株主名簿を見ると、持株数が「1,000株」のようにきりのよい数ではなく、細かい数になっていることがあります。さらに、1株に満たない持分が記録されている場合もあります。

原因は決まっています。株式の分割を行った、株式を併合した、相続で分けた、単元株制度を導入した。どれも会社の都合や法改正の経緯から生じるもので、株主が意図したものではありません。

M&Aでは、買い手が100%の取得を望むのが通常です。細かい持分が残っていると、そこで止まります。先に整理しておく論点です。

どこから生じるのか

生じ方を整理します。

株式の分割。1株を2株に分けるなどの処理をすると、持株数が割り切れない株主に端数が生じます。

株式の併合。複数の株式を1株にまとめる処理では、端数が出やすくなります。会社法には端数の処理の定めがあり、会社が買い取るなどの形で処理します。

相続。相続人が複数いて、株数を人数で割り切れない場合。遺産分割が済むまでは相続人の共有状態になります。共有のままでは権利の行使に制約があります。

単元株制度。一定の株数を1単元とする制度を導入すると、1単元に満たない株を持つ株主が生じます。この株主は議決権を持ちませんが、株式そのものは保有しています。

旧商法時代の経緯。古い会社では、過去の制度に基づく端株の記録が残っていることがあります。

いずれも、名簿を見ないと分かりません。決算書には出てきません。

なぜ手間になるのか

持分が小さくても、株主は株主です。手間になる理由を挙げます。

全部を買い集める必要がある。買い手が100%を求める場合、1株でも残っていると達成できません。

連絡が取れないことがある。細かい持分の株主は、会社との関わりが薄いことが多くあります。住所が古い、亡くなっていて相続人が分からない。探すところから始まります。

価格で揉めることがある。持分が小さいほど、金額も小さくなります。手続きの手間に対して金額が見合わないため、相手が応じる動機が弱くなります。

共有状態の株は、相続人全員の合意が必要。1人でも反対すれば動きません。

結果として、金額は小さいのに、時間がいちばんかかる部分になります。M&Aの日程が崩れる原因の1つです。

整理の方法

会社法には、持分を集約するためのいくつかの仕組みが用意されています。

個別に買い取る。最も単純です。会社が自己株式として買うか、経営者個人が買うか。相手の同意が必要で、財源の制約もあります。

株式の併合を使う。多数の株式を1株にまとめる処理を行うと、少数の持分が1株未満になります。1株未満になった持分は、会社法の定めに従って処理されます。株主総会の特別決議が必要で、反対する株主には買取請求の権利があります。

一定の割合以上を持つ株主による売渡請求。総議決権の大部分を持つ株主が、他の株主に売渡しを請求できる制度があります。要件が細かく定められています。

相続人等に対する売渡請求。定款に定めがある場合に使えます。

どの方法も、要件・手続き・反対株主の保護がそれぞれ定められています。使えるかどうかは株主構成によって変わるため、弁護士に確認してください。

時間の見積り

整理にかかる時間の目安を考えるには、何が不確かなのかを見ます。

連絡が取れて、売ってくれる株主。書面を交わして代金を払えば終わります。数週間。

連絡が取れるが、価格で合わない株主。交渉になります。数か月。

連絡が取れない株主。住民票の追跡、戸籍の確認。相続が発生していれば相続人の特定。半年以上かかることがあります。

会社法の手続きを使う場合。株主総会の招集、決議、反対株主の対応、登記。買取請求が出て価格が裁判所に持ち込まれると、さらに延びます。

したがって、譲渡を考え始めた時点で名簿を確かめるのが実務です。買い手が決まってから始めると、相手を待たせることになります。

逆に、整理が終わっている会社はそれ自体が評価されます。買い手から見れば、取引が止まる要因が1つ減るためです。

整理しないまま進める場合

どうしても集められない場合の進め方もあります。

買い手が受け入れる。少数株主が残る前提で取引する形。買い手の方針によります。残る持分が極小で、権利行使の実績が無い場合は受け入れられることがあります。

株式譲渡ではなく事業譲渡にする。会社ごとではなく事業を譲る形にすれば、株主の同意は株主総会の決議で足ります(一定の要件の場合)。ただし許認可や契約の移転の手間が増えます。

会社分割を使う。事業を新しい会社に移し、その会社の株式を譲る形。

どの形でも、手間と税務の論点が増えます。株式を直接譲る形がいちばん単純なので、集められるならそれが望ましくなります。

整理すると、やることは1つです。まず名簿を見る。細かい持分が何件あり、連絡が取れるのが何件かを数えます。数えれば、どれだけの作業が残っているかが分かります。会社法・税務の判断は個別の事情で変わるため、弁護士・税理士に確認してください。

名簿を見るときは、株数の合計が発行済株式総数と一致しているかも確かめてください。合わない会社が実際にあります。過去の増資や併合が名簿に反映されていない、譲渡の記録が抜けている、といった理由です。合計が合わない名簿は、そのままでは誰が株主かを確定できません。

よくあるご質問

A.株式の分割や併合、相続で株数を割り切れない場合、単元株制度の導入、旧商法時代の経緯などから生じます。会社の都合や法改正の経緯によるもので、株主が意図したものではありません。
A.なります。買い手が100%の取得を望む場合、1株でも残っていると達成できません。細かい持分の株主は会社との関わりが薄く、連絡が取れないことが多いため、金額は小さいのに時間がかかります。
A.連絡が取れて売ってくれるなら数週間、価格で揉めれば数か月、連絡が取れず相続人の特定が必要なら半年以上かかることがあります。会社法の手続きを使う場合は、買取請求の対応で延びることもあります。
A.買い手が少数株主の残存を受け入れる、事業譲渡や会社分割の形にする、といった道があります。ただし手間と税務の論点が増えるため、集められるなら株式を直接譲る形が単純です。

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Author & Supervisor

執筆・監修:株式会社プラチナパートナーズ 取締役副社長 神垣 宏康

東京都千代田区(日比谷)のM&A仲介・事業承継アドバイザリーファーム、株式会社プラチナパートナーズ取締役副社長。中小企業の事業承継・会社売却を初回相談から成約まで一気通貫で支援しています。役員紹介・会社概要はこちら