以前に打診して断られた相手に、また声をかけてよいのか。状況が変われば、答えが変わることがあります。判断の基準を整理します。

断られた理由で判断が分かれる

まず、なぜ断られたのかを確認してください。理由によって、再打診の意味が変わります。

① 相手の事情。資金がない、他の案件を進めている、社内の体制が整っていない。時間が経てば変わります。

② 条件が合わない。価格、規模、エリア。こちらの条件を変えれば、可能性があります。

③ 会社の内容。業績、業種、簿外のリスク。改善すれば、可能性があります。

④ 方針として買収をしない。これは変わりにくい。

①〜③は再打診の余地があります。④は基本的にありません。

どのくらい間を置くか

目安を示します。

相手の事情で断られた場合。半年から1年。相手の決算をまたぐと、状況が変わっていることがあります。

条件が理由の場合。条件を変えられるなら、すぐでも構いません。「価格を見直しました」という形で。

会社の内容が理由の場合。改善に要した期間。1〜2年。実績が出てから。

間を置かずに繰り返すのは避けてください。「しつこい」と受け取られ、次の機会も失います。

そして、断られた記録を残してください。いつ、誰に、どういう理由で断られたか。

何が変わったかを示す

再打診で最も重要な点です。前回と同じ情報を送らないでください。

「以前もお断りしました」で終わります。

示すべきは、何が変わったかです。

業績が回復した。数字で示す。

条件を見直した。価格、引き継ぎ期間、従業員の処遇。

指摘された点を改善した。株式を集約した、労務を整備した。

会社の状況が変わった。新しい取引先、新規の事業。

「状況が変わりましたので、改めてご検討いただけませんか」という形にしてください。

相手の状況を確認してから

こちらの変化だけでなく、相手の変化も確認してください。

経営者が代わった。方針が変わっている可能性があります。

業績が良くなった。投資余力が生まれています。

他社を買収した。買収に積極的になっている、あるいは当面は手一杯。

同業の統合が進んでいる。業界の動きが、判断を変えることがあります。

これらは、公開情報である程度分かります。決算公告、報道、ウェブサイト、業界紙。

仲介会社に調べてもらってください。

誰が打診するか

実務的な論点です。前回と同じ仲介会社が打診するのか。

同じ会社なら、前回の経緯を踏まえて話せます。「以前もご案内しましたが、状況が変わりまして」。

仲介会社が変わっている場合、相手は「また別の会社から同じ案件が来た」と感じます。

この場合、前回打診があったことを伝えたうえで進めるほうが誠実です。隠しても、相手は覚えています。

また、複数の仲介会社から同じ相手に打診が行くのは、最も避けるべき事態です。打診先の記録を、必ず引き継いでください。

テール条項に注意する

仲介会社を変えた場合の重要な論点です。

前の仲介会社が紹介した相手と成約した場合、報酬が発生する可能性があります。テール条項です。

中小企業庁「中小M&Aガイドライン(第3版)」(令和6年8月)は、テール期間を最長でも2年〜3年以内を目安とし、対象をその仲介会社が実際に紹介した相手先に限定することを求めています。

したがって、前の契約書を確認してください。期間と、対象の範囲。

そして、前の仲介会社から打診先の一覧を受け取っておくこと。これがないと、どの相手が対象なのか分かりません。

断り方が次を決める

視点を変えます。今回断られたときの対応が、次の再打診の可否を決めます。

相手が断ってきたとき、丁寧に受け止めてください。

「ご検討いただき、ありがとうございました。今後、状況が変わりましたら、また改めてご相談させていただければ幸いです。」

この一言があるかどうかで、次の連絡のしやすさが変わります。

逆に、理由をしつこく問い詰める、断りを受け入れないという対応をすると、次はありません。

断られることは、交渉の一部です。関係を残して終わってください。

記録を残す

実務として必須です。打診の記録を、一覧で管理してください。

列は、相手先 / 打診日 / 開示した情報の範囲 / 反応 / 断られた理由 / 再打診の可否と時期。

これがあると、次のことができます。

再打診の判断ができる。

二重打診を防げる。

仲介会社を変えるときに引き継げる。

テール条項の対象範囲が分かる。

この一覧は、仲介会社に作らせてください。そして、写しを自分でも保管してください。

新しい候補も並行して探す

最後に、バランスの話です。

再打診に期待しすぎないでください。一度断った相手が戻る確率は、決して高くありません。

並行して、新しい候補を探すことが基本です。

視野を広げる方法は、業種の隣接を見るエリアを広げる投資会社を含める他のプラットフォームを使う

再打診は、あくまで選択肢の一つです。

そして、候補が尽きたと感じたら、条件そのものを見直す時期かもしれません。打診の反応が無いときも併せてご覧ください。

※ 本稿は一般的な考え方をご紹介するものであり、個別の法務・税務アドバイスではありません。実際の取り扱いは会社の状況や契約の定めによって異なります。専門家にご確認ください。

よくあるご質問

A.断られた理由によります。相手の事情(資金・他案件・体制)なら時間が経てば変わり、条件が理由ならこちらが変えれば可能性があり、会社の内容が理由なら改善すれば可能性があります。方針として買収をしない場合は、基本的に変わりません。
A.相手の事情で断られたなら半年から1年(相手の決算をまたぐと状況が変わることがあります)、条件が理由なら条件を変えられるならすぐでも構いません、会社の内容が理由なら改善に要した1〜2年です。間を置かずに繰り返すのは避けてください。
A.前回と同じ情報を送らないでください。業績が回復した、条件を見直した、指摘された点を改善した、会社の状況が変わった、といった変化を示し、「状況が変わりましたので、改めてご検討いただけませんか」という形にしてください。
A.前の仲介会社のテール条項を確認してください。中小企業庁「中小M&Aガイドライン(第3版)」(令和6年8月)はテール期間を最長でも2年〜3年以内を目安とし、対象を実際に紹介した相手先に限定することを求めています。打診先の一覧を受け取っておいてください。
A.丁寧に受け止めてください。「今後、状況が変わりましたら、また改めてご相談させていただければ幸いです」という一言があるかどうかで、次の連絡のしやすさが変わります。理由をしつこく問い詰めると、次はありません。

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Author & Supervisor

執筆・監修:株式会社プラチナパートナーズ 取締役副社長 神垣 宏康

東京都千代田区(日比谷)のM&A仲介・事業承継アドバイザリーファーム、株式会社プラチナパートナーズ取締役。成功報酬型のもと、中小企業の事業承継・会社売却を初回相談から成約まで一気通貫で支援しています。役員紹介・会社概要はこちら