道路・舗装工事業は、発注の多くが官公庁からの公共工事で占められる業種です。だからこそ、会社の価値は売上の大きさよりも「その受注を、これからも取り続けられるか」で測られます。経営事項審査(経審)の評点、入札参加資格、そして現場を回せる技術者。承継の検討では、この三つが揃っているかが出発点になります。

道路・舗装工事業を取り巻く承継の環境

インフラの老朽化を背景に、新設よりも維持管理・更新の工事が増えています。舗装の打ち替え、橋梁の補修、道路の維持管理といった仕事は、景気に左右されにくく、地域ごとに担い手が必要です。

一方で、経営者の高齢化は他の建設業種と同様に進んでいます。現場を長く支えてきた技術者も同じように年齢を重ねており、会社と技術者が同時に引退の時期を迎えるという構造になりやすいのが、この業種の特徴です。買い手側から見れば、地域の維持管理を担う体制ごと引き継げることに意味があります。

建設業許可と経審|数字が資格になっている業種

舗装工事を請け負うには、建設業許可(舗装工事業)が必要です。加えて公共工事を直接受注するには、経営事項審査(経審)を受け、発注者ごとの入札参加資格を得ておく必要があります。

経審の評点は、完成工事高、自己資本、技術職員の数と資格、そして工事の実績といった要素から算出されます。つまりこの業種では、過去の実績と人の資格が、そのまま受注できる工事の規模を決めているわけです。承継にあたっては、譲渡後もこの評点を維持できるかが最大の論点になります。

なお、経審や入札参加資格の取り扱いは発注者ごとに定めが異なります。具体的な影響は、所管の発注機関または行政書士等にご確認ください。

スキームによって、評点と資格の扱いが変わる

会社ごと引き継ぐ株式譲渡であれば、法人格が変わらないため、許可・経審の評点・入札参加資格・工事実績の連続性を保ちやすくなります。この業種で株式譲渡が選ばれやすいのは、この一点が大きいためです。

これに対し、事業譲渡や会社分割で事業だけを移す場合、許可については事前に認可を受けて承継する制度の利用または新規取得の検討が原則として必要になり、経審の評点は承継人が改めて審査を受けることになりますが、事業承継の認可を受けた場合には被承継人の実績を反映できる取扱いがあります。入札参加資格は発注者ごとに手続きが必要です。

技術者をどう引き継ぐか

買い手が最も丁寧に見るのが、技術者の顔ぶれです。舗装施工管理技士や土木施工管理技士といった資格を持つ職員が何人いるか、そのうち何人が現場を任せられるか、年齢構成はどうか。経審の技術職員点数にも直結する部分です。

ここで問題になりやすいのが、有資格者の多くが経営者と同世代という状態です。名簿の人数が足りていても、数年で受注できる工事の規模が下がることが見えていれば、買い手はその前提で価格を考えます。逆に、若手が資格を取りつつある会社は、その事実だけで評価が変わります。

合材プラント・重機・ヤードの見られ方

アスファルト合材プラントを持つ会社は、その設備が価値にも負担にもなります。稼働率が確保できていれば独自の強みですが、更新の時期が近づいていれば、買い手は将来の投資額を織り込みます。

重機やダンプについても同様で、台数よりも更新の履歴と残存年数が見られます。資材置き場や車庫として使っている土地の権利関係(所有か賃借か、賃借なら契約期間と原状回復の定め)も、早い段階で整理しておきたい項目です。

発注者の構成が、価格の説明になる

公共工事の比率が高い会社は、収益が安定している一方で、発注量そのものが行政の予算に左右されます。民間工事を併せ持つ会社は、その分散が評価されます。どちらが良いという話ではなく、自社の受注がどこから来ているかを説明できることが重要です。

発注者別・工事種別の売上と利益を、直近3期程度並べて示せると、買い手は事業の実態をつかみやすくなります。ここが整理されていない会社は、価格の交渉で不利になりがちです。

価値を下げてしまう要因

意図せず評価を下げてしまう典型が、いくつかあります。

  • 売上を落として経審の評点が下がっている:承継を意識して受注を絞ると、評点にそのまま反映されます
  • 有資格者が退職し、補充できていない:許可要件と評点の双方に影響します
  • 工事台帳や原価管理が現場ごとに散らばっている:採算の実態が示せず、買い手が保守的に見ます
  • 経営者個人の名義になっている資産がある:ヤードの土地や重機が個人所有のまま、といった状態です

売却を考え始めたら、先に整えておきたいこと

承継の検討は、実際に動く一年ほど前から準備できると選択肢が広がります。

  • 技術者の資格取得を進める:許可要件と経審の双方に効き、譲渡後に経営者が関与する期間も短くできます
  • 発注者別・工事別の採算を可視化する:買い手に説明できる形にしておきます
  • 個人名義の資産を会社に寄せるか、扱いを決めておく
  • 主要な契約と許可の更新時期を一覧にする

手続き全体の流れは「M&Aの流れ」をご覧ください。

まとめ

道路・舗装工事業の承継は、経審の評点・入札参加資格・技術者という三つの連続性をどう保つかに尽きます。会社ごと引き継ぐ形であれば、その多くは維持できます。

地域のインフラを維持する担い手は、簡単には置き換えられません。事業が回っているのであれば、引き継ぎたいと考える相手が存在する可能性があります。

本稿の内容は執筆時点(2026年9月)の一般的な整理です。許認可・税務・法務の取り扱いは個別の事情により異なりますので、具体的な検討にあたっては所管官庁および税理士・弁護士等の専門家にご確認ください。

よくあるご質問

A.株式譲渡では法人格が変わらないため、許可・経審の評点・入札参加資格・工事実績は原則として同じ法人に帰属したまま維持されます。ただし役員変更等の届出や、許可要件を引き続き満たしていることの確認は必要です。一方、事業譲渡や会社分割で事業のみを移す場合、経審の評点は承継人が改めて審査を受けることになりますが、事業承継の認可を受けた場合には被承継人の実績を反映できる取扱いがあります。入札参加資格は発注者ごとに手続きが必要です。取り扱いは発注機関ごとに定めが異なるため、所管の発注機関または行政書士等にご確認ください。
A.可能性は十分にあります。買い手が見ているのは現在の人数だけではなく、地域での受注実績、発注者との関係、保有設備、そして若手が育つ余地です。むしろ、技術者の年齢構成を正直に開示し、承継後にどう補うかを一緒に考えられる相手のほうが、引き継いだ後もうまくいきます。年齢構成と、誰がどの現場を持てるかを整理したうえでご相談ください。
A.更新投資が必要であること自体は、買い手にとって想定の範囲内です。不利になるのは、更新時期や必要額が把握できておらず、買い手が保守的に見積もらざるを得ない場合です。設備ごとの取得時期、これまでの更新履歴、今後必要になる投資の見込みを整理して示せれば、価格の前提として建設的に扱われます。

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Author & Supervisor

執筆・監修:株式会社プラチナパートナーズ 取締役副社長 神垣 宏康

東京都千代田区(日比谷)のM&A仲介・事業承継アドバイザリーファーム、株式会社プラチナパートナーズ取締役。成功報酬型のもと、中小企業の事業承継・会社売却を初回相談から成約まで一気通貫で支援しています。役員紹介・会社概要はこちら