オンラインで売り手と買い手をつなぐマッチングプラットフォームは、掲載や成約時の手数料が仲介会社より低く設定されていることが一般的です。「同じM&Aなのに、なぜこれだけ違うのか」——当然の疑問です。答えは単純で、料金に含まれている役務の範囲が違うからです。本稿では、安さの中身を工程ごとに分解します。両者の違い全般は「M&Aマッチングサイトと仲介会社の違い」もご覧ください。
料金が低いのは、担う範囲が違うから
M&Aの工程は、相手先を見つけるところから、条件を詰め、調査を経て、契約に至るまで多岐にわたります。プラットフォームが担うのは、主に「出会い」の部分です。
売り手が情報を掲載し、買い手が検索して接触する。この場を提供することがサービスの中心で、その後の交渉、資料の作成、条件の調整、契約の取りまとめは、当事者または別に依頼した専門家が行います。
一方、仲介会社は探索から成約までの全工程に関与することを前提としています。企業概要書を作り、候補先を選定して打診し、面談を設定し、条件をすり合わせ、デューデリジェンスの調整を行い、契約の締結まで伴走します。
したがって、料金の差は質の差ではなく、範囲の差として理解するのが正確です。どちらを選ぶかは、その範囲を自分で担えるかどうかによります。
工程ごとに、誰が担うのかを分解する
具体的に見ていきます。同じ工程を、どちらが担うかを並べます。
| 工程 | プラットフォーム利用時 | 仲介利用時 |
|---|---|---|
| 案件情報の作成 | 原則として売り手が自分で作成 | 仲介がノンネームシート・企業概要書を作成 |
| 相手先の探索 | 掲載して、買い手からの接触を待つ | 候補先を選定して個別に打診 |
| 秘密保持の管理 | プラットフォームの仕組みに依存 | 打診先を限定し、NDAを個別に締結 |
| 面談の設定・同席 | 原則として当事者同士 | 仲介が設定し同席、論点を整理 |
| 条件交渉 | 当事者同士。有料の支援を使う場合もある | 仲介が中継し、条件を詰める |
| DDの調整 | 当事者と専門家 | 仲介が日程と範囲を調整 |
| 契約書 | 弁護士に別途依頼 | 弁護士に別途依頼(仲介が調整) |
注目していただきたいのは、契約書だけはどちらも別途費用が発生する点です。仲介を使っても弁護士費用はなくなりません。逆に言えば、それ以外の工程の担い手が違うということです。
とくに案件情報の作成と条件交渉は、負担の差が大きい工程です。買い手が判断できる水準の資料を自分で作るのは、経験がないと難しい作業です。交渉も、相手と直接やり取りすることになります。
見えにくい費用|時間と機会損失
手数料として請求されない費用があります。自分で担う工程に要する時間です。
資料の作成、問い合わせへの対応、面談の調整、条件の検討——これらはすべて経営者ご自身の時間を使います。M&Aを進めながら、本業の経営も続けなければなりません。この時間は請求書には現れませんが、確実に費用です。
また、成約までの期間が延びることも実質的な損失です。判断が保留される期間が長引けば、設備投資や採用といった経営判断も止まりがちになります。従業員に説明できない期間が延びれば、その負担もあります。
さらに、秘密保持の管理は費用ではなくリスクとして現れます。掲載された情報から会社が特定されれば、取引先や従業員に伝わる可能性があります。情報管理の考え方は「M&Aの情報漏洩はなぜ起きる」で整理しています。
成約条件の差は、手数料の差より大きいことがある
費用を比べるときに最も見落とされやすいのが、成約条件そのものの差です。
譲渡価格が数百万円から数千万円変わることは、実務では珍しくありません。雇用の維持、社名の継続、経営者の残留期間、表明保証の範囲、補償の上限——これらの条件はすべて交渉の結果として決まります。
交渉を自分で担う場合、相場観と論点の勘所がないまま条件を決めることになります。買い手が慣れている相手であれば、その差は結果に表れます。手数料を数百万円抑えて、条件で数千万円を失うということもあり得ます。
もちろん逆もあります。譲渡規模が小さい案件では、仲介の最低手数料が対価に対して重くなりすぎることがあります。当社の最低手数料は2,000万円(税別)です。この金額が対価に対して合理的かどうかは、規模によって答えが変わります。この点は「小規模案件の費用をどう考えるか」で率直に整理しています。
どちらが向いているか
率直に整理します。次のような場合、プラットフォームの利用が合理的です。
- 譲渡規模が小さい——仲介の最低手数料が対価に対して重くなる場合
- 資料を自分で整えられる——決算書も事業の説明も、自分で用意できる
- 交渉を自分で担える——価格や条件を相手と直接詰められる
- 秘密保持の制約が緩い——広く知られても支障が小さい
- 時間に余裕がある——自分で動く時間を確保できる
逆に、次のような場合は仲介やFAの関与に意味があります。
- 従業員や取引先に知られたくない——打診先を限定して進めたい
- 相手先を能動的に探したい——待つのではなく、こちらから当たりたい
- 条件交渉に自信がない——価格以外の条件も含めて詰めたい
- 本業に時間を割く必要がある——実務を任せたい
- 一定以上の規模——買い手側も専門家を立てて臨んでくる
どちらも選択肢であり、優劣ではありません。自社の状況に照らして、担えない工程がどこかを見極める——これが判断の起点です。
費用を比べる前に、総額で考える
最後に、比較の手順をまとめます。
- ①手数料の見込みを出す——プラットフォームの成約手数料と、仲介の成功報酬をそれぞれ試算する
- ②別途発生する費用を足す——弁護士費用、税理士費用、登記費用は、どちらでも発生する
- ③自分で担う工程を数える——その時間を、どう確保するか
- ④税金を引く——株式譲渡益への課税は20.315%。手取りで比べる
- ⑤条件の幅を考える——価格や条件が変わり得る幅を、頭に入れておく
この手順を踏むと、手数料だけを比べても判断できないことが分かります。とくに④と⑤は、手数料の差を上回ることがあります。税額の試算は個別の事情によりますので、税理士にご確認ください。
当社は、ご相談の初期段階で手数料の見込みをお伝えします。その金額が対価に対して重いと感じられる規模であれば、他の方法もご案内します。ご相談の段階で費用が発生することはありませんので、比較の材料としてお使いいただければと思います。
よくあるご質問
Free Consultation
当社が向かない場合も、そう申し上げます。
手数料の見込みをお伝えし、対価に対して重いと思われる場合は他の方法もご案内します。ご相談は無料です。
メール(info@platinumpartners.jp)でも承ります。