許認可は、参入障壁として企業価値を支える要素です。一方で、期限の管理や届出が行き届いていないと、譲渡の局面で思わぬ障害になります。有効期限が迫っている、要件を満たす人が退職している、役員変更の届出が出ていない——いずれも、気づいた時点から対応するには時間がかかります。本稿では、許認可を持つ会社が売却を考える段階で整えておきたい管理の実務を整理します。許認可の価値そのものについては別稿で扱っていますので、本稿は「管理」に絞ってご説明します。

許認可が譲渡の進行を止める三つのパターン

実務で問題になりやすいのは、次の三つです。いずれも事前に把握していれば対応できますが、デューデリジェンスで初めて判明すると、日程の組み直しが必要になります。

一つめは有効期限です。更新が必要な許可で期限が近い場合、更新手続きと譲渡の手続きが重なります。更新の申請中に株主や役員が変わると、手続きが複雑になることがあります。

二つめは人的要件です。一定の資格者や実務経験者の専任配置が求められる許可では、その方が退職・引退すると要件を欠くことになります。社長本人が要件を満たしている場合、譲渡後に退任すると要件を満たさなくなる可能性があり、後任の確保が課題になります。

三つめは変更届の漏れです。役員の変更、営業所の移転、資本金の変更などについて届出が求められる場合があり、これが出ていないと、許可の情報と実態が食い違います。譲渡に伴う手続きの前に、過去分の整理が必要になることがあります。

まず作るべき許認可の一覧

整理の出発点は、自社が持つ許認可をすべて書き出すことです。次の項目を一覧にします。

  • 許認可の名称と根拠法令、所管する行政庁
  • 番号、取得日、有効期限(更新不要のものはその旨)
  • 名義(法人か、代表者個人か)
  • 要件を満たしている人(氏名・資格・要件の内容)
  • 直近の更新・変更届の履歴
  • 次に来る手続きと、その時期

この一覧は、そのままデューデリジェンスの提出資料になります。加えて、社内での期限管理の土台にもなります。許可証の写しや届出の控えを一か所にまとめておくと、探す手間がなくなります。

拠点が複数ある場合は、拠点ごとに必要な許可や届出があることが多いため、拠点単位でも確認します。営業所を増やしたときの届出が漏れている、というのはよくある事例です。

名義が個人になっているものに注意する

許認可の中には、法人ではなく個人に付与されるものがあります。資格者個人の登録、個人事業として取得したまま法人化後も切り替えていないもの、代表者個人名義のものなどです。

株式譲渡による事業承継では、会社そのものが存続するため、法人に付与された許認可は原則としてそのまま維持されます。しかし、個人名義のものは会社の資産ではないため、その方が退任すると使えなくなります。譲渡の検討にあたっては、どれが法人名義でどれが個人名義かを分けて把握することが必要です。

また、事業譲渡や会社分割による場合は、株式譲渡と異なり許認可が当然には引き継がれず、改めて取得が必要になることがあります。どのスキームを選ぶかは許認可の扱いにも影響しますので、早い段階で確認しておきたい点です。個別の許認可の承継可否については、行政庁や行政書士・弁護士など専門家にご確認ください。

人的要件を一人に頼らない

要件を満たす人が社長一人、あるいは特定のベテラン社員一人という状態は、許認可の面でも、事業の継続性の面でもリスクになります。買い手はここを必ず確認します。

対応としては、要件を満たせる人を複数にすることが基本です。資格の取得を支援する、実務経験を積ませる、有資格者を採用する。いずれも時間がかかるため、売却を意識した段階では遅いこともあります。だからこそ、早めに着手する価値があります。

すぐに複数化できない場合は、現状を正確に伝えたうえで、譲渡後の体制について買い手と協議することになります。社長が一定期間残って引き継ぎを行う、買い手側の有資格者を配置する、といった選択肢があり得ます。人が価値になる会社の論点は「人が価値になる会社」でも扱っています。

期限を管理する仕組みを作る

一覧を作ったら、次は期限を管理する仕組みです。特別なツールは要りません。次のような運用で十分機能します。

  • 年度初めに、その年に到来する期限を一覧化する
  • 期限の3〜6か月前に着手するようカレンダーに登録する
  • 担当者を決め、代わりの担当者も決めておく
  • 手続きが完了したら、一覧を更新して控えを保管する

この仕組みがあること自体が、管理体制の説明材料になります。デューデリジェンスで「期限管理はどうしていますか」と問われたときに、一覧と運用のルールを示せる会社は、他の領域も整っていると受け止められます。

あわせて、免許や資格の更新、設備の法定点検、契約の更新など、他の期限も同じ一覧にまとめておくと管理が楽になります。社内の情報を整理する取り組みの一環として進めるのが現実的です。

許認可は早く手をつけるほど有利|まとめ

許認可まわりの整理は、費用がほとんどかからない一方、対応に時間がかかる項目です。有効期限の確認と一覧化は数日でできますが、人的要件の複数化には年単位を要することもあります。

そして、この準備は売却しない場合にも無駄になりません。期限の管理ができていないことによる更新漏れは、事業の停止に直結します。会社を守るための管理として取り組んでいただくのがよいと考えています。

当社では、譲渡のご相談をいただいた段階で、業種に応じて確認すべき許認可と手続きの見通しをお伝えしています。相談料・着手金・月額報酬は0円ですので、時期が決まっていない段階でもご相談いただけます。個別の許認可の取り扱いは、所管の行政庁や行政書士・弁護士など専門家にご確認ください。

よくあるご質問

A.会社そのものが存続するため、法人に付与された許認可は原則として維持されます。ただし役員変更などの届出が必要な場合があり、許可によっては事前の手続きが求められることもあります。所管行政庁や専門家にご確認ください。
A.要件を満たせる人を複数にしておくのが基本です。資格取得の支援や有資格者の採用には時間がかかるため、早めの着手が有利になります。間に合わない場合は、譲渡後の体制について買い手と協議することになります。
A.気づいた時点で所管の行政庁に相談し、手続きを進めることをおすすめします。譲渡の手続きの前に整理しておくほうが、日程の見通しが立てやすくなります。具体的な対応は行政書士や弁護士など専門家にご相談ください。

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相談料・着手金・月額報酬は0円です。基本合意時の中間金と成功報酬については料金体系をご覧ください。業種に応じた確認項目をお伝えします。
メール(info@platinumpartners.jp)でも承ります。

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Author & Supervisor

執筆・監修:株式会社プラチナパートナーズ 取締役副社長 神垣 宏康

東京都千代田区(日比谷)のM&A仲介・事業承継アドバイザリーファーム、株式会社プラチナパートナーズ取締役。成功報酬型のもと、中小企業の事業承継・会社売却を初回相談から成約まで一気通貫で支援しています。役員紹介・会社概要はこちら