譲渡を検討される会社は全国にあります。担当者の所在地から遠いという理由で、支援の密度が下がってよいわけがありません。とはいえ移動には時間も費用もかかり、近い案件と同じやり方をそのまま当てはめると、どこかが薄くなります。本稿では、訪問をどこに置き、何をオンラインで済ませ、何は現地でなければ分からないのかを整理します。当社の募集要項は採用情報をご覧ください。

現地でしか分からないこと

まず、訪問の価値を具体化しておきます。「行ったほうがよい」では回数を設計できません。現地でしか得られないものは、おおむね次のとおりです。

  • 設備と建物の状態——写真では分からない稼働の音、床の傷み、修繕の跡。更新投資の見込みに直結します
  • 立地の意味——道路付け、周辺の事業所、住宅との距離。移転の可否や近隣対応の論点が見えます
  • 在庫と現場の整理具合——資料に出てこない滞留在庫、動いていない設備
  • 働いている方の様子——年齢構成、職場の空気。人の定着に関わります
  • ご本人の表情と間——電話では拾えない迷いや、言いよどみ

最後の点を軽く見ないことです。譲渡は、数字ではなく気持ちで止まることがあります。画面越しでは、言い終わった後の沈黙の意味が読めません。重要な局面を対面に寄せる理由は、資料の確認ではなく、ここにあります。

逆に言えば、資料の受け渡しと確認は、現地でなくてもできます。訪問の枠を資料のやりとりで埋めてしまうと、行った意味が薄くなります。行く日は、行かないとできないことに時間を使います。

訪問をどこに置くか

回数は無限に取れません。工程の中で、対面の価値が高い局面に寄せます。

局面対面の価値置き方
初回面談高い原則として訪問。信頼関係と、会社の実際を見る最初の機会
資料の受領・整理低いオンラインと郵送で足りる
現地確認(工場・店舗)高い初回と合わせるか、企業概要書の作成前に
価格・条件の説明高い重要な意思決定。可能なら訪問
買い手とのトップ面談最も高い訪問。場所と段取りは事前に詰める
進捗報告低いオンラインで頻度を上げるほうが有効
最終契約・決済高い訪問。当日の段取りは前日までに固める

設計の基本は、回数を減らして一回を厚くすることです。一度の訪問で、面談・現地確認・ご家族との顔合わせ・顧問の先生へのご挨拶までを組みます。前日までに何を見て何を聞くかを書き出しておかないと、移動時間に見合いません。

ただし、厚くしすぎると先方の負担になります。半日以上を拘束すると、通常業務が止まります。訪問前に「何時から何時まで、どなたにご同席いただきたいか」を具体的にお伝えし、先方の都合で組み替えられる形にします。

また、人目の問題があります。地方では、見慣れない来客が誰かの目に留まりやすい。会社訪問の名目、車の停め方、同行者の人数まで含めて事前に相談します。情報が漏れて困るのは譲渡企業の側です。面談場所の考え方は「面談の場所と同席者の決め方」で扱っています。

オンラインで密度を落とさないために

訪問の合間を埋めるのがオンラインです。ここが薄いと、「遠方だから放置されている」という印象になります。

  • 頻度を上げる——対面が少ない分、短い打ち合わせを定期的に置く。30分を月2回のほうが、90分を月1回より状況が伝わります
  • 資料を先に送る——画面共有だけで説明すると、手元に何も残りません。事前に送り、当日は要点だけ話す
  • 相手の環境に合わせる——操作に不慣れな場合は、電話と郵送を主にする。こちらの都合で手段を決めない
  • 顔が見える形にする——初期は映像をお願いする。表情が見えないと、こちらの判断材料も減ります
  • 終わりに次の日程を決める——「また連絡します」で切らない。次がいつか決まっていることが安心につながります

加えて、書面の頻度を上げます。遠方の案件ほど、短い進捗連絡が効きます。動きのない週も「本日時点では変化がありません。次のご連絡は○日を予定しています」と入れるだけで、印象がまったく違います。

電話も有効です。オンライン会議の準備が要らず、短い確認に向きます。ただし、電話の内容は必ず記録に残します。遠方の案件は口頭のやりとりが増えるため、記録が抜けやすい。「言った言わない」の余地を作らない運用が要ります。

移動の負担を、支援の密度に響かせない

実務上の論点として、移動にかかる費用をどう扱うかがあります。ここは、遠方であるかどうかにかかわらず、契約前に書面で明確にしておく部分です。

当社の費用の体系は、相談料・着手金・月額報酬が0円で、基本合意時の中間金(成功報酬額の10%)と、成約時の成功報酬(移動総資産レーマン方式・最低2,000万円・税別)です。内訳と計算の根拠は料金体系に掲載しており、所在地によって金額が変わる設計にはなっていません。費用のご説明も、遠方であるかどうかにかかわらず同じ内容をお伝えします。

担当者の側から見ると、遠方の案件は時間当たりの効率が落ちます。この効率の差が、支援の密度の差になってはいけません。そのために組織側で見ておくことがあります。

  • 遠方の案件を持つ担当の件数を、近い案件と同じ数にしない
  • 訪問の計画を、担当者の判断だけに任せない。行くべき局面を工程表に先に入れる
  • 移動中にできる仕事と、できない仕事を分けて配分する
  • 訪問の記録を社内で共有し、行っていない人にも現地の状況が伝わるようにする

並行して案件を持つときの時間配分は「締切が重なったときの捌き方」で扱っています。

地域の事情を、前提として持っておく

遠方の案件では、その地域の事情が条件に効いてきます。決めつけずに、確認する項目として持っておきます。

  • 買い手の広がり——近隣の同業だけでなく、広域で事業を展開する会社も候補になります。打診先の選定は、地理だけで区切らない
  • 従業員の通勤圏——統合後に拠点を動かせるかどうかに直結します
  • 取引先との関係——長い付き合いの商習慣が、契約書に書かれていないことがあります
  • 地域金融機関との関係——借入の条件、経営者保証の扱い、担当者との関係性
  • 後継者不在の背景——ご家族が地域外で生活しておられる、というのは実際によくある事情です

注意したいのは、地域を理由に条件を低く見積もらないことです。「地方だからこの程度」という言い方は、根拠がないうえに、依頼者に対して失礼です。評価は、その会社の事業と数字から導くものであって、所在地から導くものではありません。地域による相場の数値を語れる公表資料はありませんから、そうした数値を口にすることも避けます。

要点を整理します。

  • 現地でしか分からないのは、設備・立地・在庫・人・ご本人の表情。訪問の日は、それに時間を使う
  • 訪問は初回・現地確認・条件説明・トップ面談・決済に寄せる。回数を減らして一回を厚くする
  • 厚くしすぎて先方の業務を止めない。人目にも配慮して段取りを事前に相談する
  • 合間はオンラインと書面で頻度を上げる。次の日程を決めてから終える
  • 電話のやりとりは必ず記録に残す
  • 遠方であることを理由に、費用の体系も支援の密度も変えない
  • 地域を理由に条件を低く見積もらない

よくあるご質問

A.初回のご面談は、可能な限りお伺いする形をとっています。会社の実際を拝見することと、直接お話を伺うことは、その後の進め方に大きく影響するためです。日程やご事情によっては、初回をオンラインとし、早い段階で訪問する形にすることもあります。
A.当社の費用の体系は、相談料・着手金・月額報酬が0円で、基本合意時の中間金(成功報酬額の10%)と成約時の成功報酬です。内訳と計算の根拠は料金体系のページに掲載しており、所在地によって金額が変わる設計にはなっていません。移動にかかる費用の取り扱いについても、ご契約前に書面でご確認いただけます。
A.訪問の名目、時間帯、人数、車の停め方まで事前にご相談します。会社以外の場所でお会いする、営業時間外にお伺いするなど、方法はいくつもあります。情報が漏れて困るのは譲渡を検討される会社の側ですので、こちらの都合で決めることはありません。
A.所在地だけで決まるものではありません。買い手には、近隣の同業だけでなく、その地域に拠点を持ちたい広域の会社や、技術・人材・許認可を目的とする会社も含まれます。打診先の検討は、地理だけで区切らずに行います。

Free Consultation

所在地によって、支援の密度を変えません。

遠方でもお伺いします。費用の体系も全国同一です。ご契約やご決断を急がせることはありません。
ご相談はメール(info@platinumpartners.jp)でも承ります。

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Author & Supervisor

執筆・監修:株式会社プラチナパートナーズ 取締役副社長 神垣 宏康

東京都千代田区(日比谷)のM&A仲介・事業承継アドバイザリーファーム、株式会社プラチナパートナーズ取締役。成功報酬型のもと、中小企業の事業承継・会社売却を初回相談から成約まで一気通貫で支援しています。役員紹介・会社概要はこちら