デューデリジェンスでは、買い手やその専門家が現場を訪れ、資料と現物を照らし合わせることがあります。このとき、固定資産台帳に載っているはずの機械が見当たらない、逆に使っている設備が台帳にない、在庫の数量が帳簿と合わない——こうしたずれが見つかると、確認のやり取りが増え、数字全体の信頼性にも影響します。本稿では、売却を考える段階で行っておきたい帳簿と現物の突き合わせについて、進め方を整理します。

なぜ現物確認が行われるのか

買い手が価格を判断する土台は、貸借対照表に載っている資産と負債です。時価純資産を基礎に考える方法では、資産が実際に存在し、記載どおりの価値があるかが直接に価格へ影響します(時価純資産とは)。

また、収益を基礎に考える方法をとる場合でも、貸借対照表の正確さは前提になります。実在しない資産が計上されていれば、過去の損益も正しくない可能性があるためです。

そして、現物確認は管理体制を測る場面でもあります。現場が整理され、どこに何があるかが分かる会社は、それだけで調査がスムーズに進みます。逆に、探すのに時間がかかる、担当者によって説明が違う、という状況は、他の資料への見方にも影響します。

固定資産台帳と現物を突き合わせる

まず取り組みやすいのが、固定資産台帳の点検です。次の手順で進めます。

  • 台帳を出力し、設置場所ごとに並べ替える
  • 現場を回り、台帳の資産が実際にあるかを確認する
  • あるが使っていないもの(遊休)に印をつける
  • 使っているが台帳にないものを書き出す
  • すでに廃棄・売却したのに台帳に残っているものを特定する

結果として、除却の処理が漏れていた資産が見つかることがあります。処理の要否と時期については、税務上の取り扱いも関わりますので、税理士など専門家にご確認ください。

遊休資産が見つかった場合は、譲渡前に処分するか、そのまま引き継ぐかの検討材料になります。事業に使っていない資産の扱いは「事業に使っていない資産の扱い」で整理しています。

在庫は数量と評価の両面を見る

在庫については、数量が合っているかに加えて、その評価が実態に合っているかが論点になります。長期間動いていない在庫、仕様が古くなった製品、季節外れの商品などが簿価のまま残っていると、買い手は評価減を前提に検討します。

売却前にできることは、在庫の年齢を把握することです。品目ごとに最終の入出庫がいつかを整理し、一定期間動いていないものを洗い出します。そのうえで、販売できる見込みがあるのか、処分すべきなのかを判断します。

判断がついたものについては、会計上の処理を検討します。評価減や廃棄の処理は税務上の要件がありますので、税理士など専門家にご相談ください。処理をせずに抱えたまま譲渡の交渉に入ると、買い手側から評価減を求められ、価格の議論になります。在庫の考え方は「在庫は企業価値にどう影響するか」でも扱っています。

見落とされやすい確認項目

台帳と在庫以外にも、現物や実態との突き合わせが必要な項目があります。

  • 売掛金:回収できていない債権が残っていないか。相手先別・年齢別の残高を確認する
  • 貸付金・仮払金:役員や関係会社への貸付が精算されているか
  • 保険:保険証券と帳簿の保険積立金が対応しているか、契約者と受取人が誰か
  • 預金:使っていない口座、名義が古いままの口座がないか
  • 他人名義の資産:社長名義で購入したが会社で使っているもの、その逆

とくに最後の項目は中小企業でよくあり、譲渡にあたって整理が必要になります。車両、不動産、ゴルフ会員権、リース契約など、名義と実態が食い違っているものを洗い出しておきます。

売掛金の滞留については「売掛金の回収状況」もご参照ください。

現場そのものが評価の対象になる

突き合わせの作業は、現場を見直す機会にもなります。買い手が工場や店舗を訪れたとき、整理・整頓の状態、清掃の行き届き方、掲示物の更新状況といった目に見えるものが、管理の水準として受け止められます。

これは印象の話に聞こえるかもしれませんが、実務上は無視できません。数字の説明を聞く前に現場を見た買い手は、その印象を前提に資料を読みます。日常の積み重ねですので、短期間で取り繕うより、普段からの運用が表れる部分です。

あわせて、不要なものを処分しておくと、資産の実態も現場も同時に整理できます。使っていない設備、古い書類、不要な在庫。これらを片づけること自体が、磨き上げの一部です。

突き合わせは、早く・一度やっておく|まとめ

帳簿と現物の突き合わせは、規模にもよりますが、数日から数週間でひととおり終わります。費用はほとんどかからず、経理と現場の担当者で進められます。

そして、この作業で見つかった項目のうち、処理に時間がかかるもの——除却の処理、在庫の評価減、名義の整理——は、決算をまたぐ必要があることもあります。だからこそ、売却を具体的に考える前に一度やっておく価値があります。

当社では、業種に応じて確認すべき項目をお伝えし、優先順位づけをお手伝いしています。相談料・着手金・月額報酬は0円ですので、まだ検討の初期という段階でもご相談ください。なお、会計・税務上の処理については、税理士など専門家にご確認ください。

よくあるご質問

A.いつ廃棄・売却したのかを確認し、除却の処理が必要かを検討します。処理の要否と時期は税務上の取り扱いにも関わりますので、税理士など専門家にご相談のうえ対応されることをおすすめします。
A.販売の見込みがないものは、処分や評価減を検討する価値があります。抱えたまま交渉に入ると、買い手側から評価減を求められて価格の議論になります。会計・税務上の処理は専門家にご確認ください。
A.車両や不動産などでよくある状況です。譲渡にあたっては、会社に移すのか、個人に残すのかを整理する必要があります。税務上の影響もありますので、早めに税理士など専門家を交えてご検討ください。

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相談料・着手金・月額報酬は0円です。基本合意時の中間金と成功報酬については料金体系をご覧ください。確認すべき項目を業種に応じてお伝えします。
メール(info@platinumpartners.jp)でも承ります。

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Author & Supervisor

執筆・監修:株式会社プラチナパートナーズ 取締役副社長 神垣 宏康

東京都千代田区(日比谷)のM&A仲介・事業承継アドバイザリーファーム、株式会社プラチナパートナーズ取締役。成功報酬型のもと、中小企業の事業承継・会社売却を初回相談から成約まで一気通貫で支援しています。役員紹介・会社概要はこちら