事業承継の準備を進めると、「認定支援機関に相談してください」と言われる場面があります。正式名称は認定経営革新等支援機関です。何をする機関で、どの場面で必要になるのかを整理します。
どういう制度か
中小企業支援に関する専門知識や実務経験が一定レベル以上にある者を、国が認定する制度です。中小企業等経営強化法に基づいています。
認定を受けているのは、税理士・公認会計士・中小企業診断士・弁護士などの士業、金融機関、商工会・商工会議所などです。個人単位のものと法人単位のものがあります。
認定支援機関は中小企業庁のウェブサイトで検索できます。顧問税理士が認定を受けているかどうかも、そこで確認できます。実際、顧問税理士が既に認定支援機関であるケースは多くあります。
事業承継税制で関わる場面
もっとも接点が多いのがここです。事業承継税制(法人版)を使うには、特例承継計画を都道府県知事に提出する必要があります。
この計画には、認定支援機関による所見の記載が求められます。会社が自分で書くだけでは受理されません。
特例措置の計画提出期限は2027年9月30日、適用期限は2027年12月31日です(2026年9月時点)。使う可能性があるなら、期限に余裕を持って認定支援機関に相談してください。詳しくは事業承継税制をご覧ください。
補助金で関わる場面
事業承継・M&A補助金をはじめ、いくつかの補助金では認定支援機関の確認書が必要になります。
事業計画の妥当性について所見を書いてもらう、という形が一般的です。申請の直前に依頼しても間に合わないことがあるため、公募要領を見た段階で相談を始めてください。
なお、補助金の要件や対象は年度ごとに変わります。必ずその年度の公募要領で確認してください。過去の情報で判断すると、対象外だったという事態が起こります。
経営改善計画で関わる場面
借入の返済条件を見直したい、金融機関と話し合いたい、という場面でも認定支援機関が関わります。
経営改善計画策定支援事業(いわゆる405事業)や、より簡易な早期経営改善計画策定支援では、認定支援機関が計画の策定を支援し、費用の一部が補助されます。
承継やM&Aの前に財務を整理しておきたい場合、この枠組みが使えることがあります。債務が重い状態のまま譲渡を進めるより、先に整理したほうが選択肢が広がるケースは確かにあります。
M&A支援機関登録制度とは別の制度
混同されやすいので整理します。認定経営革新等支援機関とM&A支援機関登録制度は、別の制度です。
前者は中小企業支援全般の認定制度、後者は中小M&Aガイドラインの遵守を宣言したM&A支援機関を登録する制度です。補助金の要件でどちらが求められるかは、補助金ごとに異なります。
当社は中小M&Aガイドライン(第3版)の遵守を宣言し、M&A支援機関登録の手続を進めております。宣言の全文は中小M&Aガイドライン遵守宣言に掲載しています。
依頼する前に確認する3点
認定支援機関に相談する際、先に押さえておくと話が早い点を挙げます。
① 何の手続のために必要なのか。事業承継税制なのか、補助金なのか、経営改善計画なのか。目的によって依頼する内容も報酬も変わります。
② いつまでに何が要るのか。特例承継計画なら都道府県への提出期限、補助金なら公募の締切です。所見の作成には会社の資料の提出と面談が要るため、締切の直前では間に合いません。
③ 顧問税理士との役割分担。顧問税理士が認定支援機関でない場合、別の機関に依頼することになります。決算書や試算表の提供について、顧問税理士の協力が要ります。先に一声かけておくと、後の調整が楽になります。
誰に頼めばよいか
すでに顧問税理士がいる会社であれば、まず顧問税理士が認定支援機関かどうかを確認してください。認定を受けていれば、会社の実情を知っている分、話が早く進みます。
認定を受けていない場合、取引金融機関に相談する、商工会議所に聞く、中小企業庁の検索から探す、といった順で当たります。
報酬は機関ごとに異なります。計画の所見だけなのか、策定支援まで含むのかで大きく変わるため、依頼の範囲と費用を先に確認してください。
使わずに済む場面も多い
正直に申し上げると、第三者へのM&Aだけを考えるなら、認定支援機関が必須になる場面は限られます。
必要になるのは、事業承継税制を使うとき、対象の補助金を申請するとき、経営改善計画の支援を受けるときです。単純な株式譲渡であれば、直接の登場場面はありません。
「認定支援機関に頼まないと進められない」という説明があれば、何の手続のために必要なのかを確認してください。制度の名前だけが先行して、必要のない依頼につながることがあります。