M&A仲介への転職を考える方から、報酬の仕組みについて聞かれることがよくあります。固定給と案件成果の組み合わせで決まるのが一般的ですが、なぜその形になるのか、そして成果連動であるがゆえに律すべきことは何かまで含めて理解しておくことが、この仕事を続けるうえで重要だと考えています。本稿ではその構造を整理します。

なぜ成果連動なのか

M&A仲介の収益は、成約したときに受け取る成功報酬が中心です。相談を受け、資料を作り、相手を探し、交渉を支える——その工程のすべてを行っても、成約に至らなければ収益は生じません。

加えて、一件あたりの期間が長いという特徴があります。相談から成約まで数か月から1年程度を要することが珍しくありません。担当者が同時に持てる案件数にも限りがあります。

この構造から、担当者の報酬も成果と連動する形が取られるのが一般的です。会社の収益構造がそのまま個人の報酬構造に反映されていると言えます。

もうひとつ、一件の金額が大きいという事情もあります。会社そのものが動く取引ですから、一件の成否が事業の数字に与える影響は小さくありません。だからこそ、担当者が案件にどう向き合うかが、そのまま会社の質になります。

固定給と成果連動、それぞれの意味

報酬は通常、固定給と成果連動部分の組み合わせで構成されます。

固定給は、成約の有無にかかわらず支払われる部分です。案件は水物ですから、年に何件成約するかを自分で完全にコントロールすることはできません。固定給があることで、目先の1件に判断を歪められずに済みます。

成果連動部分は、担当した案件の成果に応じて支払われます。工程のすべてを一人で担う仕事である以上、成果が報酬に反映されること自体は自然です。

当社の具体的な条件(固定給の範囲、インセンティブの料率、支給の時期)は採用情報に記載しています。本稿では金額には触れません。条件は変わり得るものであり、正確な情報は採用ページを唯一の出典としているためです。

成果連動が生む、避けられない緊張

ここからが本題です。成約で報酬が決まる構造は、担当者に「まとめたい」という力を働かせます。これは仕組み上、避けられません。

そして、依頼者の利益と一致しない場面が実際にあります。

  • 条件が十分でないのに、まとめる方向に誘導したくなる
  • 売り手にとって不利な情報を、伝える時期を遅らせたくなる
  • 撤退すべき案件を、続けたくなる
  • 受けるべきでない案件を、受けたくなる

「自分はそんなことはしない」で済ませてはいけないと考えています。構造がそうなっている以上、意志だけでは足りません。運用で律する必要があります。

何で律するのか

当社で運用として定めているのは、次のようなことです。

  • 受託の段階で断る——支援できないと判断した案件は受けない。受けた以上は約束になる
  • 報酬体系を契約前に書面で説明する——中間金が不成立でも返金されないことを含めて、最初に伝える
  • 記録を残す——面談・電話でのやりとりを記録し、事実と所感を分けて書く
  • 依頼者側の専門家の関与を勧める——税理士・弁護士に見てもらうことを、こちらから促す
  • 悪い知らせほど早く伝える——遅らせたくなる情報ほど、早く共有する

中小企業庁の「中小M&Aガイドライン(第3版・令和6年8月)」も、支援機関に対して手数料の算定基準や利益相反への対応を明確にすることを求めています。誠実さは「私は誠実です」と言うことではなく、運用の積み重ねで示すものだというのが当社の立場です。

これらはいずれも、短期的には自分の報酬を減らす方向に働きます。断れば案件が減り、悪い知らせを早く伝えれば破談が早まることもある。それでも運用として定めているのは、この仕事が紹介と信頼で続く仕事だからです。目先の一件を取りにいく人は、長くは続きません。

転職を検討する方が確認すべきこと

報酬条件を比べるとき、金額だけを見ると判断を誤ります。次を確認してください。

  • 固定給と成果連動の比率(固定が薄いほど、目先の案件に判断が寄りやすい)
  • 成果連動部分の算定基準と、支給の時期
  • 案件のソーシングを個人が担うのか、会社が支援するのか
  • 同時に担当する案件数の目安
  • 成約しない期間が続いたときに、どう扱われるか
  • 受託を断る判断が、社内で尊重されるかどうか

最後の項目が、実は最も大きいと考えています。断る判断が評価されない組織では、受けるべきでない案件を受け続けることになります。それは依頼者にとっても、担当者自身にとっても不幸です。

あわせて、入社後に何を任されるかも確認してください。ソーシングだけを担当するのか、評価も資料作成も交渉も担うのか。工程の一部だけを繰り返す形だと、経験の幅は広がりにくくなります。当社は初回相談から成約まで一人のアドバイザーが一気通貫で担当する形を取っています。

まとめ|構造を知ったうえで働く

要点を整理します。

  • 成果連動は、M&A仲介の収益構造がそのまま反映されたもの
  • 固定給があることで、目先の1件に判断を歪められずに済む
  • 成約で報酬が決まる以上、依頼者の利益と一致しない場面は必ずある
  • 意志ではなく運用で律する——断る・先に言う・記録する・専門家を勧める
  • 転職先を選ぶなら、断る判断が尊重される組織かを見る

当社の募集要項・選考の流れは採用情報をご覧ください。実務の全体像は「アドバイザー実務のコラム」に工程ごとに整理しています。

よくあるご質問

A.会社によって扱いが異なります。入社当初は固定給の比重を高くし、経験に応じて変えていく形を取るところもあります。当社の条件は採用情報に記載していますので、そちらをご確認ください。選考の過程でもご説明します。
A.案件には波があり、成果が出ない時期は誰にでも来ます。重要なのは、その原因を個人の能力に帰さず、工程のどこで止まっているかを一緒に見ることだと考えています。案件の進行が止まる原因は、たいてい特定の工程にあります。
A.当社では、支援できないと判断した案件を断ることを適切な判断として扱います。受けた以上は約束であり、果たせない約束をしないことが依頼者に対する誠実さだと考えているためです。詳しくは選考の場でお話しします。

Free Consultation

M&Aアドバイザーを募集しています。

仕事の中身と、当社が運用として定めていることをお伝えします。まずは採用情報をご覧ください。
お問い合わせはメール(info@platinumpartners.jp)でも承ります。

無料相談を申し込む

Author & Supervisor

執筆・監修:株式会社プラチナパートナーズ 取締役副社長 神垣 宏康

東京都千代田区(日比谷)のM&A仲介・事業承継アドバイザリーファーム、株式会社プラチナパートナーズ取締役。成功報酬型のもと、中小企業の事業承継・会社売却を初回相談から成約まで一気通貫で支援しています。役員紹介・会社概要はこちら