解体工事業は、建設業のなかで最も業者数が増えている分野です。背景には、建物ストックの高経年化と空き家の増加という、長期にわたって続く構造的な要因があります。同時に、分別解体・再資源化の規制と産業廃棄物の処理という、法令遵守の負荷が重い業種でもあります。本稿では、公表統計から解体工事業界の現在地を整理します。

解体工事業の現在地|29業種で最も増えている

国土交通省「建設業許可業者数調査」(令和8年3月末現在)によれば、解体工事業の許可を取得している業者は72,204業者で、前年比3.2%増です。同調査で前年同月比の増加数が最も大きかった許可業種が解体工事業(+2,255業者)であり、次いで塗装工事業(+2,064業者)、内装仕上工事業(+2,063業者)と続きます。29業種のなかで最大の伸びを示している、ということです。

解体工事業は、建設業許可の業種として比較的新しく設けられたものです。同調査の業種別推移を見ると、平成29年3月末に13,798業者だったものが、平成31年3月末に43,186業者、令和3年3月末に60,926業者、そして令和8年3月末に72,204業者へと増えています。制度発足後の登録が一巡した後も、増加が続いています。

建設業全体では、令和8年3月末の許可業者数は483,823業者で前年度比0.03%増と横ばいに近い状況です。そのなかで解体だけが年3%を超える伸びを示していることは、需要の所在を端的に示しています。

需要の背景|空き家900万戸と建物の高経年化

需要の土台は、建物ストックの状況にあります。総務省「住宅・土地統計調査」(2023年)によれば、2023年10月1日現在の総住宅数は6,504万7千戸、空き家は900万2千戸で過去最多、空き家率は13.8%で過去最高となりました。このうち賃貸用・売却用および二次的住宅を除く空き家は385万6千戸(総住宅数の5.9%)です。空き家数は1993年からの30年間で約2倍になっています。

集合住宅も高経年化が進んでいます。国土交通省の推計によれば、分譲マンションのストックは2025年末で723.6万戸、うち築40年以上は158.8万戸です。10年後(2035年末)には約2.0倍の313.1万戸、20年後(2045年末)には約3.2倍の503.6万戸になる見込みとされています。

一方、新築側は縮小しています。同省「建築着工統計調査報告」(令和7年計)によれば、2025年の新設住宅着工戸数は740,667戸で前年比6.5%減、3年連続の減少です。建てる量が減り、壊す量が増えるという方向に、住宅ストックの循環が変わりつつあります。

制度の枠組み|建設リサイクル法と分別解体

解体工事は、法令の網が細かくかかっている分野です。「建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律」(建設リサイクル法)では、一定規模以上の解体工事等について、分別解体等の実施と特定建設資材廃棄物の再資源化等が義務づけられ、発注者による都道府県知事への事前届出が求められています。

事業を営むための資格としては、建設業許可のうち解体工事業の許可を受けるか、建設業許可を持たない場合は建設リサイクル法に基づく解体工事業者の登録を受ける必要があります。登録は工事を行う区域ごとに必要とされている点が、他の業種と異なります。

加えて、石綿(アスベスト)に関する規制があります。大気汚染防止法および石綿障害予防規則により、解体等の作業を行う際には事前調査と結果の報告、作業基準の遵守が求められます。事前調査は一定の要件を満たす者が行うこととされており、調査体制の整備が実務上の負担になっています。

届出・登録の要否、事前調査の要件、報告の対象範囲は、工事の規模・構造・時期によって異なります。個別の判断にあたっては、所管の行政庁および専門家にご確認ください。

産業廃棄物の統計から見る解体の位置づけ

解体工事の出口には、廃棄物の処理があります。環境省「産業廃棄物の排出及び処理状況等(令和5年度実績)」によれば、令和5年度の産業廃棄物の総排出量は3億6,725万トン(前年度3億7,407万トン)で、処理の内訳は再生利用2億79万トン(54.7%)、減量化1億5,772万トン(42.9%)、最終処分875万トン(2.4%)でした。

業種別では、電気・ガス・熱供給・水道業の9,732万トン(26.5%)、農業・林業の8,070万トン(22.0%)に次いで、建設業が7,991万トン(21.8%)で3位です。種類別では、汚泥1億5,854万トン(42.1%)、動物のふん尿8,036万トン(21.9%)に次いで、がれき類が6,068万トン(16.5%)を占めます。がれき類の大半は建設・解体に由来するものです。

処理の受け皿の状況も押さえておく必要があります。同省「産業廃棄物処理施設の設置、産業廃棄物処理業の許可等に関する状況(令和5年度実績等)」によれば、令和5年度末の中間処理施設は19,565件(前年比44件減)、最終処分場は1,551件(前年度と同数)で、最終処分場の残存容量は1億7,741万立方メートル、残余年数は20.3年とされています。処分先の確保は、解体工事業の原価と工程を左右する要素です。

事業承継の観点で何が論点になるか

解体工事会社の承継では、次の点が焦点になります。

第一に、許可・登録の維持です。建設業許可の解体工事業では、経営業務管理責任者と、営業所ごとの専任技術者の要件を満たす必要があります。中小の解体会社では経営者様がこれを兼ねていることが多く、退任のタイミングが許可の維持に直結します。建設リサイクル法に基づく登録の場合は、工事を行う区域ごとの登録状況の確認も必要です。

第二に、処分先との関係です。中間処理施設や最終処分場との継続的な取引、受入価格、搬入枠の確保は、事業の採算に直結します。ここが安定している会社は、それ自体が強みになります。

第三に、機械とオペレーターです。解体重機の保有状況、取得時期、更新の要否と、それを操作できる人員の確保状況が、施工能力を決めます。

そして後継者です。帝国データバンクの2025年調査では国内企業の後継者不在率は50.1%とされています。需要が拡大している分野であるからこそ、事業を続ける体制が整わないまま縮小していくのは、もったいない結果になりがちです。

M&Aで引き継ぐときに整理しておきたいこと

一般に、次のような情報が確認されます。

  • 建設業許可(解体工事業)の有無・有効期限、または解体工事業者登録の区域と有効期限
  • 経営業務管理責任者・専任技術者の氏名と年齢、解体工事施工技士等の有資格者一覧
  • 石綿の事前調査を実施できる有資格者の在籍状況と、過去の調査・報告の記録
  • 建設リサイクル法に基づく届出・再資源化等報告の実施状況
  • 処分先(中間処理・最終処分)の一覧、契約形態、直近の受入単価と搬入実績
  • 保有重機・車両の一覧(取得時期、稼働状況、更新予定)とオペレーターの人数
  • 売上の内訳(元請/下請、住宅/非住宅、公共/民間)と、主要な発注者
  • 近隣対応・苦情・行政指導の履歴

解体は、法令遵守の記録がそのまま会社の信用になる業種です。届出・報告・調査の記録が整っている会社は、それだけで買い手からの評価が変わります。より実務的な論点は「解体工事業のM&A|許可と処分先の引き継ぎ」でも整理しています。

当社は成功報酬型のもと、解体工事業を含む中小企業の事業承継・会社売却をご支援しています。守秘義務を徹底のうえ、初期の整理から対応いたします。

廃棄物の受け皿側の動きは「産業廃棄物処理業界の動向|許可制度と処理需要」でも整理しています。費用の考え方は料金体系のページに公開しています。

本稿の記述は執筆時点(2026年9月)の公表資料に基づきます。最新の情報は各所管官庁の公表をご確認ください。

よくあるご質問

A.増えているのは事実です。国土交通省「建設業許可業者数調査」(令和8年3月末現在)によれば、解体工事業の許可業者は72,204業者で前年比3.2%増、前年同月比の増加数(+2,255業者)は29業種のなかで最大とされています。建設業全体の許可業者数が483,823業者で前年度比0.03%増と横ばいに近いなかでの伸びです。ただし需要の土台も広く、総務省「住宅・土地統計調査」(2023年)では空き家が900万2千戸で過去最多、空き家率は13.8%で過去最高です。差がつくのは、法令遵守の記録と処分先の確保です。
A.事業の採算と工程に直結するからです。中間処理施設や最終処分場との継続的な取引、受入価格、搬入枠の確保が安定していることは、それ自体が強みになります。環境省「産業廃棄物処理施設の設置、産業廃棄物処理業の許可等に関する状況(令和5年度実績等)」によれば、令和5年度末の中間処理施設は19,565件(前年比44件減)、最終処分場は1,551件で、最終処分場の残存容量は1億7,741万立方メートル、残余年数は20.3年とされています。処分先の一覧、契約形態、直近の受入単価と搬入実績を整理してください。
A.確認が必要です。建設業許可の解体工事業では、経営業務管理責任者と、営業所ごとの専任技術者の要件を満たす必要があります。中小の解体会社では経営者様がこれを兼ねていることが多く、退任のタイミングが許可の維持に直結します。建設リサイクル法に基づく登録の場合は、登録が工事を行う区域ごとに必要とされる点も他業種と異なりますので、区域と有効期限を確認してください。届出・登録の要否は工事の規模・構造・時期によっても異なりますので、所管の行政庁および専門家にご確認ください。
A.大気汚染防止法および石綿障害予防規則により、解体等の作業を行う際には事前調査と結果の報告、作業基準の遵守が求められ、事前調査は一定の要件を満たす者が行うこととされています。調査体制の整備は実務上の負担ですが、承継の場面では、事前調査を実施できる有資格者の在籍状況と、過去の調査・報告の記録が確認されます。解体は法令遵守の記録がそのまま会社の信用になる業種ですので、建設リサイクル法に基づく届出・再資源化等報告の実施状況とあわせて揃えておいてください。

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Author & Supervisor

執筆・監修:株式会社プラチナパートナーズ 取締役副社長 神垣 宏康

東京都千代田区(日比谷)のM&A仲介・事業承継アドバイザリーファーム、株式会社プラチナパートナーズ取締役。成功報酬型のもと、中小企業の事業承継・会社売却を初回相談から成約まで一気通貫で支援しています。役員紹介・会社概要はこちら