採用の説明で「AIを活用しています」と言われても、聞いたほうは判断できません。何がどう変わるのかが分からないからです。

この記事では、当社が何を機械に寄せているかを具体的に書きます。そのうえで、空いた時間を何に使うのかまで書きます。そこまで書かないと「楽になる」という話で終わってしまい、移ったあとで期待とずれるからです。

先に一つ断っておきます。当社は、削減できた時間を数字で公表していません。実際に測っていないものを「三時間の作業が三十分になります」と書くことはできないためです。ここに書けるのは、何を任せているかと、任せた結果どこへ時間を寄せているか、という二つだけです。

アドバイザーの一日は、何で埋まっているか

仲介の仕事は、経営者と向き合う時間だけでできているわけではありません。一件が動き出すまでにも、動き出してからも、手を動かす作業が挟まります。

  • 会える相手を探す。企業を調べ、条件で絞り、連絡先を整える
  • 連絡を取り、面談の日程を決める
  • 受領した決算書と資料を読み、論点を抜き出す
  • 企業概要書や提案資料を作る。企業価値の試算を組む
  • 譲受候補を洗い出し、打診する順番を決める
  • 面談の記録を残し、次に何をするかを決める
  • 案件の進み具合と損益を、あとから見て分かる形にしておく
  • 経費を精算する

このうち、案件の帰結に直接効くのは、決算書を読んで論点を抜き出すところと、面談そのものです。ほかは必要ですが、丁寧にやっても差がつきにくく、手を抜くと後で効いてくる、という性質を持っています。

「忙しいのに前に進んでいない」という感覚は、たいていここから来ます。時間は使っているのに、使い先が差のつかない側に偏っている状態です。まずこの偏りを見ることが、道具を入れるかどうかの前に要ります。

機械に寄せられるもの、寄せられないもの

当社が寄せているのは、大きく三つです。

一つ目は、営業システムです。パッケージではなく、当社の仕事の進め方に合わせて作ったものです。企業検索、架電の記録、面談の記録、案件の管理、損益の可視化までが一つの画面で完結します。案件はフェーズごとに管理され、止まっている案件や、次の行動の期限を過ぎているものは画面上で分かります。表計算ソフトへの転記も、同じ内容を二度入力することもありません。現場の要望を短い周期で画面に反映している、という点も、自社で作っている理由のひとつです。

二つ目は、資料の叩き台です。提案資料、企業価値の試算、企業概要書。これまで一枚ずつ手で作っていたものの叩き台を、AIが用意します。白紙から書き起こす時間がなくなるので、中身を詰めることと、経営者にどう伝えるかに時間を使えます。

三つ目は、譲受候補の抽出です。蓄積した企業データと案件の条件を突き合わせ、打診すべき相手を機械的に絞り込みます。これは効率の話であると同時に、質の話でもあります。人の記憶と人脈だけでマッチングをすると、「知っている会社にしか当たれない」という限界が必ず来ます。譲渡を検討している経営者から見れば、候補の幅がそのまま条件の幅になります。

経理・人事・法務・コンプライアンスといったバックオフィスの実務も、AIエージェントで運用しています。

一方で、寄せていないものがあります。何を論点とするかの判断、相手にどう伝えるかの設計、そして資料の最終的な中身と品質の責任です。叩き台は叩き台であって、そのまま経営者にお見せするものではありません。読む相手が何を心配しているかに合わせて組み替える部分は、担当するアドバイザーが引き受けます。

情報の取り扱いにも線があります。生成AIに案件の情報をどこまで入れてよいかは、効率とは別に決めておかなければなりません。この点は「生成AIツールと案件情報」で別に整理しています。

空いた時間を、何に使うか

ここが本題です。作業が減っただけなら、案件は増えても質は上がりません。当社が時間を寄せたい先は、次の三つです。

会う前に、仮説を持っておく。決算書と資料は、面談の前に読み切っておく。そのうえで「この会社は何で稼いでいて、どこが評価されにくいか」を自分の言葉にしてから会う。初回の面談で経営者が話す気になるかどうかは、聞き方よりも、すでにどこまで分かっているかで決まる場面が多くあります。

悪い知らせを、早く伝える。譲渡の相談では、聞き心地のよくない話を先に申し上げることがあります。想定より評価が低くなる見込み、開示しておいたほうがよい弱み、決めるべき時期。これらは伝えるのに時間と準備が要るため、忙しいと後回しになります。後回しにした分は、たいてい後から大きくなって戻ってきます。

一件を、最後まで持つ。当社は一人のアドバイザーがソーシングからクロージングまで担当します。一件にかかる時間は長くなりますが、途中で引き継がない分、経営者は同じ話を二度しなくて済みます。この設計を成り立たせるために、手を動かす作業を機械へ寄せている、という順番です。働き方としての考え方は「M&A仲介からの独立と転職、3つ目の選択肢」に書いています。

逆に言えば、空けた時間の使い先を決めていない組織では、道具を入れても案件の質は変わりません。作業が減った分だけ案件数を増やす、という使い方もあり得ます。どちらを選んでいるかは、応募する側から見て確かめておく価値があります。

道具が増えても、責任は移らない

叩き台を機械が作っても、経営者にお渡しする資料の内容と品質の責任は、担当するアドバイザーにあります。候補の抽出を機械に任せても、誰に打診するかを決めるのは人です。システムが次に打つ手を示しても、動くかどうかは本人が決めます。

「全部やってくれる」という説明を当社がしないのは、そこが実務と合わないからです。道具が増えると、判断の回数はむしろ増えます。作業に費やしていた時間が、判断に置き換わるという言い方のほうが近いと思います。

そのため、当社で働く方に求めているのは、道具を使いこなすことそのものではありません。整えた仕組みの上で自分の型をつくり、それを会社の標準にしていける方を想定しています。現場の要望を短い周期で画面に反映しているのは、そのためです。

実際の画面と、一日の流れの具体は、面談の場でお見せするのがいちばん早いと考えています。採用情報に募集要項と選考の流れを掲載しています。

当社の実務から

当社は自社開発の営業システムで、企業検索・架電記録・面談記録・案件管理・損益の可視化を一つの画面に集約している。案件はフェーズごとに管理され、次回アクションと期限が画面上で分かる。提案資料や企業価値の試算の叩き台はAIが用意し、最終的な内容の判断と品質の責任はアドバイザーが負う。譲受候補の抽出と優先順位づけにもAIを用い、蓄積した企業データと案件条件を突き合わせる。バックオフィスの実務はAIエージェントで運用している。

よくあるご質問

A.提案資料や企業価値の試算の叩き台をAIが用意し、何を論点とするか、相手にどう伝えるかの設計、そして最終的な内容と品質の責任は担当するアドバイザーが引き受けます。叩き台をそのまま経営者にお見せすることはありません。
A.時間の削減幅を数値では公表していません。実測していないためです。お伝えできるのは、企業検索・架電記録・面談記録・案件管理・損益の可視化が一つの画面で完結し、表計算ソフトへの転記や二重入力が発生しない、という仕組みの中身です。実際の画面は面談の場でご覧いただけます。
A.入れてよい情報とそうでない情報の線引きを定めたうえで運用しています。効率とは別に決めておくべき論点ですので、考え方は「生成AIツールと案件情報|支援機関として、どこまで使ってよいか」に整理しています。
A.自社で開発しているものです。当社の仕事の進め方に合わせて作っているため、現場から要望を出すと短い期間で画面が変わります。パッケージに業務を合わせるのではなく、業務に合わせて画面を変えられることを利点と考えています。

Careers & Consultation

一日の流れは、画面をお見せするのがいちばん早いと思います。

当社は資料の叩き台・譲受候補の抽出・案件管理を機械に寄せ、空いた時間を経営者と向き合う側へ寄せています。実務者としてご一緒いただける方は採用情報を、会社の譲渡をお考えの経営者様は無料相談を、それぞれご覧ください。
メール(info@platinumpartners.jp)でも承ります。

Author & Supervisor

執筆・監修:株式会社プラチナパートナーズ 取締役副社長 神垣 宏康

東京都千代田区(日比谷)のM&A仲介・事業承継アドバイザリーファーム、株式会社プラチナパートナーズ取締役副社長。中小企業の事業承継・会社売却を初回相談から成約まで一気通貫で支援しています。役員紹介・会社概要はこちら