会社を譲るといっても、最初から株式を100%手放す形ばかりではありません。過半数だけを譲って社長はしばらく残る、まず資本提携から始める、数年かけて段階的に移す——こうした設計はいずれも現実的な選択肢です。ただし、手数料の計算は100%譲渡を前提に組まれていることが多いため、一部譲渡のときは基準額の数え方を先に確かめておく必要があります。本稿では、どこで金額が変わるのかを計算例で示します。

一部だけを譲渡する形が選ばれる場面

まず、どういうときにこの形になるのかを整理します。目的が違えば、確認すべき契約条項も変わるためです。

  • 社長が数年残る前提——引継ぎ期間中は一定の株式を持ち続け、期間終了後に残りを譲る
  • 資本提携から始める——まず少数の出資を受け、相性を確かめてから過半数の譲渡に進む
  • 買い手の資金調達の都合——一度に全株を買う資金を用意できず、二回に分ける
  • 親族に一部を残す——不動産や関連事業との関係で、完全には手放さない

いずれの場合も、譲渡は一度で終わりません。したがって「手数料は何回、いくら発生するのか」が、100%譲渡の場合より重要な論点になります。社長の残留そのものについては「売却後も社長を続けられるか」もあわせてご覧ください。

基準額をどう数えるか|四つの組み合わせ

移動総資産レーマン方式の基準額は株式価値(譲渡対価)+負債総額です。ところが一部譲渡では、株式価値と負債のそれぞれについて「全部か、割合分か」という選択肢が生まれ、組み合わせで四通りになります。

数え方株式価値負債総額金額への影響
A 実際の対価+負債全額受け取る対価の実額全額を加算負債の重い会社ほど基準額が大きくなる
B 実際の対価+負債の按分受け取る対価の実額譲渡割合分を加算受け取る金額との対応が取りやすい
C 100%換算+負債全額対価÷譲渡割合全額を加算最も基準額が大きくなる
D 実際の対価のみ受け取る対価の実額加算しない株式価値のみを基準とする方式

具体的に計算します。株式価値が100%で3億円、負債総額が2億円の会社で、51%を1億5,300万円で譲渡するケースです。料率は5億円以下の部分に5%を適用します。

数え方基準額レーマン計算額
A 対価+負債全額1億5,300万円+2億円=3億5,300万円1,765万円
B 対価+負債の51%1億5,300万円+1億200万円=2億5,500万円1,275万円
C 100%換算+負債全額3億円+2億円=5億円2,500万円

同じ取引でも、数え方によって1,275万円から2,500万円まで開きます。料率が同じでも金額が倍近く変わる——これが「基準額の定義を先に確認する」と申し上げる理由です。基準額そのものの中身は「手数料の基準額には何が含まれるか」で詳しく扱っています。

なお、AもBも計算額が最低手数料の2,000万円を下回りますので、当社の基準では成功報酬は2,000万円(税別)になります。一部譲渡は対価が小さくなりやすく、最低手数料が効く場面が増えるという点も押さえておいてください。

段階的に譲渡するとき、手数料は何回発生するか

先に51%、数年後に残り49%という設計にした場合、手数料は一回でしょうか、二回でしょうか。ここは契約書の定めによります。考えられる整理は三つです。

  • 都度発生——それぞれの譲渡について計算する。二回目にも最低手数料が適用されると総額は大きくなる
  • 通算——最終的に100%が移った時点の総額で計算し、一回目に支払った分を差し引く
  • 一回目のみ——支配権が移る一回目を報酬の対象とし、二回目は対象外とする

売り手にとって総額が読みやすいのは通算方式です。ただし二回目が数年先になる場合、そのときも同じ仲介が関与するのかという問題があり、契約期間の定めとあわせて整理する必要があります。「二回目のときに改めて契約する」のか「今回の契約が及ぶ」のかを、文言で確認してください。

もう一つ見落とされやすいのが、二回目の価格をどう決めるかです。一回目の契約に買取条項(将来、一定の算式で残りを買い取る定め)が入っていれば、二回目の対価は自動的に決まります。入っていなければ、そのときの交渉になります。手数料は対価に連動しますから、価格の決め方が決まっていなければ、手数料の総額も読めません。

残した株式をどう考えるか

費用の話から少し離れますが、判断に直結するので触れておきます。過半数を譲った後のオーナーは少数株主になります。立場が変わることの意味は、次のとおりです。

論点過半数を譲った後に起きること
経営の決定取締役の選任など重要な決議は買い手側の意思で決まる
配当配当を出すかどうかも多数決で決まる。受け取れる保証はない
残りの売却買取条項がなければ、いつ・いくらで売れるかは相手次第
相続買取の道筋がないまま相続が起きると、遺族が換金しにくい株式を持つことになる

ですから、一部譲渡を選ぶのであれば、残した株式の出口を最初の契約に書いておくことが大切です。何年後に、どういう算式で、誰が買い取るのか。ここが空白のまま進むと、数年後に価格交渉をやり直すことになり、そのときの費用も改めて発生します。

契約前に確認しておくこと

一部譲渡・段階譲渡を検討する場合、仲介契約の前に次の点を書面で確認してください。

  • 基準額の数え方——対価の実額か100%換算か。負債は全額か按分か
  • 最低手数料の適用——一部譲渡でも同じ最低額が適用されるか。二回目にも適用されるか
  • 段階譲渡の通算——二回目の手数料は通算するか、都度計算するか
  • 契約の有効期間——二回目の譲渡が契約期間を超える場合の扱い
  • 二回目の価格の決め方——買取条項の有無と算式

当社は移動総資産レーマン方式(基準額=株式価値+負債総額・最低2,000万円/税別)を採用しており、相談料・着手金・月額報酬はいただきません。一部譲渡の場合も、ご契約の前に自社の数字を当てはめた試算をお示しし、二回目が想定される場合はその時点の見込みまで含めてご確認いただいています。中間金は成功報酬額の10%で、成功報酬から全額を差し引きますが、基本合意後に不成立となった場合、返金はいたしません。

株主が複数いる場合の負担の分け方については「株主が複数いる場合の手数料」をご覧ください。

よくあるご質問

A.契約書の定め次第ですが、最低手数料は案件ごとに適用されるのが一般的です。一部譲渡は対価が小さくなりやすいため、レーマン方式の計算額が最低額を下回り、最低手数料が適用される場面が増えます。当社の最低額は2,000万円(税別)です。ご契約前に、想定される譲渡割合で試算した金額をお示ししています。
A.都度計算する契約であれば二回発生し、二回目にも最低手数料が適用されると総額は大きくなります。最終的な総額で計算して既払分を差し引く通算方式であれば、一回分に近い負担で収まります。どちらの整理になっているか、また二回目が仲介契約の有効期間を超える場合にどう扱うかを、契約前に確認してください。
A.対価が小さくなる分だけレーマン方式の計算額は下がりますが、最低手数料が適用されると差は縮まります。また段階譲渡で二回発生する契約であれば、総額はかえって大きくなることもあります。手数料だけで譲渡割合を決めるのではなく、経営をどう引き継ぐかという目的から決め、その形に合う手数料の定め方を確認する順序をお勧めします。
A.最初の契約に買取条項がなければ、買い取りは相手方の判断になります。過半数を譲った後は少数株主となり、配当や経営の決定に対する影響力も限られます。一部譲渡を選ぶ場合は、残した株式について、時期・算式・買い手を最初の契約に書いておくことをお勧めします。具体的な条項の作り方は弁護士にもご確認ください。

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全部を譲るか、一部を譲るか。試算してから決められます。

譲渡割合ごとの手数料の見込みと、残した株式をどう扱うかの選択肢をご説明します。ご相談の段階で費用は発生しません。
フォームは24時間受け付けており、2営業日以内にご返信します。メール(info@platinumpartners.jp)でも承ります。

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Author & Supervisor

執筆・監修:株式会社プラチナパートナーズ 取締役副社長 神垣 宏康

東京都千代田区(日比谷)のM&A仲介・事業承継アドバイザリーファーム、株式会社プラチナパートナーズ取締役。成功報酬型のもと、中小企業の事業承継・会社売却を初回相談から成約まで一気通貫で支援しています。役員紹介・会社概要はこちら