重要数値一覧・スキーム比較表・出題範囲対応表・学習記録シート。数値・期間・条文には出典を併記し、制度の数値は2026年10月1日時点です。
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