M&Aの仲介契約を結んだあと、「思っていた進み方と違う」「事情が変わって一旦止めたい」と考えることは、決して珍しくありません。そのときに気になるのが費用です。途中でやめたら、何を支払うことになるのか。本稿では、仲介契約を解除する場合に発生し得る費用と、契約書のどこを確認すればよいかを整理します。契約前の確認事項は「M&A仲介契約(アドバイザリー契約)の読み方」もあわせてご覧ください。

まず確認するのは「契約の型」と「期間」

仲介契約には、大きく分けて専任型と非専任型があります。専任型は、契約期間中は他社に依頼できない代わりに、仲介会社は優先的に人員と時間を割きます。非専任型は複数社に依頼できますが、各社の関与の度合いは下がる傾向があります。

期間は6か月から1年程度で定められることが多く、期間満了までは自動的に続き、満了時に自動更新される条項が入っていることがあります。「やめたい」と思った時点で、まず契約書の期間と更新の定めを確認してください。自動更新であれば、更新日の何日前までに申し出るかも決まっているはずです。

当社の場合、専任でお預かりしますが、期間の途中でも書面でお申し出いただければ解除に応じます。相談料・着手金・月額報酬は0円のため、解除の時点で成約に至っていなければ、当社にお支払いいただく報酬は発生しません。

解除しても残る可能性がある費用

解除の時点で報酬が発生していなくても、次の費用は契約書の定め方によって残ることがあります。

項目内容確認するところ
着手金・月額報酬既に支払ったものは、原則として返還されない返還の定めの有無
中間金基本合意に至っていれば、支払済みの中間金の扱いが問題になる不成立時の返還条項
実費交通費・郵送費・登記事項証明書の取得費など実費負担の範囲と上限
テール条項解除後に、紹介済みの相手と成約した場合の報酬義務対象期間と対象先の範囲

当社の中間金は基本合意時に成功報酬額の10%をお預かりし、成約時に成功報酬から全額を差し引きます(基本合意後に不成立となった場合、返金はいたしません)。基本合意後に不成立となった場合、中間金の返金はいたしません。基本合意まで進んだ段階での解除は、この点をご理解のうえでご判断ください。

テール条項|解除後にも効き続ける定め

解除に関して最も見落とされやすいのがテール条項です。これは、契約終了後の一定期間内に、その仲介会社から紹介を受けた相手と成約した場合、報酬を支払うという定めです。

仲介会社の立場からすれば、紹介した相手と後日直接まとまることで報酬を回避される事態を防ぐための条項で、それ自体は不合理ではありません。問題になるのは範囲です。期間が2年や3年と長い、対象先が「紹介した相手」ではなく「開示した情報に関係する全ての者」と広い、といった書き方であれば、実質的に長期間拘束されることになります。

詳しくは「専任契約とテール条項|M&A仲介契約を結ぶ前に確認すべきこと」で解説しています。解除を考えてから読むのでは遅く、契約前に確認しておくべき条項です。

解除を申し出るときの進め方

実務としては、次の順で進めるのが穏当です。

  • 契約書の解除条項・期間・テール条項を読み直す
  • 担当者に、口頭で事情を伝える(理由を詳しく述べる義務はありません)
  • 書面(メールで足りることが多い)で解除の意思を通知する
  • 開示済みの資料の返還・破棄について確認する
  • 打診済みの相手先の一覧を、書面で受け取っておく

最後の点は重要です。テール条項の対象がどこまでかを後から争わないために、打診先が確定した記録を残しておきます。誠実な仲介会社であれば、この依頼を嫌がることはありません。

「やめる」ではなく「止める」という選択

ご事情が変わった場合、契約の解除ではなく一時的に進行を止めるという方法もあります。相手先への打診を停止し、案件を動かさない状態で置いておく。市況や業績の見通しが変わったとき、あるいは社内の体制が整うのを待つときには、この形のほうが合理的なことがあります。

いったん解除してしまうと、再開時にはもう一度資料を作り直し、打診先を組み直すことになります。数か月の中断であれば、止めておくほうが結果的に早いことも少なくありません。どちらが良いかは状況によりますので、担当者に率直にご相談ください。

まとめ|解除の条件は、契約前に確認する

本稿の要点を整理します。

  • まず契約の型(専任か否か)・期間・自動更新の定めを確認する
  • 着手金・月額報酬・中間金は、支払済みのものが返らないことがある
  • テール条項は解除後も効く。期間と対象先の範囲を必ず見る
  • 解除は書面で通知し、打診先の一覧を受け取っておく
  • 解除ではなく一時停止という選択肢もある

当社は相談料・着手金・月額報酬を0円としており、成約に至らなければ報酬は発生しません。成功報酬は移動総資産レーマン方式(基準額=株式価値+負債総額)で算定し、最低報酬額は2,000万円(税別)です。契約前に、解除の条件を含めて書面でご説明します。詳細は料金体系をご覧ください。

よくあるご質問

A.一般的な仲介契約では、期間途中の解除そのものに対する違約金は定められていないことが多く、問題になるのは既に支払った着手金・中間金の扱いと、テール条項による解除後の報酬義務です。ただし契約内容は会社によって異なりますので、必ずご自身の契約書をご確認ください。当社は着手金・月額報酬を0円としており、解除の申し出に対して違約金をいただくことはありません。
A.テール条項の対象となる可能性が高く、報酬の支払義務が生じることがあります。期間と対象先の範囲は契約書に定められていますので、直接交渉に入る前に必ずご確認ください。紹介を受けた相手と後日成約する場合、報酬を支払うのが通常の取り扱いです。
A.秘密保持契約に基づき、返還または破棄を求めることができます。打診先に開示済みの資料についても、回収または破棄の対応を依頼できます。あわせて、どこまで打診が進んでいたかを書面で受け取っておくと、後の確認が容易になります。

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Author & Supervisor

執筆・監修:株式会社プラチナパートナーズ 取締役副社長 神垣 宏康

東京都千代田区(日比谷)のM&A仲介・事業承継アドバイザリーファーム、株式会社プラチナパートナーズ取締役。成功報酬型のもと、中小企業の事業承継・会社売却を初回相談から成約まで一気通貫で支援しています。役員紹介・会社概要はこちら