浄化槽の保守点検・清掃は、統計が毎年きちんと公表されている分野です。環境省が設置基数・維持管理の実施率・法定検査の受検率までまとめて公表しています。

本稿ではこの公表資料をもとに現在地を確認します。総数は減っているのに、市場としては縮んでいない——その理由が、この分野の構造を説明します。

本稿の数値は環境省「令和6年度における浄化槽の設置状況等について」(令和8年2月20日公表)および環境省「令和5年度における浄化槽の設置状況等について」(令和7年3月7日公表)によります。制度・税務・法務の取り扱いはご状況により異なりますので、実際のご判断にあたっては顧問の専門家にもご確認ください。

総数は減り、合併処理は増えている

環境省「令和6年度における浄化槽の設置状況等について」(令和8年2月20日公表)によれば、令和6年度末時点の浄化槽の総設置基数は7,433,857基です。前年度末の7,455,648基から、21,791基の減少でした。

ただし内訳を見ると、方向が分かれています。

令和5年度末令和6年度末増減
浄化槽 総設置基数7,455,648基7,433,857基△21,791基
 合併処理浄化槽4,098,165基4,143,246基+45,081基
 単独処理浄化槽3,357,483基3,290,611基△66,872基

出典:環境省「令和6年度における浄化槽の設置状況等について」(令和8年2月20日公表)より作成

減っているのは単独処理浄化槽だけで、合併処理浄化槽はむしろ増えています。単独処理浄化槽は平成13年の浄化槽法改正で新設が原則できなくなったもので、既存のものが撤去・転換されるたびに減っていきます。

令和6年度の合併処理浄化槽の新規設置は84,377基で、うち高度処理型が68,612基でした。前年度は新規90,455基・うち高度処理型74,779基(82.7%)です。

この置き換わりは、保守点検と清掃を担う側には意味があります。合併処理浄化槽は単独処理より構造が複雑で、点検の手間も清掃の頻度も違います。基数の総和が減っていても、作業量がそのまま減るわけではありません。

保守点検74.5%、清掃65.9%という実施率

同資料によれば、令和6年度の保守点検の実施率は74.5%、清掃の実施率は65.9%です。

令和5年度令和6年度
保守点検の実施率73.9%74.5%
清掃の実施率64.1%65.9%
7条検査の受検率97.4%97.2%
11条検査の受検率49.8%50.9%

出典:環境省「令和6年度における浄化槽の設置状況等について」(令和8年2月20日公表)より作成

浄化槽法は、保守点検・清掃・法定検査を管理者の義務としています。それでも保守点検は4分の1、清掃は3分の1が実施されていません。

とくに11条検査(年1回の定期検査)の受検率は50.9%で、半数近くが受けていない状態です(合併処理浄化槽に限れば67.2%)。一方、設置後に一度だけ行う7条検査の受検率は97.2%と高く、対照的です。

いずれの実施率も前年度から上がっています。数字としては改善の方向ですが、未実施の分がそのまま潜在的な業務量として残っているという読み方もできます。

この分野の収益の性質

浄化槽の保守点検・清掃は、契約が続く限り毎年同じ作業が発生するタイプの事業です。一度契約を取れば、設置者が撤去するか業者を替えるまで続きます。

この性質は、譲り受ける側から見て評価しやすい要素です。受注が読めるためです。工事のように年ごとに変動する事業とは、収益の見え方が違います。

他方で、単価の上げにくさが付いて回ります。作業の内容が法令で決まっており、同じ地域に複数の業者がいる場合、差がつきにくいためです。

保守点検業者は都道府県知事の登録(または届出)、清掃業者は市町村長の許可を受ける必要があります。営業できる区域が行政区画で区切られていることが、この分野の構造を決めています。隣の市町村へ広げるには、その市町村の許可が要ります。だからこそ、区域をまたいで事業を広げる手段として承継が使われる場面があります。

承継のときに見られる点

評価の目は次のようなところに向きます。

  • 登録・許可の区域。どの都道府県・市町村で営業できるか。譲り受ける側にとっては、この区域そのものが取得の目的になることがあります
  • 管理契約の件数と継続年数。何基を管理しているか、解約率はどの程度か
  • 合併処理と単独処理の比率。単独処理の比率が高い場合、基数は今後減っていく前提で見られます
  • 浄化槽管理士・浄化槽清掃技術者の在籍。有資格者がいなければ業務ができません。経営者ご本人が資格者である場合、退任の設計が必要になります
  • バキューム車等の保有と更新時期。簿価と実勢、次の更新にかかる負担
  • 市町村からの受託の有無。公共の受託があるかで収益の安定度が変わります

基数という分かりやすい指標がある一方、中身が単独から合併へ入れ替わっている途中です。同じ「◯基管理」でも、その内訳によって将来の作業量と収入が変わります。

環境分野の他業種は「産業廃棄物処理業界の動向」に、許認可の引き継ぎ全般は「M&Aと許認可」に整理しています。

よくあるご質問

A.環境省の統計では、総設置基数は令和5年度末の7,455,648基から令和6年度末の7,433,857基へ減っています。ただし内訳では、単独処理浄化槽が66,872基減る一方、合併処理浄化槽は45,081基増えています。
A.浄化槽法は保守点検を管理者の義務としているため、本来は100%に近づくべき数字です。清掃は65.9%、11条検査の受検率は50.9%で、いずれも前年度からは上昇しています。
A.保守点検業は都道府県知事の登録(または届出)、清掃業は市町村長の許可です。株式譲渡では法人が存続するため原則そのまま残りますが、事業譲渡では取り直しになります。有資格者の在籍が要件に関わる点にもご注意ください。顧問の専門家にもご確認ください。
A.基数は目安のひとつですが、単独処理と合併処理の比率、契約の継続年数、営業区域によって将来の収入は変わります。基数だけで評価が決まるものではありません。

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Author & Supervisor

執筆・監修:株式会社プラチナパートナーズ 取締役副社長 神垣 宏康

東京都千代田区(日比谷)のM&A仲介・事業承継アドバイザリーファーム、株式会社プラチナパートナーズ取締役副社長。中小企業の事業承継・会社売却を初回相談から成約まで一気通貫で支援しています。役員紹介・会社概要はこちら