病院を誰が持っているか。その答えは22年で大きく変わりました。
厚生労働省の公表統計によれば、個人立の病院は954から92へ、90.4%減。都道府県立も41.2%減りました。一方、規模別では150〜199床だけが11.2%増えています。本稿では担い手と規模、2つの変化を確認します。
本稿の数値は厚生労働省「令和6(2024)年 医療施設(動態)調査・病院報告の概況」統計表2・統計表6(令和7年9月26日公表・各年10月1日現在)によります。増減率は本稿で算出しました。制度・税務・法務の取り扱いはご状況により異なりますので、実際のご判断にあたっては顧問の専門家にもご確認ください。
個人立は10分の1になった
厚生労働省「令和6(2024)年 医療施設(動態)調査・病院報告の概況」統計表2・統計表6(令和7年9月26日公表・各年10月1日現在)によれば、開設者別の病院数の推移は次のとおりです。
| 開設者 | 平成14年 | 令和6年 | 増減率 |
|---|---|---|---|
| 総数 | 9,187 | 8,060 | △12.3% |
| 個人 | 954 | 92 | △90.4% |
| 社会保険関係団体 | 130 | 47 | △63.8% |
| 会社 | 61 | 24 | △60.7% |
| 公益法人 | 400 | 175 | △56.3% |
| 公的医療機関 | 1,377 | 1,182 | △14.2% |
| うち都道府県 | 313 | 184 | △41.2% |
| うち市町村 | 765 | 588 | △23.1% |
| うち地方独立行政法人 | ― | 134 | 新設 |
| 国 | 336 | 317 | △5.7% |
| 医療法人 | 5,533 | 5,626 | +1.7% |
| 社会福祉法人 | 162 | 200 | +23.5% |
| 私立学校法人 | 101 | 113 | +11.9% |
| その他の法人 | 59 | 206 | 3.5倍 |
出典:厚生労働省「令和6(2024)年 医療施設(動態)調査・病院報告の概況」統計表2・統計表6(令和7年9月26日公表・各年10月1日現在)より作成
個人立は954から92へ。10分の1以下になりました。病院全体に占める割合は10.4%から1.1%へ下がっています(本稿で算出)。
公的医療機関のなかでは、都道府県立が313から184へ41.2%減る一方、地方独立行政法人が134まで増えています。自治体が直営から独立行政法人へ運営形態を変えた結果で、病院が消えたのではなく、器が変わった部分が含まれます。
そのなかで医療法人だけがほぼ横ばい(1.7%増)です。病院全体が12.3%減るなかで数を保っており、結果として構成割合は60.2%から69.8%へ上がりました。
増えているのは150〜199床だけ
規模別に見ると、別の集約が起きています。
| 病床規模 | 平成14年 | 令和6年 | 増減率 |
|---|---|---|---|
| 20〜29床 | 195 | 147 | △24.6% |
| 30〜39床 | 438 | 301 | △31.3% |
| 40〜49床 | 694 | 475 | △31.6% |
| 50〜99床 | 2,399 | 1,966 | △18.0% |
| 100〜149床 | 1,456 | 1,393 | △4.3% |
| 150〜199床 | 1,241 | 1,380 | +11.2% |
| 200〜299床 | 1,165 | 1,004 | △13.8% |
| 300〜399床 | 750 | 665 | △11.3% |
| 400〜499床 | 360 | 351 | △2.5% |
| 500床以上 | 489 | 378 | △22.7% |
出典:厚生労働省「令和6(2024)年 医療施設(動態)調査・病院報告の概況」統計表2・統計表6(令和7年9月26日公表・各年10月1日現在)より作成
15の規模区分のうち、増えているのは150〜199床だけです。構成割合も13.5%から17.1%へ上がりました。
小規模(20〜99床)は3,726から2,889へ22.5%減。大規模(500床以上)も489から378へ22.7%減。両端が減り、中規模に寄っているという形です。
もう一つ、注目すべき動きがあります。20〜29床は令和2年の130を底に、令和5年136、令和6年147と増えています。最小規模の病院が、直近では増加に転じました。
有床診療所の側はさらに厳しく、1〜9床は6,379から1,627へ74.5%減、10〜19床は9,799から3,788へ61.3%減っています。
2つの変化が同じことを指している
担い手の変化と規模の変化は、別々の話に見えて同じ方向を指しています。
個人が持てる規模の病院が減った、ということです。
個人立の病院は、その多くが小規模でした。開設者個人と事業が一体で、法人化されていないため、経営者が退けば廃止に直結しやすい構造にあります。小規模病院が22.5%減ったことと、個人立が90.4%減ったことは、無関係ではありません。
他方、150〜199床という規模が増えているのは、診療報酬の区分や地域医療構想のなかで、この規模が成り立ちやすいことを示唆します。ただし統計は理由までは示しません。
承継の観点では、次のように読めます。個人立の小規模病院は、そのままの形では続きにくい。法人化するか、より大きな法人に加わるか、あるいは無床化するか。22年の数字は、その3つの道をたどった結果を示しています。
承継のときに見られる点
評価の目は次のようなところに向きます。
- 法人格。個人立か医療法人か。個人立には譲渡する法人がなく、事業譲渡または新規開設と廃止の組み合わせになります
- 持分の定めの有無。医療法人であれば、これが手順を決めます
- 許可病床数。150〜199床は増えている規模帯、20〜99床は減っている規模帯です
- 地域での位置づけ。近隣に同規模の病院がどれだけあるか
- 公的医療機関との関係。同じ区域の公立病院が地方独立行政法人化や再編の対象になっていないか
- 医師の確保。規模が小さいほど、院長交代が事業の継続を直接左右します
医療法人だけが数を保ってきた22年でした。これは、法人という器が承継に耐えたということでもあります。個人立で続けてこられた場合も、承継を考える段階で法人化を含めて設計することがあります。
病院全体は「病院業界の動向」、病床は「病床の動向」、診療科は「診療科の動向」に整理しています。