建設業の許可業者数は全体でほぼ横ばいですが、29の業種を分けて見ると、動きははっきり分かれています。国土交通省の公表統計によれば、令和7年度に取得業者数が増えた業種は23、減った業種は6。塗装工事業は、増えたほうの2番目にいます。

本稿では公表資料をもとにその位置を確認し、増えている専門工事の承継で何が見られるのかを整理します。

本稿の数値は国土交通省「建設業許可業者数調査」(令和8年5月15日公表・令和8年3月末現在)によります。制度・税務・法務の取り扱いはご状況により異なりますので、実際のご判断にあたっては顧問の専門家にもご確認ください。

一式が減り、専門が増えている

国土交通省「建設業許可業者数調査」(令和8年5月15日公表・令和8年3月末現在)によれば、前年同月と比べた業種別の増減は次のとおりです。

業種増減増減率
増加①解体工事業+2,255業者3.2%増
増加②塗装工事業+2,064業者2.8%増
増加③内装仕上工事業+2,063業者2.3%増
減少①建築工事業△2,626業者1.8%減
減少②土木工事業△1,056業者0.8%減
減少③造園工事業△326業者1.3%減

出典:国土交通省「建設業許可業者数調査」(令和8年5月15日公表・令和8年3月末現在)より作成

上位3つはいずれも工程の一部を担う専門工事、下位3つのうち2つは工事全体を元請として取りまとめる一式工事です。統計は理由までは示しませんが、数字としては「一式が減り、専門が増える」という形になっています。

なお全体では、令和8年3月末現在の建設業許可業者数は483,823業者で、前年度から123業者(0.03%)の増加でした。平成30年度末以降は増加傾向にあり、令和4年度に一度減ったあと、令和5年度末から3年連続で増加しています。

増えているのは新規参入か、許可の追加か

ここは慎重に読む必要があります。同資料によれば、業種別許可の総数は1,787,977業者分で、許可業者の実数483,823に対して1社あたり平均3.7業種。この重複は年々厚くなっています。

1業種のみの許可を受けている業者は221,833業者(全体の45.9%)、複数業種は261,990業者(54.1%)です。許可業者数が最も多かった平成12年3月末時点では、1業種のみが56.5%、複数が43.5%でしたから、26年間で10.6ポイント入れ替わりました。業種別許可の総数も、平成12年の1,392,339業者分から28.4%増えています。

つまり「塗装工事業の許可を持つ業者が2,064増えた」ことは、塗装専業の会社が2,064社増えたことを意味しません。既にある会社が許可を足した分も含まれます。公表統計からは、その内訳までは分かりません。

許可の裾野と、譲渡の相手方の数

同資料によれば、許可を取得している業者が多い業種は、とび・土工工事業184,825業者(全体の38.2%)、建築工事業140,967業者(29.1%)、土木工事業130,833業者(27.0%)。少ない業種は、清掃施設工事業372業者(0.1%)、さく井工事業2,216業者(0.5%)、消防施設工事業16,075業者(3.3%)です。

母数の大きさは、そのまま譲渡の相手方候補の数につながります。同じ業種を持つ会社が全国に十万単位でいる分野と、数百社しかいない分野では、相手探しの進み方がまったく違います。

塗装工事業は上位3業種には入りませんが、増加数で2番目に来る規模の分野です。買い手候補が多いことは、条件を比べられる余地があるという意味で、譲渡側に有利に働きます。

都道府県別に見ると、ピーク時(平成12年3月末)と比べて全都道府県で減少しており、減少率が高いのは秋田県(△37.7%)、宮崎県(△33.9%)、和歌山県(△33.0%)です。全国の総数と地域の実感がずれるのは、この長期の減少があるためです。

承継のときに見られる点

塗装工事業は設備の負担が軽い一方、事業の価値が職人と発注元の関係に乗っています。評価の目は次のようなところに向きます。

  • 元請か下請か。戸建の外壁塗装を直接請けるのか、ゼネコン・工務店の下請なのかで、粗利率も季節性も変わります
  • 特定の元請への依存度。1社に偏っている場合、その関係が譲渡後も続くかが最大の焦点になります
  • 職人の確保。自社雇用か、一人親方への発注か。後者であれば、その関係が引き継げるか
  • 専任技術者と経営業務の管理責任者。経営者ご本人が兼ねている場合、退任と同時に許可の要件が欠けます
  • アフターと保証の残。施工後の保証期間が残っている物件の数と内容

増えている業種は、裏を返せば同じ地域に競合が積み上がっている業種でもあります。そのとき長く続けてきた会社の強みは価格ではなく、手直しが少ないこと、工期を守れること、同じ客先から繰り返し声がかかることに移ります。いずれも数字に表れませんが、発注元は必ず見ています。

建設業全体の動きは「建設業界の動向」に、実務は「塗装工事業のM&A」に整理しています。

よくあるご質問

A.公表統計が示すのは許可を取得している業者の数であって、市場規模や工事量ではありません。また既存の会社が許可を追加した分も含まれるため、塗装専業の会社が同じ数だけ増えたことを意味するものでもありません。
A.統計は増減の数を示すだけで、理由は示しません。令和7年度は建築工事業が△2,626業者、土木工事業が△1,056業者で、いずれも減少幅の大きいほうに入っています。
A.株式譲渡では法人が存続するため許可は原則そのまま残りますが、経営業務の管理責任者や専任技術者が退任すると要件を欠きます。事業譲渡や会社分割では手続が異なります。顧問の専門家にもご確認ください。
A.候補が多ければ条件を比べる余地が生まれますが、数の多さがそのまま価格につながるわけではありません。実際には、貴社の受注構造と職人体制を引き継げる相手かどうかが条件を決めます。

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Author & Supervisor

執筆・監修:株式会社プラチナパートナーズ 取締役副社長 神垣 宏康

東京都千代田区(日比谷)のM&A仲介・事業承継アドバイザリーファーム、株式会社プラチナパートナーズ取締役副社長。中小企業の事業承継・会社売却を初回相談から成約まで一気通貫で支援しています。役員紹介・会社概要はこちら