「着手金を100万円いただきます」と言われて、迷われる方がいらっしゃいます。着手金はそれ自体が悪いものではありません。ただし、あることで何が変わり、ないことで何が変わるのかは知っておく価値があります。中立的に整理します。

着手金は何の対価か

着手金は、仲介契約を結んだ時点で支払う費用です。名目としては、企業価値の評価、企業概要書の作成、相手先候補のリストアップといった初期の作業に対する対価とされることが多くあります。

これらの作業には実際に人手と時間がかかります。買い手が見つかるかどうかに関わらず発生する費用なので、それを先に受け取るという考え方には一定の合理性があります。

金額は会社によって幅がありますので、提示された金額と返金の有無を必ず確認してください。返金されないのが通例です。

着手金があることで、何が変わるか

依頼者にとっての意味は二つあります。

一つは、不成立のときに費用が残るということ。相手が見つからなくても、条件が合わなくても、着手金は戻りません。これは依頼者が負うリスクです。

もう一つは、仲介会社の動機づけが変わるということ。着手金を受け取っていれば、成約しなくても一定の収入があります。これは「無理に成約させようとする圧力が下がる」という良い面と、「成約への熱量が下がり得る」という面の両方を持ちます。どちらに出るかは会社と担当者次第で、制度だけでは決まりません。

着手金がないことで、何が変わるか

着手金がない場合、依頼者は不成立なら費用が発生しないという安心を得られます。相談の入口が軽くなるのは確かです。

一方で、仲介会社は成約しなければ収入がありません。これは成約への圧力が働きやすい構造でもあります。条件が十分でなくても「まとめよう」とする方向に傾きやすい、という指摘は実際にあります。

ですから、着手金の有無だけで良し悪しは決まりません。大切なのは、その会社が「まとめないほうがよい」と言えるかどうかです。当社は、M&Aが最善とは限らないと判断すればそう申し上げますし、無理に案件化はしません。

月額報酬(リテイナーフィー)との違い

着手金と混同されやすいのが月額報酬です。こちらは契約期間中、毎月発生する費用で、案件が長引くほど総額が増えます。

着手金が一度きりなのに対し、月額報酬は時間に比例します。半年で終わる案件と2年かかる案件では、負担がまったく違います。

月額報酬のある契約を検討される場合は、契約期間と自動更新の有無、中途解約の条件を必ず確認してください。「いつまで払い続けるのか」が見えない契約は避けるべきです。

当社の体系と、その不利な点

当社は相談料・着手金・月額報酬をいただいておりません。ご負担いただくのは、基本合意の締結時の中間金(成功報酬額の10%)と、成約時の成功報酬の2回です。

中間金は成約時の成功報酬から全額を差し引きますので総額は増えませんが、基本合意後に不成立となった場合、返金はいたしません。これは当社にとって不利な点として、先に申し上げています。

「成約時の1回だけ」という会社と比べれば、基本合意後に破談になったときの負担が残ります。体系の違いを理解したうえでお選びください。

総額で比べると、順位が入れ替わる

着手金の有無だけを見て選ぶと、総額で損をすることがあります。実際に起きる比較を示します。

A社は着手金100万円、成功報酬は株式価値基準のレーマンで最低1,000万円。B社は着手金なし、成功報酬は移動総資産基準で最低2,000万円。着手金だけ見ればB社が有利ですが、負債の多い会社では移動総資産基準の基準額が跳ね上がり、総額ではA社が下回ることがあります。

つまり、比べるべきは着手金・中間金・成功報酬・実費を足した総額です。そして、その総額を左右するのは料率ではなく、報酬基準額の定義と最低報酬です。詳しくは手数料の内訳を聞くで扱っています。

どちらを選ぶかの判断軸

着手金の有無は、判断軸の一つにすぎません。実務の観点から、より重要だと考えている点を挙げます。

総額がいくらになるか。着手金がなくても成功報酬の料率が高ければ、総額では逆転します。最低額の設定も効きます。不成立のときにいくら残るか。着手金、中間金、実費。どこまでが戻らないのか。

そして、書面で説明してくれるか。中小M&Aガイドライン(第3版)は、手数料の体系と金額について契約締結に先立ち書面を交付して説明することを求めています。この求めに素直に応じるかどうかは、その後の仕事の姿勢とよく相関します。

複数社から話を聞いてよい

着手金のある会社とない会社、両方から説明を受けて比べることは、まったく問題ありません。むしろそうしていただくほうが、納得して進められます。

ただし、専任条項のある契約を結んだ後は、他社と並行して進められなくなります。比べるのは契約を結ぶ前です。契約書に専任やテール条項が入っている場合は、その範囲と期間を確認してください。詳しくはテール条項とはをご覧ください。

当社にご相談いただいた方が、他社と比べたうえで他社を選ばれることもあります。それで構いません。比較したうえで納得して選んだ相手と進むほうが、最後までうまくいきます。

※ 本稿は一般的な考え方をご紹介するものであり、個別の法務・税務アドバイスではありません。実際の取り扱いは、会社の状況や契約の定めによって異なります。専門家にご確認ください。

よくあるご質問

A.構造としては逆で、成約しなければ収入がないため、成約への圧力はむしろ働きやすくなります。問題は熱量ではなく、条件が十分でないときに「まとめないほうがよい」と言えるかどうかです。着手金の有無ではなく、その会社の姿勢を見てください。
A.一般に返金されません。不成立の場合も戻らないのが通例です。金額と返金の有無は契約前に必ず書面でご確認ください。
A.着手金は契約時に一度、月額報酬は契約期間中に毎月発生します。月額報酬は案件が長引くほど総額が増えるため、契約期間・自動更新の有無・中途解約の条件を必ず確認してください。
A.契約を結ぶ前であれば問題ありません。むしろ比較したうえで納得して選ばれるほうが、最後までうまくいきます。ただし専任条項のある契約を結んだ後は並行して進められなくなるため、比べるのは契約前です。
A.着手金・月額報酬・中間金・成功報酬・実費を足した金額で比べてください。そして総額を左右するのは料率よりも、報酬基準額の定義(株式価値か移動総資産か)と最低報酬の設定です。この2つを先に確認すると、比較が早く済みます。

Free Consultation

他社と比べたうえで、お決めください。

当社の手数料は全額を公開しています。不利な点も含めてご説明します。
相談料・着手金・月額報酬はいただきません。基本合意時の中間金と成功報酬については料金体系をご覧ください。

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Author & Supervisor

執筆・監修:株式会社プラチナパートナーズ 取締役副社長 神垣 宏康

東京都千代田区(日比谷)のM&A仲介・事業承継アドバイザリーファーム、株式会社プラチナパートナーズ取締役。成功報酬型のもと、中小企業の事業承継・会社売却を初回相談から成約まで一気通貫で支援しています。役員紹介・会社概要はこちら