買収した会社の資金繰りが厳しい。親会社から貸すのが早いが、税務上の論点があります。条件を誤ると、寄附金として損金不算入になり得ます。整理します。
まず、貸すのか出資するのか
資金を入れる方法は大きく2つです。
貸付。返済義務があり、利息が生じます。親会社の貸借対照表には債権として残ります。
増資(出資)。返済義務はありません。子会社の純資産が増えます。
短期の資金繰りなら貸付、構造的に資本が不足しているなら増資、というのが基本の考え方です。
ただし、増資は登記が必要で、資本金の額によって税負担や制度の適用が変わります。
どちらを選ぶかで、その後の税務が変わります。税理士と設計してください。
無利息で貸すとどうなるか
最も多い質問です。グループ内だから無利息でよいのではないか。
法人税法上、無利息または著しく低い利率での貸付は、本来受け取るべき利息相当額を寄附したものとして扱われる可能性があります。
寄附金とされると、損金算入に限度があるため、親会社側で課税所得が増えます。
一方、子会社の再建のために合理的な理由がある場合など、寄附金として扱われないとされる場面もあります。
この判断は個別の事情によります。「グループだから大丈夫」と考えず、必ず税理士にご確認ください。
利率をどう決めるか
利息を付ける場合の実務です。
考え方としては、その資金を第三者から調達した場合の利率や、合理的と認められる水準を基礎にします。
実務では、親会社の借入金利や、金融機関から同種の条件で借りた場合の利率を参考にすることがあります。
重要なのは、設定の根拠を書面で残すことです。「なぜこの利率にしたのか」を説明できる状態にする。
利率の決め方も、税理士に確認してください。根拠が無いまま設定すると、後から問題になります。
契約書を作る
実務上、必ず行うべきことです。金銭消費貸借契約書を作成してください。
記載すべき項目。
貸付金額、貸付日、返済期日、返済方法。
利率と利息の支払方法。
期限の利益喪失事由。
そして、印紙。契約書の記載金額に応じた印紙税がかかります。
「グループ内だから口頭で」は避けてください。税務調査で、実態が貸付なのか出資なのか、あるいは寄附なのかを説明する材料になります。
返済されない場合
実際に生じる問題です。貸したまま返ってこない。
返済期日を過ぎても放置していると、実質的に返済を求めていないと見られる可能性があります。
対応としては、返済条件を変更する契約書を作る(期日の延長、分割への変更)ことです。その都度、書面にしてください。
また、利息を受け取っていない状態も同様です。未収のまま放置せず、計上し、回収するか、条件を見直す。
「貸したことにして、実際には返さない」という状態が、最も問題になります。
債権放棄をする場合
子会社の再建のために、貸付金を放棄することがあります。
この場合、親会社側では寄附金となるのが原則ですが、子会社の再建のために合理的な理由がある場合など、寄附金に該当しないとされる場面があります。
要件としては、再建計画があること、相当な理由があること、支援額が合理的であることなどが求められるとされています。
また、子会社側では債務免除益が生じ、法人税の課税対象になり得ます。繰越欠損金があれば相殺できる場合もあります。
この論点は複雑です。実行前に必ず税理士・会計士にご相談ください。
グループ通算制度との関係
該当する場合の論点です。
グループ通算制度を適用している場合、グループ内の法人間の取引について、特有の取り扱いがあります。
また、買収した会社を通算グループに加入させるかどうかも判断事項です。加入・離脱には要件と手続きがあり、資産の時価評価が必要になる場合もあります。
制度の適用の有無によって、貸付や債権放棄の扱いも変わり得ます。
グループの規模が大きい場合は、この点も含めて税理士に確認してください。
増資を選ぶ場合
貸付ではなく出資を選ぶ場合の論点です。
登記が必要です。司法書士への報酬と登録免許税がかかります。
資本金の額が増えると、税制上の中小企業向けの特例の適用や、外形標準課税の対象などに影響し得ます。
また、資本金等の額は、将来の払戻しや清算の際の計算にも関わります。
一方、返済義務が無いため、子会社の財務は改善します。債務超過の解消にも使えます。
「返す必要がない」ことの意味を、財務と税務の両面で確認してください。
実態と書面を揃える
最後に、この論点全体の原則です。
税務で問われるのは、実態です。契約書があっても、返済も利息の受け取りも無ければ、貸付とは見られません。
逆に、実態が貸付でも、契約書が無ければ説明できません。
したがって、両方を揃えてください。
契約書を作る。利息を計上し、受け取る。返済を受ける。条件を変えるなら書面にする。
手間に見えますが、数年後の税務調査で説明する材料になります。
本稿は2026年9月時点の一般的な整理です。個別の判定は必ず税理士にご確認ください。当社は税務顧問業務を行いません。