打診を始めて数か月、関心を示す先が出てこない。焦る前に、どこに原因があるのかを切り分けてください。見直す順序を整理します。

まず、何社に当たったかを聞く

最初に確認すべきことです。実際に何社へ打診したのか。

「反応がない」と言われても、5社なのか50社なのかで、意味がまったく違います。

仲介会社に、打診先の一覧と、それぞれの反応を求めてください。

打診済み / 検討中 / 見送り / 未打診。そして、見送りの理由。

この一覧を出せない仲介会社は、動いていない可能性があります。

中小企業庁「中小M&Aガイドライン(第3版)」(令和6年8月)も、支援機関に対して進捗の報告を求めています。

見送りの理由を集める

数が出ているなら、理由に共通点があるはずです。

典型的な理由を挙げます。

「規模が合わない」。大きすぎる、小さすぎる。

「業種が合わない」。打診先の選定の問題です。

「エリアが遠い」。

「価格が高い」。条件の問題。

「業績が不安」。会社の内容の問題。

「タイミングが合わない」。相手の事情。

どれが多いかで、次に直すべき場所が決まります。

ノンネームシートを見直す

反応が無い原因として、最初の1枚が弱いことがあります。

確認する点を挙げます。

業種の書き方。抽象的すぎて、何をしている会社か分からない。

強みが書かれていない。売上と利益だけでは、買う理由が伝わりません。

譲渡の理由。後継者不在と書かれているか。これは安心材料です。

数字の見せ方。直近期が悪い場合、3期の推移を出す。

特定されない範囲で、どこまで具体的に書けるか。ここが腕の見せ所です。抽象的すぎると、誰も関心を持ちません。

打診先の選定を見直す

次に、誰に当たっているかです。

同業だけに当たっていないか。異業種からの参入、周辺業種、投資会社。視野を広げると候補が増えます。

エリアを広げられないか。「地元の会社に」という希望が、候補を狭めていることがあります。

規模の幅は適切か。自社より小さい会社が買うこともあります。

ネームクリアで外した先が多すぎないか。同業を全部外すと、最も関心を持つ層が消えます。

「この条件なら打診してよい」という線を、もう一度考えてください。

条件を見直す

価格が理由で見送られているなら、ここが本丸です。

ただし、いきなり価格を下げないでください。先に確認すべきことがあります。

希望価格の根拠は何か。算定に基づくのか、希望なのか。

手取りで、いくら必要なのか。税と費用を引いた後の金額。

価格以外の条件が厳しすぎないか。引き継ぎ期間が短い、社名を必ず残す、従業員の処遇を細かく指定する。これらも候補を減らします。

条件を緩めることで、候補が増えることがあります。価格を下げる前に、こちらを検討してください。

会社の内容を見直す

「業績が不安」という理由が多い場合です。

直近期が悪いなら、その理由を説明できているか。一過性なら、そう示す。

資料が不足していないか。月次の推移、受注残、取引先の構成。判断材料が足りないと、見送られます。

整理すべき点が残っていないか。株主の分散、簿外の債務、労務の未整備。

この場合、一度打診を止めて、整えてから再開するという判断もあります。

整わないまま打診を続けると、候補先を消費します。一度断られた先には、再打診しにくくなります。

仲介会社の進め方を確認する

率直に書きます。仲介会社側に原因がある場合があります。

確認すべき点を挙げます。

本当に打診しているか。一覧を求める。

どういう方法で打診しているか。電話、メール、プラットフォーム。

担当者は何件の案件を抱えているか。

他の仲介会社やプラットフォームと連携しているか。自社のネットワークだけで探していないか。

説明が曖昧なら、担当の変更か、会社の変更を検討してください。専任契約の期間とテール条項を確認したうえで。

一度止めるという判断

すべてを見直しても動かない場合、一度止めるという選択があります。

止める理由は3つです。

① 情報が広がり続ける。打診を続ける限り、知る人が増えます。

② 候補先を消費する。一度断られた先には、再打診しにくい。

③ 会社を整える時間ができる。指摘された点を直し、業績を作る。

止める場合、いつ再開するかを決めてください。「1年後に、決算が出てから」。

決めずに止めると、そのまま何年も経ちます。そして、年齢と体力は待ってくれません。

時間には限りがある

最後に、正直な整理です。

反応が無い状態が続くと、選択肢が減っていきます。

経営者の年齢が上がる。業績が落ちる。キーマンが辞める。設備が古くなる。

「良い条件が出るまで待つ」ことが、結果として条件を悪くすることがあります。

したがって、いつまでに判断するかを決めてください。「◯年◯月までに相手が見つからなければ、条件を見直す」。

そして、見つからなかった場合の選択肢も考えておく。廃業、事業の一部譲渡、従業員への承継。

すべての可能性を並べたうえで、判断してください。

※ 本稿は一般的な考え方をご紹介するものであり、個別の法務・税務アドバイスではありません。実際の取り扱いは会社の状況や契約の定めによって異なります。専門家にご確認ください。

よくあるご質問

A.何社に打診したかです。仲介会社に、打診先の一覧とそれぞれの反応(打診済み/検討中/見送り/見送りの理由)を求めてください。この一覧を出せない仲介会社は、動いていない可能性があります。
A.「規模が合わない」「業種が合わない」「エリアが遠い」なら打診先の選定、「価格が高い」なら条件、「業績が不安」なら会社の内容の問題です。どの理由が多いかで、次に直すべき場所が決まります。
A.業種の書き方が抽象的すぎないか、強みが書かれているか(売上と利益だけでは買う理由が伝わりません)、譲渡の理由が書かれているか、直近期が悪い場合に3期の推移を出しているか、です。抽象的すぎると誰も関心を持ちません。
A.いきなり下げないでください。先に、希望価格の根拠は何か、手取りでいくら必要か、価格以外の条件が厳しすぎないか(引き継ぎ期間、社名、従業員の処遇の指定)を確認してください。条件を緩めることで候補が増えることがあります。
A.あります。打診を続ける限り情報が広がり、一度断られた先には再打診しにくくなり、候補先を消費するためです。ただし、止める場合は「1年後に決算が出てから」と再開の時期を決めてください。決めずに止めると何年も経ちます。

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Author & Supervisor

執筆・監修:株式会社プラチナパートナーズ 取締役副社長 神垣 宏康

東京都千代田区(日比谷)のM&A仲介・事業承継アドバイザリーファーム、株式会社プラチナパートナーズ取締役。成功報酬型のもと、中小企業の事業承継・会社売却を初回相談から成約まで一気通貫で支援しています。役員紹介・会社概要はこちら