「もう続けられないかもしれない」と考えたとき、廃業と倒産は同じもののように語られがちですが、実際にはまったく別のものです。手続きも、費用も、その後に残るものも違います。本稿では両者の違いを整理したうえで、判断の前に検討していただきたい第三の選択肢についてご説明します。廃業とM&Aの比較は「廃業とM&Aはどちらを選ぶべきか」もあわせてご覧ください。

廃業|自分の意思で、支払いを済ませてたたむ

廃業は、会社が債務を支払える状態のまま、自らの判断で事業をやめることをいいます。法律上の正式な言い方でいえば、株式会社であれば解散し、清算手続きを経て法人格を消滅させます。

大まかな流れは次のとおりです。

  • 株主総会で解散を決議し、清算人を選任する
  • 解散・清算人選任の登記を行う
  • 債権者に対する公告と、個別の催告を行う
  • 売掛金を回収し、在庫・設備を処分し、借入金や買掛金を支払う
  • 残った財産を株主に分配する
  • 清算結了の登記を行い、税務署等に届け出る

重要なのは、すべての債務を支払えることが前提だという点です。支払えない状態であれば、この手続きは取れません。

倒産|支払えなくなった状態と、その後の手続き

一方、倒産という言葉は法律用語ではなく、支払いができなくなった状態を指す一般的な呼び方です。具体的な手続きとしては、破産、特別清算、民事再生、会社更生などがあり、事業をやめるものと、続けながら立て直すものに分かれます。

手続き事業の扱い主な前提
破産やめる支払不能または債務超過
特別清算やめる解散後の清算中に債務超過の疑いがある場合など
民事再生続ける再建の見込みがあること
会社更生続ける主に規模の大きい株式会社

いずれも裁判所が関わる法的手続きで、債権者の利益を守るためのルールに沿って進みます。廃業のように自分の判断だけで進められるものではありません。具体的な選択は、必ず弁護士にご相談ください。

何が違うのか|残るものと、残らないもの

両者の差は、手続きの名前よりもその後に何が残るかに表れます。

廃業(通常清算)破産
債務すべて支払う支払えない部分が残る
手元に残る財産残余財産を株主に分配できる原則として残らない
個人保証会社が完済すれば追及されない保証人に請求が及ぶことがある
従業員計画的に退職の段取りが組める急な解雇になりやすい
取引先納品・支払いを整理して終えられる債権者として手続きに関わることになる
時期自分で選べる選べない

いちばん大きな違いは「時期を自分で選べるかどうか」です。廃業は体力があるうちに決められますが、支払えなくなってからでは選択肢が残りません。

廃業にも費用がかかる

意外に知られていないのが、廃業そのものにお金がかかることです。主なものを挙げます。

  • 解散・清算人選任・清算結了の登記費用と、専門家への報酬
  • 官報公告の掲載費用
  • 設備・在庫の処分費用(業種によっては撤去や原状回復の費用が大きい)
  • 賃借物件の原状回復と、解約に伴う違約金
  • 従業員の退職金・解雇予告手当
  • 清算中の期間に発生する税務申告の費用

製造業や店舗を持つ事業では、機械の撤去や内装の原状回復だけで相当の金額になることがあります。「たためば手元に残る」と考えていたのに、実際には持ち出しになるという例は珍しくありません。

費用の見込みは業種と規模で大きく変わりますので、決める前に、税理士や司法書士に概算を出してもらってください。

第三の選択肢|支払える状態のうちなら、譲る道がある

ここまでを踏まえると、判断の順序が見えてきます。

支払える状態であれば、廃業のほかに「譲る」という選択肢があります。事業を続けたい人に引き継いでもらえれば、従業員の雇用は続き、取引先との関係も残り、処分費用もかかりません。譲渡対価を受け取れる可能性もあります。

「うちは赤字だから無理だろう」と思われるかもしれませんが、赤字でも譲渡が成立することはあります。買い手が見ているのは過去の損益だけではなく、許認可、人材、顧客基盤、立地といった、自前で用意するには時間がかかるものだからです。詳しくは「赤字企業でも売却できる?」をご覧ください。

債務超過の場合でも、負債の大きさによっては成立の余地があります(「債務超過の会社は売却できるか」)。ただし、これらはいずれも「支払いが続いているうち」に限られます。止まってからでは、取れる手が急速に減ります。

まとめ|決める前に、確かめておくこと

要点を整理します。

  • 廃業は債務を完済できる状態で自ら行うもの。倒産は支払えなくなった状態を指す
  • 最大の違いは、時期を自分で選べるかどうか
  • 廃業にも費用がかかる。処分・原状回復・退職金を見落とさない
  • 支払える状態なら、譲るという選択肢が残っている
  • 赤字・債務超過でも、直ちに不可能とは限らない

当社は相談料・着手金・月額報酬0円でご相談を承っています。ご相談の結果、譲渡ではなく他の方法をおすすめすることもあります。まずは現状を伺わせてください。廃業との比較は「廃業とM&Aはどちらを選ぶべきか」で金額面も含めて整理しています。

よくあるご質問

A.通常の清算手続きは債務を完済できることが前提ですので、債務超過の場合は特別清算や破産といった法的手続きの検討になります。どの手続きが適切かは、負債の内容や債権者との関係によって異なりますので、必ず弁護士にご相談ください。なお、負債があっても譲渡が成立する場合はありますので、手続きに入る前に一度ご相談いただく余地はあります。
A.清算手続きが進む前であれば、検討の余地は残ります。ただし、従業員が退職を始めていたり、取引先との契約が終了していたりすると、引き継げるものが減り、譲渡の条件は厳しくなります。迷っている段階でご相談いただくほうが、選べる道は広くなります。
A.廃業の場合は、退職までの期間と再就職の支援を考えると、一定の余裕をもって伝える必要があります。一方、譲渡を検討している段階では、情報が広がると案件そのものが不安定になるため、時期の設計が必要です。どちらの道を選ぶかで伝え方が変わりますので、方針を決めてからにしてください。

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譲る道が残っているかどうかは、状況によって変わります。ご相談は無料で、結果として他の方法をおすすめすることもあります。基本合意時の中間金と成功報酬については料金体系をご覧ください。
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Author & Supervisor

執筆・監修:株式会社プラチナパートナーズ 取締役副社長 神垣 宏康

東京都千代田区(日比谷)のM&A仲介・事業承継アドバイザリーファーム、株式会社プラチナパートナーズ取締役。成功報酬型のもと、中小企業の事業承継・会社売却を初回相談から成約まで一気通貫で支援しています。役員紹介・会社概要はこちら