「買い手さんは前向きです」。この一言が、数か月後に問題になります。言ったほうは感触を伝えたつもりで、聞いたほうは決まりかけていると受け取る。事実と意見が混ざった報告は、時間が経つほど食い違いを大きくします。本稿では、事実・伝聞・推測・意見を分けて伝える言葉づかいと、温度感の言語化の方法を整理します。当社の募集要項は採用情報をご覧ください。

混ざると何が起きるか

依頼者は、こちらの報告を材料に判断します。そこに意見が混ざっていると、意見を事実として持ち帰ります。

起きることは三つです。

  • 期待が独り歩きする——「前向き」が「決まりそう」になり、家族や顧問の先生にもそう伝わる。後で下方修正するときの落差が大きくなります
  • 意思決定の前提がずれる——確認できていないことを前提に、別の判断(設備投資の見送り、後継者への説明)が動き出します
  • 信頼が崩れる——結果が違ったとき、「あのとき前向きだと言った」という話になります。内容の当否ではなく、区別していなかったことが問題になります

逆に、分けて伝えていれば、結果が変わっても関係は壊れません。「推測としてお伝えしたことが外れた」は説明できますが、「事実として伝えたことが違った」は説明できません。

四つに分ける

報告に出てくる内容は、次の四つに分けられます。

種類定義言葉づかい
事実確認できた出来事・書面に書かれていること「○日に意向表明書を受領しました。提示額は書面のとおりです」
伝聞誰かが言ったこと。真偽は未確認「先方の担当者から、社内で検討中と伺っています」
推測事実からのこちらの読み「これは私の推測ですが、決裁の時期を待っている可能性があります」
意見こちらの評価・提案「私の意見としては、いま条件を動かさないほうがよいと考えます」

要領は簡単です。種類を口に出してから内容を言う。「事実としては」「伺っている範囲では」「推測ですが」「意見を申し上げると」。前置きを省くと混ざります。

伝聞は特に扱いを丁寧にします。誰が、いつ、どういう場で言ったかまで添えます。「担当者が電話で」と「決裁者が面談の場で」では重みがまったく違います。同じ内容でも、出どころが分かれば依頼者が自分で重みづけできます。

温度感を、事実で言語化する

いちばん混ざりやすいのが、買い手の温度感です。「前向き」「感触は良い」「手応えあり」——どれも中身がありません。

温度感は、観察できた行動で書き換えます。

やめる言い方置き換える言い方
前向きです追加資料の依頼が3件あり、社内の会議体に上げると伺っています
感触は良いです面談に決裁権のある役員が出席し、次回日程の希望が出ました
厳しそうです1週間連絡がなく、こちらからの確認にも回答が届いていません
もう少しで決まります意向表明の提出時期について、今月中との回答を書面で受けています

置き換えた側は、読んだ人が自分で判断できます。判断をこちらで済ませて結論だけ渡さない。これが、判断を当事者に委ねるという原則の、日々の現れ方です。

なお、行動で書くと「厳しそうです」が「連絡がない」と具体化され、伝えにくく感じることがあります。それでも書きます。都合の悪い事実ほど、早く、具体的に。

口頭と書面の使い分け

分けて伝えるには、形式の設計も要ります。

  • 重い内容は口頭が先、書面が後——条件の悪化や不利な情報を、文面だけで送らない。先に話し、その日のうちに要点を文面で残す
  • 書面では種類ごとに見出しを分ける——「確認できた事実」「伺っている内容」「当社の見方」の三つに分けて書くと、混ざりようがありません
  • 数字は出どころを書く——決算書の値か、口頭でのヒアリングか、こちらの試算か。試算なら前提を併記します
  • 未確定は未確定と書く——空欄にせず「未確認」と明記します。空欄は、読む人が都合よく埋めます
  • 期限のある事項は日付で書く——「近日中」「早めに」を使わない

この形式は、担当者が替わったときにも効きます。事実と見方が分かれていれば、引き継いだ人が見方だけを更新できます。混ざっている記録は、引き継いだ時点で全部を確認し直すことになります(「担当交代の引き継ぎ」参照)。

訓練の方法

この言葉づかいは、意識するだけでは身につきません。負荷のかかる場面で最初に崩れます。訓練の方法を挙げます。

  1. 面談記録を三段に分けて書く——事実/伺った内容/こちらの見方。毎回この形にすると、話すときも自然に分かれます
  2. 送信前に色を分けて読む——下書きを読み返し、事実の文と意見の文に印をつける。印のない文は、たいてい混ざっています
  3. 「前向き」を禁止語にする——使いたくなったら、代わりに書ける行動を探す
  4. 他人の報告を添削してみる——同僚の文面を四分類で読むと、自分の癖が見えます
  5. 口頭のときも前置きを言う——「事実としては」「推測ですが」。声に出す習慣が、書くときに移ります

当社では、面談の記録を残すことと、口頭で伝えた重い内容を当日中に文面にすることを基本にしています。記録は、依頼者を守ると同時に担当者を守ります。詳しくは「面談・電話の記録の残し方」をご覧ください。

まとめ|区別していたかどうかが問われる

要点を整理します。

  • 混ざった報告は、意見を事実として持ち帰らせる。期待が独り歩きし、下方修正の落差が大きくなる
  • 事実・伝聞・推測・意見の四つに分け、種類を口に出してから内容を言う
  • 伝聞は、誰が・いつ・どういう場で言ったかまで添える
  • 温度感は観察できた行動に置き換える。「前向き」をやめる
  • 重い内容は口頭が先、書面が後。書面では見出しで分け、未確定は未確定と書く
  • 記録を三段で書く習慣が、話し方にも移る

当社の選考については採用情報をご覧ください。

よくあるご質問

A.感触そのものを共有してはいけないわけではありませんが、必ず根拠となった行動を添えてください。追加資料の依頼があった、決裁権のある方が面談に出た、次回日程の希望が出た。行動で書けば、依頼者が自分で重みづけできます。
A.推測だと明示したうえで述べるほうが、後の信頼は保たれます。推測として伝えたことが外れても説明できますが、事実として伝えたことが違えば説明できません。前置きは自分を守る言葉でもあります。
A.伝えてください。「1週間連絡がなく、こちらの確認にも回答が届いていない」という事実は、依頼者の判断に必要な材料です。都合の悪い事実ほど早く、具体的に伝えるのが原則です。
A.混ざった記録のほうが不利になります。事実と見方が分かれていれば、どの時点で何を伝えたかが示せます。記録は依頼者を守ると同時に担当者を守るものだと考えてください。

Free Consultation

事実と見方を、分けてご報告します。

確認できたこと、伺っていること、当社の見方を分けてお伝えします。都合の悪い事実ほど先にお伝えします。
採用に関するご質問は採用情報を、ご相談はメール(info@platinumpartners.jp)でも承ります。

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Author & Supervisor

執筆・監修:株式会社プラチナパートナーズ 取締役副社長 神垣 宏康

東京都千代田区(日比谷)のM&A仲介・事業承継アドバイザリーファーム、株式会社プラチナパートナーズ取締役。成功報酬型のもと、中小企業の事業承継・会社売却を初回相談から成約まで一気通貫で支援しています。役員紹介・会社概要はこちら