M&Aに要する費用の一部を対象とする国の支援制度として、事業承継・M&A補助金があります。「使えば負担が軽くなるのでは」とご質問をいただくことがありますが、期待と実際には差があります。本稿では、資金計画に組み込む前に知っておくべき点を整理します。対象費用の範囲・補助率・上限額・申請要件は年度ごとに変わり、公募の時期も限られています。必ず最新の公募要領をご確認ください。

どういう制度か

事業承継・M&A補助金は、事業承継やM&Aを契機とした取り組みを支援する国の補助制度です。複数の類型が設けられており、支援の対象となる取り組みや費用の範囲は類型によって異なります。

M&Aに関連する類型では、専門家への委託に要する費用などが対象とされることがあります。ただし、どの費用が対象になるかは公募要領で定められており、年度によって変わります

また、申請には要件があります。対象となる事業者の要件、取り組みの内容に関する要件、支援機関に関する要件などです。M&A支援機関に係る登録制度に登録された機関に支払う費用であることが求められる場合があります。

制度の運用は年度ごとに見直されますので、本稿の内容をそのまま前提とせず、必ず最新の公募要領をご確認ください。不明な点は、事務局や認定支援機関、公的な相談窓口にお問い合わせいただくのが確実です。

資金計画に組み込む前に知っておくこと

補助金を前提に資金計画を立てる前に、次の性質を理解しておく必要があります。

性質意味すること
後払いが原則先に費用を支払い、実績報告を経てから交付を受ける
採択されるとは限らない申請しても採択されない場合がある
公募期間が限られるいつでも申請できるわけではない
対象費用が限定される支払った費用のすべてが対象になるわけではない
補助率と上限がある対象費用の全額が補助されるわけではない
事務手続が発生する申請、実績報告、証憑の保存などの手間がかかる

とくに重要なのが後払いという点です。補助金があるから手元資金が要らない、ということにはなりません。一度は全額を自己資金で支払う必要があります。

次に重要なのが採択の不確実性です。申請すれば必ず受けられるものではありませんので、補助金を受けられる前提で資金計画を組むと、受けられなかったときに計画が崩れます。補助金は「受けられたら助かる」という位置づけで考えるのが安全です。

対象になりやすい費用と、ならない費用

どの費用が対象になるかは公募要領によりますが、一般的な考え方として次のような整理ができます。実際の対象範囲は必ず最新の公募要領でご確認ください。

  • 専門家への委託費——M&Aの支援に関する委託費用が対象とされることがあります
  • デューデリジェンスに要する費用——調査の委託費用が対象とされることがあります
  • 税金——対象外とされるのが通例です
  • 譲渡対価そのもの——対象外です
  • 補助対象期間外の支出——交付決定の前後で対象となる期間が定められています

最後の項目は実務上つまずきやすい点です。交付決定の前に支払った費用は対象外とされることがあります。つまり、先に契約して支払ってしまうと、後から申請しても対象にならない可能性があります。

したがって、補助金の活用を考えるのであれば、M&Aの検討を始めた早い段階で、制度の内容と申請のタイミングを確認しておく必要があります。契約の順序と支払の時期が、対象になるかどうかを左右します。

申請にかかる手間

補助金には、金額以外のコストがあります。申請と報告の事務です。

申請には、事業計画や見積書、各種の証明書類が必要になります。採択された後も、実績報告として、支払の証憑や成果を示す資料の提出が求められます。これらの作成には相応の時間がかかります。

M&Aの実務と並行してこれを行うことになりますので、経営者の時間という観点では、決して小さな負担ではありません。補助される金額と、その手間を比べて判断する視点が必要です。

また、申請を専門家に支援してもらう場合、その費用が発生することもあります。補助される金額から、申請支援の費用を差し引いて、なお手元にいくら残るか——この計算をしてから判断してください。

他の支援制度との関係

費用の軽減という観点では、補助金以外にも検討できるものがあります。それぞれ性質が異なりますので、整理しておきます。

  • 公的な相談窓口——事業承継・引継ぎ支援センターなど。相談そのものに費用がかからない
  • 事業承継税制——非上場株式の贈与・相続に係る納税猶予の制度。特例承継計画の提出期限は2027年9月30日、適用期限は2027年12月31日です。ただしM&Aとの関係では留意点があります
  • 経営者保証に関する取り組み——経営者保証に依存しない融資は2024年度上期で52%(金融庁)とされています

二つ目については注意が必要です。事業承継税制を利用した後にM&Aを行うと、納税猶予が打ち切られる場合があります。この論点は「事業承継税制を使ったあとにM&Aしたら」で整理しています。適用の可否と影響は、必ず税理士にご確認ください。

公的な相談窓口の活用は「公的機関に相談した場合の費用」で整理しています。相談段階では費用がかからないため、選択肢を広げるという意味では合理的です。

費用全体の中で、どう位置づけるか

最後に、補助金を費用計画のどこに置くかを整理します。

M&Aで売り手側に発生する費用は、仲介手数料、専門家費用、実費、そして税金です。このうち補助金の対象になり得るのは、専門家費用の一部という位置づけです。金額として最も大きい税金は対象外ですし、譲渡対価そのものも関係しません。

したがって、補助金で総額が大きく変わることは期待しないほうが現実的です。受けられれば助かる、という程度に見ておき、資金計画は補助金なしで成り立つ形で組んでください。

費用を実質的に抑える方法としては、準備の前倒しと税務設計の早期着手のほうが、効果は確実です。この点は「M&Aの費用を抑える方法は本当にあるのか」で優先順位をつけて整理しています。

当社は、相談料・着手金・月額報酬を0円としています。成功報酬は移動総資産レーマン方式(基準額=株式価値+負債総額)で最低2,000万円(税別)、中間金は成功報酬額の10%で、成約時の成功報酬から全額を差し引きます(基本合意後に不成立となった場合、返金はいたしません)。ただし、基本合意後に不成立となった場合、返金はいたしません。ご契約の前に総額の目安を書面でご提示しています。

なお、当社は現在、中小企業庁「M&A支援機関登録制度」への登録手続中です(最新の状況は中小M&Aガイドライン遵守宣言のページに掲載しています)。補助金のご活用をお考えの場合は、その時点での支援機関の登録要件とあわせてご確認ください。申請手続きの代行は行っておりません。

よくあるご質問

A.いいえ。補助金は後払いが原則で、先に費用を支払い、実績報告を経てから交付を受ける流れです。一度は全額を自己資金でご負担いただく必要があります。また申請しても採択されるとは限りませんので、補助金なしでも成り立つ形で資金計画を組んでおくことをお勧めします。
A.対象となる費用の範囲は公募要領で定められ、年度によって変わります。専門家への委託費やデューデリジェンスに要する費用が対象とされることがありますが、税金や譲渡対価そのものは対象外です。また交付決定の前に支払った費用は対象外とされることがありますので、必ず最新の公募要領をご確認ください。
A.申請には事業計画や見積書、各種証明書類が必要で、採択後も実績報告として証憑や成果資料の提出が求められます。M&Aの実務と並行して行う負担は小さくありません。申請支援を専門家に依頼する場合はその費用も発生しますので、補助される金額から差し引いて、なお手元にいくら残るかを計算してからご判断ください。

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手数料を含む総額の目安をご契約前に書面でお示しします。ご相談の段階で費用は発生しません。
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Author & Supervisor

執筆・監修:株式会社プラチナパートナーズ 取締役副社長 神垣 宏康

東京都千代田区(日比谷)のM&A仲介・事業承継アドバイザリーファーム、株式会社プラチナパートナーズ取締役。成功報酬型のもと、中小企業の事業承継・会社売却を初回相談から成約まで一気通貫で支援しています。役員紹介・会社概要はこちら