手技による施術の世界は、資格ごとに数の動きがまったく違います。
厚生労働省の公表統計によれば、10年間ではり及びきゅうを行う施術所は39.5%増、あん摩マッサージ指圧を行う施術所は9.0%減、柔道整復の施術所は直近2年で8か所しか増えていません。本稿ではこの三者三様を確認します。
本稿の数値は厚生労働省「令和6年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況」(令和7年7月29日公表・令和6年末現在)によります。この調査は隔年で行われ、前回は令和4年です。10年間の増減率は本稿で算出しました。制度・税務・法務の取り扱いはご状況により異なりますので、実際のご判断にあたっては顧問の専門家にもご確認ください。
施術所は資格ごとに方向が違う
厚生労働省「令和6年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況」(令和7年7月29日公表・令和6年末現在)によれば、施術所数の10年推移は次のとおりです。
| 年末 | あん摩マッサージ指圧 | はり・きゅう | あん摩・はり・きゅう併設 | 柔道整復 |
|---|---|---|---|---|
| 平成26年(2014) | 19,271 | 25,445 | 37,682 | 45,572 |
| 平成30年(2018) | 19,389 | 30,450 | 38,170 | 50,077 |
| 令和2年(2020) | 18,342 | 32,103 | 38,309 | 50,364 |
| 令和4年(2022) | 18,017 | 33,890 | 38,374 | 50,916 |
| 令和6年(2024) | 17,531 | 35,494 | 38,595 | 50,924 |
| 前回(令和4年)比 | △486(△2.7%) | +1,604(+4.7%) | +221(+0.6%) | +8(0.0%) |
| 10年間の増減率 | △9.0% | +39.5% | +2.4% | +11.7% |
出典:厚生労働省「令和6年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況」(令和7年7月29日公表・令和6年末現在)より作成
3つの動きがはっきり分かれています。
- はり・きゅう専門の施術所は10年で39.5%増——最も伸びている
- あん摩マッサージ指圧の施術所は10年で9.0%減——唯一減っている
- 柔道整復の施術所は50,924で完全に頭打ち——直近2年でわずか8か所増
柔道整復は平成26年の45,572から令和2年の50,364まで伸びたあと、令和4年50,916、令和6年50,924とほぼ動かなくなりました。
なお「その他の施術所」は2,736か所(+63, +2.4%)です。
有資格者は全部増えている
ところが、施術者の数はどれも増えています。
| 年末 | あん摩マッサージ指圧師 | はり師 | きゅう師 | 柔道整復師 |
|---|---|---|---|---|
| 平成26年(2014) | 113,215 | 108,537 | 106,642 | 63,873 |
| 平成30年(2018) | 118,916 | 121,757 | 119,796 | 73,017 |
| 令和2年(2020) | 118,103 | 126,798 | 124,956 | 75,786 |
| 令和4年(2022) | 118,913 | 131,486 | 129,478 | 77,632 |
| 令和6年(2024) | 119,703 | 136,736 | 134,730 | 78,666 |
| 前回比 | +790(+0.7%) | +5,250(+4.0%) | +5,252(+4.1%) | +1,034(+1.3%) |
| 10年間の増減率 | +5.7% | +26.0% | +26.3% | +23.2% |
出典:厚生労働省「令和6年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況」(令和7年7月29日公表・令和6年末現在)より作成
ここにこの業界のいちばん大きな矛盾があります。
柔道整復師は10年で23.2%増えたのに、施術所は11.7%しか増えていません。あん摩マッサージ指圧師は5.7%増えたのに、施術所は9.0%減っています。
資格者は増え、開業する場所は増えていない。つまり1か所あたりの施術者が増えているか、開業しない有資格者が増えているか、あるいはその両方です。統計はどちらかまでは示しません。
1か所あたりの人数から見える形
施術所数と施術者数から計算すると、次のようになります(本稿で算出)。
| 施術者数 | 関連する施術所数 | 1か所あたり | |
|---|---|---|---|
| 柔道整復 | 78,666人 | 50,924か所 | 1.5人 |
| あん摩マッサージ指圧 | 119,703人 | 17,531か所+併設38,595か所 | 2.1人 |
| はり | 136,736人 | 35,494か所+併設38,595か所 | 1.8人 |
出典:厚生労働省「令和6年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況」(令和7年7月29日公表・令和6年末現在)より作成
いずれも1か所あたり1〜2人。ほとんどが一人開業か、それに近い規模だということです。
この規模は、承継を難しくします。従業員がいなければ後を継ぐ人もおらず、施術者が抜ければ患者も離れます。患者は施設ではなく施術者に付いている、というのがこの業界の実態です。
だからこそ、複数店舗を展開する事業者が単独店を引き継ぐ形、あるいは勤務している施術者が独立する形で事業を引き受ける形が現実的な選択肢になります。
承継のときに見られる点
評価の目は次のようなところに向きます。
- 施術者が残るか。これが最大の条件です。患者が個人に付いている事業では、施術者の引き継ぎが事業の引き継ぎそのものになります
- 保険請求の比率。療養費の支給対象となる施術と自費施術の比率。保険請求は制度の見直しの影響を直接受けます
- 患者の継続率とカルテ。リピートの頻度と、記録が整理されているか
- 物件の権利。賃借が多く、譲渡に賃貸人の承諾が要るか
- 資格の種類。はり師・きゅう師・あん摩マッサージ指圧師・柔道整復師のどれを持つか。複数持てば提供できる施術の幅が広がります
- 開設の届出。施術所は保健所への届出が必要で、開設者が変われば手続が生じます
柔道整復の施術所が50,924で止まり、あん摩マッサージ指圧の施術所が減るなかで、はり・きゅうだけが伸びている。自社がどの側にいるかによって、譲渡の場面での見られ方が変わります。
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