造園・緑化工事業は、一度きりの工事で終わらず、植えたあとの維持管理が続くという点で他の建設業種と性格が異なります。公園の管理、街路樹の剪定、法人施設の植栽管理。この継続する仕事をどれだけ持っているかが、承継の際の評価を大きく分けます。
造園・緑化工事業を取り巻く承継の環境
公共発注の比重が高く、自治体の公園・道路の維持管理が仕事の柱になっている会社が多い業種です。発注量そのものは景気に大きく振れにくい一方、入札の競争は地域ごとに固定化しやすく、長く受注してきた会社がそのまま担い続ける構図になりがちです。
そこに効いているのが職人の高齢化です。剪定も石組みも、身につくまでに年数がかかります。経営者と職人が同時に引退の時期を迎えると、地域の維持管理そのものが止まりかねません。買い手にとっては、技術を持った人ごと引き継げることに価値があります。
建設業許可と経営事項審査
一定規模以上の造園工事を請け負うには建設業許可(造園工事業)が必要で、公共工事を直接受注するには経営事項審査(経審)と発注者ごとの入札参加資格が要ります。評点は完成工事高・自己資本・技術職員の資格と人数などから算出されます。
会社ごと引き継ぐ株式譲渡であれば、これらは同じ法人に帰属したまま維持されます。事業譲渡や会社分割で事業だけを移す場合、許可は事前の認可または新規取得の検討が必要になり、経審の評点は承継人が改めて審査を受けることになりますが、事業承継の認可を受けた場合には被承継人の実績を反映できる取扱いがあります。入札参加資格は発注者ごとに手続きが必要です。手続きの負担が変わるため、この業種では株式譲渡が選ばれやすくなります。取り扱いは発注機関ごとに異なるため、所管機関または行政書士等にご確認ください。
指定管理者・長期委託という資産
公園の指定管理者や、複数年にわたる維持管理の委託を受けている場合、それは単年度の工事売上とは別の価値を持ちます。継続する収入であり、地域での信頼の裏づけでもあるためです。
ただし、指定管理者の指定や委託契約には、期間の定めや、承継にあたって発注者の承認を要する取り扱いが置かれていることがあります。契約の期間と、支配権が変わったときの扱いを、検討の初期に確認しておくことをおすすめします。
職人と技能をどう引き継ぐか
買い手が丁寧に見るのは、造園施工管理技士・造園技能士といった有資格者の人数と年齢構成です。経審の技術職員点数に直結するだけでなく、任せられる現場の幅そのものを決めます。
ここで見られるのは人数よりも、誰がどの現場を仕切れるかです。有資格者が揃っていても全員が経営者と同世代であれば、買い手は数年先の受注力として見ます。若手が資格取得を進めている、あるいは技能を継いでいる事実があれば、それだけで評価が変わります。
圃場・樹木在庫・重機の見られ方
自社で圃場(ほじょう)を持ち、樹木を育てている会社は、その資産の扱いを整理しておく必要があります。樹木は育つほど価値が上がる一方で、帳簿上の評価と実際の市場価値が離れやすい資産です。
また、圃場や資材置き場の土地が経営者個人の名義になっているケースが少なくありません。会社が使い続けられる形にするのか、賃貸借で整理するのかを、検討の早い段階で決めておくと交渉がすっきりします。高所作業車やクレーンなどの重機は、台数よりも更新履歴と残存年数が見られます。
受注構成が価格の説明になる
公共の維持管理、公共の新設工事、民間の植栽工事、個人邸の手入れ。それぞれ利益率も回収サイトも違います。発注者別・工事種別に、直近3期程度の売上と利益を並べて示せると、買い手は事業の実態をつかみやすくなります。
とくに継続受注の比率は、価格の根拠として説明しやすい部分です。ここが整理されていないと、買い手は保守的に見積もらざるを得なくなります。
価値を下げてしまう要因
- 承継を意識して受注を絞り、経審の評点が下がっている
- 有資格者が退職し、補充できていない:許可要件と評点の双方に影響します
- 圃場や車庫が個人名義のまま:承継後に使えるかが不透明になります
- 現場ごとの原価が把握できていない:採算の実態が示せません
- 個人邸の口頭契約が多い:引き継げる関係かどうかを説明しにくくなります
売却を考え始めたら、先に整えておきたいこと
実際に動く一年ほど前から準備できると、選択肢が広がります。
- 若手の資格取得を進める:許可要件・経審・譲渡後の関与期間のすべてに効きます
- 継続受注の契約書と期間を一覧にする
- 圃場・車両・個人名義資産の扱いを決めておく
- 発注者別の採算を可視化する
全体の進め方は「M&Aの流れ」をご覧ください。
まとめ
造園・緑化工事業の承継は、経審の評点・入札参加資格・継続受注・職人という四つをどう保つかが軸になります。会社ごと引き継ぐ形であれば、その多くは維持できます。
地域の緑を手入れし続ける担い手は、簡単には置き換えられません。事業が回っているのであれば、引き継ぎたいと考える相手がいる可能性があります。
本稿の内容は執筆時点(2026年9月)の一般的な整理です。許認可・税務・法務の取り扱いは個別の事情により異なりますので、具体的な検討にあたっては所管官庁および税理士・弁護士等の専門家にご確認ください。