M&Aでは、案件が進むにつれて4つの契約を順に結びます。 資料3の法務科目では、このうち秘密保持契約・アドバイザリー契約・基本合意・最終契約に●(優先項目)が付いています。
混同しやすいのは、誰と誰が結ぶのかと、どこに拘束力があるのかです。そこを軸に整理します。
誰と誰が結ぶのかが違う
| 契約 | 当事者 | 何を決めるか |
|---|---|---|
| 秘密保持契約① | 依頼者 ↔ 支援機関 | 相談段階で出す情報の扱い |
| アドバイザリー(仲介・FA)契約 | 依頼者 ↔ 支援機関 | 業務の範囲、手数料、専任、直接交渉の制限、テール等 |
| 秘密保持契約② | 譲り渡し側 ↔ 譲り受け側 | ネームクリアの前提 |
| 基本合意書 | 譲り渡し側 ↔ 譲り受け側 | 主要条件の大枠、独占交渉権、DDへの協力 |
| 最終契約 | 譲り渡し側 ↔ 譲り受け側 | 権利義務の確定。表明保証、補償、前提条件、誓約事項 |
秘密保持契約が2種類あることに注意してください。資料3も、 「依頼者・支援機関間」と「譲り渡し側・譲り受け側間」を分けて記載しています。
後者はネームクリアの前提です。ガイドラインは、 譲り渡し側からの同意を取得し、候補先との秘密保持契約を締結した上でネームクリアを行う必要があるとしています。
秘密保持契約で問われる3点と、締結方法
資料3が挙げる契約内容は、両方の秘密保持契約に共通して次の3つです。
- 秘密保持が求められる情報の定義・範囲
- 秘密保持の期間
- 秘密保持に違反した場合の扱い
締結方法として「双方押印、差し入れ型」が挙げられています。 差し入れ型は、一方だけが義務を負う形式です。
そして、契約締結前の説明事項には次が含まれます。
秘密保持に関する事項(依頼者に秘密保持義務を課す場合にはその旨、秘密保持の対象となる事実、 士業等専門家や事業承継・引継ぎ支援センター等に開示する場合の秘密保持義務の一部解除等)
「一部解除」が重要です。専任条項のセカンド・オピニオンも、 経営者保証の事前相談も、秘密保持を理由に止めてはならないとされています。 ガイドラインは経営者保証について、相談を希望された場合は「実施を拒むべきではなく」、 秘密保持条項の対象から相談先を除外する必要があると明記しています。
アドバイザリー契約|重要事項説明とセット
アドバイザリー(仲介・FA)契約について、資料3は 「契約書作成」「重要事項説明(●)」「締結」の3項目を挙げています。
この契約に盛り込まれる主要条項は、ガイドラインの説明事項の一覧とほぼ重なります。
- 手数料に関する事項(算定基準、金額、最低手数料、既に支払を受けた手数料の控除、支払時期)
- 手数料以外に依頼者が支払うべき費用
- (仲介者の場合)相手方の手数料に関する事項
- 秘密保持に関する事項
- 直接交渉の制限(対象となる候補先、交渉目的の範囲)
- 専任条項(セカンド・オピニオンの可否)
- テール条項(テール期間、対象となるM&A)
- 契約期間、更新、解除、中途解約
- 責任(免責)に関する事項
- 契約終了後も効力を有する条項(該当する条項、その有効期間)
- (仲介者の場合)両当事者間において利益の対立が想定される事項
加えて、仲介者は利益相反行為を行わない旨を、仲介契約書において自らの義務として定めなければなりません。 これは「望ましい」ではなく「定めなければならない」です。
基本合意と最終契約|拘束力の所在が違う
基本合意書は、主要条件の大枠、スケジュール、DDへの協力、独占交渉権、秘密保持などを定めます。 一般に、価格等の取引条件には法的拘束力を持たせず、 独占交渉権や秘密保持には拘束力を持たせる構成が多く用いられます。
DDで前提が崩れれば条件は動き得るため、基本合意は「決まった」ではなく「この線で詰める」段階です。 依頼者にそう伝えられるかが、実務の分かれ目になります。
最終契約は、両当事者の権利義務を確定させる文書です。ガイドラインはこう書いています。
最終契約の締結に当たっては、契約内容に漏れがないよう依頼者に対して再度の確認を促すことが必要である。 最終契約は、両当事者の権利義務を規定する重要なものであるため、 可能な限り、中小M&Aに関する知見と実務経験を有する弁護士の関与の下で締結することが望ましい。
そして、リスク事項が含まれる場合には 「改めて最終契約締結前に当該リスク事項の詳細とリスクが顕在化した場合に生じうる結果について、 可能な限り具体的に説明することが望ましい」とされています。
「契約終了後も効力を有する条項」という視点
説明事項の一覧にある「契約終了後も効力を有する条項(該当する条項、その有効期間等)」は、 4つの契約を横断して効いてくる論点です。
| 条項 | 契約終了後 |
|---|---|
| 秘密保持 | 存続する(期間を定めるのが通常) |
| テール条項 | 存続する(最長でも2年〜3年以内が目安) |
| 直接交渉の制限 | 契約終了までに限定すべき |
| 専任条項 | 契約期間に従う(最長でも6か月〜1年以内が目安) |
契約が終わっても終わらないものがある。 依頼者から見ると、これはいちばん分かりにくい部分です。だからこそ、 契約締結前にどの条項がいつまで残るのかを説明することが求められています。
本記事は一般的な制度の説明です。個別の契約条項の評価は、必ず弁護士にご確認ください。
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本記事は、中小企業庁が公表した資料をもとに、株式会社プラチナパートナーズが作成したものです。 本試験の実施主体・運営事業者が作成・監修・承認したものではありません。
試験の名称・科目構成・出題数・出題範囲・合格基準・実施時期等は、2026年9月時点で公表されている 検討会資料および企画競争募集要領に「想定」「現状案」として示された内容です。 試験名は資料上「中小M&A資格試験(仮称)」と表記されています。実際の試験と異なる可能性がありますので、 受験にあたっては必ず公式の試験案内をご確認ください。
本記事の法務・税務・会計に関する記述は一般的な制度の説明です。 個別の案件における判断は、必ず弁護士・税理士・公認会計士等の専門家にご確認ください。
出典:「中小M&A市場の改革に向けた方向性について」(中小企業庁・第4回 中小M&A市場の改革に向けた検討会 資料2、2026年3月17日)/ 同 資料3「試験科目詳細」/ 「中小M&A資格試験実施事業」企画競争募集要領(中小企業庁、2026年3月27日)/ 中小M&Aガイドライン(第3版)(中小企業庁、2024年8月)/ 中小M&A専門人材(個人)向け 使命・倫理行動規範・知識スキルマップ をもとに当社が作成。
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当社取締役副社長 神垣宏康が執筆した問題集です。中小M&Aガイドライン第3版・知識スキルマップ・検討会資料「試験科目詳細」といった公表資料だけから全300問を作成し、全問に出典を明記しています。
中小M&A資格試験 合格テキスト|一次資料で体系的に学ぶ、4科目の要点
同じシリーズの基本書です(2026年10月3日刊行)。序章で制度創設の経緯・4科目と配点・合格基準・禁忌肢・CBTでの実施形式・学習プランを示し、第1章 M&A実務/第2章 中小M&A市場動向・中小企業政策/第3章 財務・税務/第4章 法務/第5章 倫理・行動規範の順に解説しています。付録は用語集・重要数値一覧・スキーム比較表・出題範囲対応表・学習記録シート。数値・期間・条文には出典を併記し、制度の数値は2026年10月1日時点です。
問題集で問われ方を確かめ、間違えた問から本書の該当節に戻る形を想定しています。付録の出題範囲対応表が、2冊の往復の索引になります。
本書は試験の実施主体・運営事業者が作成・監修したものではありません。制度の内容は2026年9月時点の公表資料に基づく「想定」「現状案」です。受験にあたっては公式の試験案内をご確認ください。