承継の相手は、親族・従業員・第三者の三つに大きく分かれます。このうち「身内に継がせるなら費用はかからない」と考えられていることが多いのですが、実際には別の形で費用が出ます。しかも第三者への譲渡と違い、お金が入ってこないのに支出だけが生じる場面があります。本稿では、三つの選び方について費用の出どころ・時期・誰が負担するのかを並べて整理します。
「身内なら費用はかからない」とは限らない
費用の性質を最初に整理しておきます。第三者への譲渡では、対価が入ってきて、そこから費用を払うという流れになります。ところが親族内承継や従業員承継では、この関係が変わります。
- 親族内承継——株式を贈与や相続で移すため、対価は入らない。一方で税金と手続きの費用は出る
- 従業員承継——後継者が株式を買い取る。買う側に資金が要り、調達の費用が生じる
- 第三者への譲渡——対価が入り、その中から手数料や費用を支払う
つまり「費用の総額」だけでなく「誰の財布から、いつ出るか」が三者三様です。とくに親族内承継は、現金収入がないまま納税が発生し得る点に注意が必要です。以下、それぞれ具体的に見ていきます。
親族内承継でかかるもの
親族に株式を移す場合、次の費用と税負担が関わります。
| 項目 | 内容 | いつ出るか |
|---|---|---|
| 株価の評価 | 非上場株式の相続税評価。顧問税理士に依頼するのが一般的 | 移転を検討する段階 |
| 贈与税・相続税 | 後継者が負担する。会社の業績が良いほど評価額は高くなりやすい | 贈与時・相続時 |
| 事業承継税制の手続き | 特例承継計画の作成・提出、認定申請、その後の継続報告 | 適用時と適用後 |
| 株式の集約 | 名義株・分散株を買い戻す場合の資金と手続き | 承継前 |
| 遺留分への手当て | 他の相続人との調整。遺言や民法特例の活用 | 承継前 |
制度面では、事業承継税制の特例措置について、特例承継計画の提出期限は2027年9月30日、適用期限は2027年12月31日とされています。使うかどうかを検討するのであれば、逆算して準備を始める必要があります。ただし適用後も継続報告などの実務が続きますので、「税が猶予される」ことだけを見て決めないことが大切です。適用の可否や具体的な税額は、顧問税理士にご確認ください。
進め方の全体像は「親族内承継の進め方」で扱っています。
従業員承継・MBOでかかるもの
役員や従業員が株式を買い取る形では、買い取る側の資金が最大の論点になります。
| 項目 | 内容 | 負担する側 |
|---|---|---|
| 株価の算定 | 売買価格の根拠となる評価。第三者の算定書を用意することがある | 売り手・買い手で協議 |
| 買取資金の調達 | 金融機関からの借入、受け皿会社の設立 | 後継者側 |
| 借入に伴う費用 | 事務手数料、信用保証料、担保設定の登記費用 | 後継者側 |
| 経営者保証の引継ぎ | 現オーナーの保証を外し、後継者が引き受けるかの交渉 | 双方と金融機関 |
| 契約書・登記 | 株式譲渡契約、株主名簿の書換え、役員変更登記 | 協議による |
従業員承継でよく問題になるのは、後継者に買い取る資金がないことです。会社の価値が高いほど買取価格は上がり、後継者の借入負担も重くなります。結果として価格を下げることになれば、現オーナーの手取りは第三者へ譲渡した場合を下回ります。この差額は、実質的に現オーナーが負担した承継費用と見ることができます。
また、現オーナーの経営者保証を外せるかどうかも重要です。金融庁の公表によれば、経営者保証に依存しない新規融資の割合は2024年度上期で52%とされており、環境は変わりつつありますが、案件ごとの交渉であることに変わりはありません。進め方は「従業員承継(MBO・EBO)とは」と「経営者保証は外せるか」をご覧ください。
第三者へ譲渡する場合と並べて比べる
三つを同じ表に並べます。金額ではなく、費用の性質と出どころで比べてください。
| 比べる軸 | 親族内承継 | 従業員承継 | 第三者への譲渡 |
|---|---|---|---|
| オーナーに入る金額 | 原則なし(贈与・相続) | 買取価格。資金の制約を受けやすい | 譲渡対価 |
| 主な費用 | 税理士報酬・申請費用 | 算定・調達に伴う費用 | 仲介手数料・専門家費用・実費 |
| 費用を負担する人 | 後継者(税)と会社 | 後継者(借入) | オーナー(対価から支払う) |
| 税 | 贈与税・相続税 | 譲渡益20.315% | 譲渡益20.315% |
| 経営者保証 | 引継ぎの交渉が要る | 引継ぎの交渉が要る | 買い手側で外れることが多い |
| 準備期間 | 数年単位 | 数年単位 | 相手探しから成約まで |
第三者への譲渡では、当社の場合、成功報酬は移動総資産レーマン方式(基準額=株式価値+負債総額)で計算し、最低額は2,000万円(税別)です。相談料・着手金・月額報酬はいただきません。中間金は成功報酬額の10%で、成功報酬から全額を差し引きますが、基本合意後に不成立となった場合、返金はいたしません。
この金額は、親族内承継の税負担や、従業員承継で価格を下げた場合の差額と同じ土俵で比べるべき数字です。手数料だけを取り出して「高い・安い」と判断すると、比較になりません。
費用だけでは決まらない部分
最後に、費用の表には表れない判断材料を挙げます。実際には、こちらのほうが結論を左右することが多いと感じます。
- 後継者の意思——継ぎたいと思っているか。家族が納得しているか
- 経営の力量と時間——育成に何年かけられるか。その間の体制は保つか
- 取引先・金融機関の反応——代が替わったときに関係が続くか
- 資金力——後継者が借入を背負って経営できるか
- 従業員の受け止め——社内から選ぶ場合、他の従業員の納得が得られるか
当社は第三者への譲渡を支援する立場ですが、親族や従業員への承継が適している会社もあります。決算書をお預かりできれば、第三者へ譲渡した場合の対価の考え方と手数料の見込みをお伝えできますので、税理士に試算してもらった親族内承継の負担と並べてご判断いただけます。どちらを選ぶにせよ、比べる材料が揃っていることが先です。
よくあるご質問
Free Consultation
親族・従業員・第三者。三つを並べて比べられます。
第三者へ譲渡した場合の対価の考え方と手数料の見込みをお伝えします。ご相談の段階で費用は発生しません。
フォームは24時間受け付けており、2営業日以内にご返信します。メール(info@platinumpartners.jp)でも承ります。