「売ると決めたわけではないのに、相談していいものでしょうか」。この問いをいただくたびに、その段階でこそ相談していただきたいとお答えしています。方針が固まっていない状態は、選択肢を比べる余地が最も大きい状態でもあるからです。

とはいえ、「相談したら断りにくくなるのではないか」「契約を迫られるのではないか」というご懸念はもっともです。本稿では、情報収集としての相談で何が得られるのか、費用はどうなるのか、そして身を守るために知っておくべきことを、率直に整理します。

相談で、実際に何が得られるのか

「情報収集のため」と言っても、具体的に何が分かるのかが見えなければ、時間を割く気にもなりません。初回の面談で通常お伝えできるのは、次のような内容です。

  • 自社がどう評価されうるか——決算書をご覧いただければ、企業価値の考え方と、おおよその水準感をお伝えできます。
  • 買い手候補の層——どういう業種・規模の会社が関心を持つ可能性があるか。
  • 手取りの見通し——譲渡代金から税金や費用を差し引いた後に、どの程度が残るか。
  • 進め方と期間——検討開始から成約まで、何をどの順で行い、どの程度の期間がかかるか。
  • 従業員や社名について、契約でどこまで定められるか
  • M&A以外の選択肢との比較——親族内承継、社内承継、廃業との違い。
  • 自社の課題——買い手から見たときに、評価を下げる要因は何か。

最後の項目が、実は最も有用

譲渡するかどうかにかかわらず、外部から自社がどう見えるかを知ることには価値があります。属人性、取引先の集中、決算内容の分かりにくさ、株主構成の不備——これらを知って改善すれば、どの道を選んでも会社は強くなります。

無料の範囲と、費用が生じる場面

費用の話を曖昧にしたまま相談を受けることは、避けるべきです。当社の場合を例に、整理しておきます。

当社の費用の考え方

  • 相談料・着手金・月額報酬——いずれも0円です。初回のご相談から、候補の探索、交渉の過程まで、定額の費用はいただきません。
  • 中間金——基本合意の時点で、成功報酬額の10%をお支払いいただきます。この中間金は、成約時の成功報酬から全額を差し引きます。ただし、基本合意後に不成立となった場合、返金はいたしません
  • 成功報酬——移動総資産レーマン方式により算定します。基準額は「株式価値(譲渡対価)+負債総額」で、これに段階的な料率を適用します。最低報酬額は2,000万円(税別)です。

つまり、基本合意に至るまでは費用が発生しません。情報収集の段階、候補を探す段階、面談を重ねる段階で見送ることになっても、費用のご負担はありません。

他社に相談する場合に確認すべきこと

費用の体系は会社によって異なります。相談の初期に、次を確認しておいてください。

  • 着手金・月額報酬の有無と金額
  • 中間金の有無、金額、成功報酬から差し引かれるか、不成立の場合に返金されるか
  • 成功報酬の算定基準——何を基準額とするか(株式価値のみか、負債を含むか)、料率、最低報酬額
  • デューデリジェンス等の実費の負担者
  • 契約の期間と、解約の条件

費用の比較の仕方は「M&Aの相談は本当に無料なのか」で詳しく扱っています。

相談を有意義にする準備

手ぶらでも相談は成立しますが、次のものがあると得られる情報の量が変わります。いずれも新たに作る必要はありません。

  • 直近3期分の決算書——貸借対照表、損益計算書、勘定科目内訳明細書。
  • 株主名簿——なければ、法人税申告書の別表二でも代替できます。
  • 借入の一覧——金融機関、残高、保証の有無。
  • 従業員の名簿——年齢構成が分かる形。

聞きたいことを、書き出しておく

面談の場では、相手の説明を聞くだけで終わりがちです。事前に質問を書き出しておくと、確実に聞きたいことが聞けます。質問の例は「仲介会社に必ず聞くべき質問」にまとめています。

最初に前提を伝える

面談の冒頭で、「現時点では情報収集の段階であり、進めるかどうかは決めていない」と明確に伝えてください。これは相手にとっても有用な情報です。その前提を受け入れない、あるいは無視して話を進める相手であれば、それ以上関わる必要はありません。

渡す情報の範囲

初回から詳細な資料を渡す必要はありません。社名を伏せた形で、業種・規模・おおまかな財務状況だけで相談することも可能です。具体的な情報をやり取りする前に、秘密保持契約(NDA)の締結を申し出てください。嫌がる相手には情報を渡さない、という判断で構いません。

契約を求められたら、どうするか

相談の場で、その日のうちに契約を求められることがあります。対処の仕方を知っておいてください。

その場で署名しない

どのような契約であれ、持ち帰って読むことを原則にしてください。「今日決めていただければ」という誘いには、応じる必要がありません。合理的な相手であれば、持ち帰りを当然のこととして受け入れます。

確認すべき条項

  • 専任条項——他社への相談が制限されるか、その範囲と期間。
  • 契約期間と自動更新——更新を止める場合の手続きと期限。
  • 解約の条件——中途解約が可能か、その場合の費用。
  • 直接交渉の禁止(テール条項)——契約終了後も、紹介された相手との取引に報酬が発生する期間。
  • 報酬の発生条件——どの時点で、何を基準に発生するか。

専任契約と他社への相談の関係は「複数の仲介会社に相談してよいか」で整理しています。

断り方

「まだ社内・家族と相談していないので」「他社の話も聞いたうえで判断したい」——これで十分です。理由を詳しく説明する義務はありません。しつこく求められる、あるいは断ったことで態度が変わる相手であれば、その時点で判断がつきます。

相談先を見極める材料

初回の面談は、こちらが評価される場であると同時に、相手を評価する場でもあります。次の点に注目してください。

良い兆候

  • M&A以外の選択肢についても説明する——親族内承継、社内承継、廃業を含めて。
  • 自社の弱みや、想定される難しさを率直に伝える。
  • 「決めなくてよい」という前提を尊重する。
  • 費用の体系を、聞く前に説明する。
  • 買い手を紹介する際の立場(仲介か、売り手側のみの助言か)を明示する。

慎重に見たほうがよい兆候

  • 初回から高額な評価額を提示し、期待を持たせる。
  • 「今なら買い手がいる」と急がせる。
  • 費用の説明が曖昧、または後回しにされる。
  • その日のうちの契約を強く求める。
  • 質問への回答が抽象的で、具体例が出てこない。

複数の相手に聞く

一社の説明だけで判断せず、同じ質問を複数の相手にして、答えの違いを見ることをおすすめします。違いがどこから来ているのかを確認すると、それぞれの立場と考え方が見えてきます。選び方の観点は「M&A仲介会社の選び方」で整理しています。

相談したあと、どうなるか

「相談すると、そのまま話が進んでしまうのでは」というご懸念に、実務の側からお答えします。

相談だけで終えることは、普通にある

情報を得たうえで「今は動かない」と判断される方は、実際に多くいらっしゃいます。知らないまま動かないことと、知ったうえで動かないことは、まったく別です。後者であれば、次に検討する際の出発点が格段に高くなります。

その後の連絡について

相談後の連絡の頻度や方法について、希望を伝えて構いません。「こちらから連絡するまで待ってほしい」という要望も、当然に尊重されるべきものです。

渡した資料の扱い

相談を終えた時点で、提供した資料の返還または破棄を依頼してください。秘密保持契約を結んでいれば、その定めに従った手続きとなります。

再度相談することも可能

一度相談して見送った後、数年後に改めて検討されるケースもあります。そのとき、前回の内容を踏まえて話ができれば、検討は速く進みます。一度きりの機会と考える必要はありません

まとめ|知ることと、決めることは別

売ると決めていない段階での相談は、まったく不自然ではありません。むしろ、選択肢が最も広い時期です。前提を明確に伝え、費用の体系を確認し、その場で契約しない——この三つを守れば、情報収集の場として安心してお使いいただけます。当社では相談料・着手金・月額報酬をいただいておらず、ご契約やご決断を急がせることもいたしません。

よくあるご質問

A.当社の場合、相談料・着手金・月額報酬はいずれも0円で、基本合意に至るまで費用は発生しません。したがって、情報収集の段階や候補を探す段階で見送られた場合、ご負担はありません。なお、基本合意の時点で成功報酬額の10%を中間金としてお支払いいただき、成約時の成功報酬から全額を差し引きますが、基本合意後に不成立となった場合、返金はいたしません。他社にご相談される場合は、着手金・月額報酬・中間金の有無と条件を初期に必ずご確認ください。
A.必須ではありません。社名を伏せた形で、業種・規模・おおまかな財務状況だけでご相談いただくこともできます。ただし、企業価値の水準感や手取りの見通しといった具体的な情報をお求めの場合は、決算書を拝見したほうが精度が上がります。詳細な情報をやり取りする前に、秘密保持契約の締結をお申し出ください。締結を嫌がる相手には、情報を渡さないという判断で構いません。
A.どのような契約であれ、その場で署名せず持ち帰って読むことを原則にしてください。合理的な相手であれば、持ち帰りを当然のこととして受け入れます。断る理由は「社内・家族と相談していないので」で十分で、詳しく説明する義務はありません。なお、しつこく求められる、断ったことで態度が変わるといった反応は、それ自体が相手を見極める材料になります。

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決めていない段階こそ、お使いください。

相談料・着手金・月額報酬は0円。基本合意時の中間金と成功報酬については料金体系をご覧ください。ご契約やご決断を急がせることはありません。
メール(info@platinumpartners.jp)でも承ります。

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Author & Supervisor

執筆・監修:株式会社プラチナパートナーズ 取締役副社長 神垣 宏康

東京都千代田区(日比谷)のM&A仲介・事業承継アドバイザリーファーム、株式会社プラチナパートナーズ取締役。成功報酬型のもと、中小企業の事業承継・会社売却を初回相談から成約まで一気通貫で支援しています。役員紹介・会社概要はこちら