弁護士は増え続けてきました。日本弁護士連合会の統計によれば、2000年の17,126人から2025年3月31日現在で46,243人。25年で2.7倍です。
ところが、その勢いは明らかに変わりました。直近1年の増加は435人で、5年前の1,042人の半分以下です。本稿ではこの減速を確認し、法律事務所の承継で何が焦点になるかを整理します。
本稿の数値は日本弁護士連合会「弁護士白書2025年版」(資料1-1-2 弁護士数・2025年3月31日現在)によります。増加数・増加率は本稿で算出しました。制度・税務・法務の取り扱いはご状況により異なりますので、実際のご判断にあたっては顧問の専門家にもご確認ください。
増加数が5年で半分以下になった
日本弁護士連合会「弁護士白書2025年版」(資料1-1-2 弁護士数・2025年3月31日現在)によれば、直近6年の弁護士数は次のとおりです。
| 年(各年3月31日現在) | 弁護士数 | 前年からの増加 | うち女性 | 女性割合 |
|---|---|---|---|---|
| 2020年 | 42,164人 | ― | 8,017人 | 19.0% |
| 2021年 | 43,206人 | +1,042人 | 8,335人 | 19.3% |
| 2022年 | 44,101人 | +895人 | 8,630人 | 19.6% |
| 2023年 | 44,916人 | +815人 | 8,901人 | 19.8% |
| 2024年 | 45,808人 | +892人 | 9,200人 | 20.1% |
| 2025年 | 46,243人 | +435人 | 9,407人 | 20.3% |
出典:日本弁護士連合会「弁護士白書2025年版」(資料1-1-2 弁護士数・2025年3月31日現在)より作成
2021年の1,042人から、2025年は435人。増加数が58%減りました(本稿で算出)。
長期で見ると、この変化の大きさが分かります。
| 年 | 弁護士数 | 女性割合 |
|---|---|---|
| 1950年 | 5,827人 | 0.1% |
| 1980年 | 11,441人 | 3.7% |
| 2000年 | 17,126人 | 8.9% |
| 2010年 | 28,789人 | 16.2% |
| 2020年 | 42,164人 | 19.0% |
| 2025年 | 46,243人 | 20.3% |
出典:日本弁護士連合会「弁護士白書2025年版」(資料1-1-2 弁護士数・2025年3月31日現在)より作成
2000年から2010年の10年で11,663人増えたのに対し、2020年から2025年の5年では4,079人。年あたりでは1,166人から816人へ落ちています(本稿で算出)。
増加が止まると、何が変わるか
統計は理由までは示しません。ただ、人数の伸びが鈍るという事実は、この業界の構造にいくつかの意味を持ちます。
ひとつは、新規参入による競争圧力が弱まること。2000年代の急増期には、毎年千数百人が新たに加わっていました。その頃に「弁護士が余る」と語られた状況とは、前提が変わっています。
もうひとつは、事務所の後継者が自動的には湧かないこと。増加が緩やかになるということは、独立や承継の担い手として現れる若手も、以前ほどは増えないということです。
女性割合は20.3%まで上がりました。1950年の0.1%、2000年の8.9%と比べれば大きな変化ですが、直近5年では19.0%から20.3%へ1.3ポイントの上昇にとどまっています。こちらも動きは緩やかになっています。
法律事務所という事業の性質
法律事務所の承継には、一般の会社と違う点がいくつもあります。
- 弁護士法人か、個人事務所か。弁護士法人であれば持分の譲渡という形が考えられますが、社員になれるのは弁護士に限られます。個人事務所には譲渡する「会社」がありません
- 事件は依頼者との委任契約。会社を移しても、依頼者が新しい弁護士を受け入れるかは別の問題です。委任契約は当事者の信頼を前提にしており、機械的には移りません
- 利益相反の確認。2つの事務所が一緒になると、それぞれの依頼者どうしが対立関係にある案件が出てきます。事前の確認が欠かせません
- 守秘義務。事件記録の引き継ぎには、依頼者の同意が要る場面があります
このため、法律事務所の承継は「事務所を買う」というより「弁護士が加わる」形で進むことが多くなります。当社は法律事務所そのものの仲介を行うものではありませんが、顧問先の企業が士業の先生と関わる場面は多く、構造は共通しています。
企業側から見たときの意味
この統計は、会社を譲渡される経営者にとっても意味があります。
M&Aでは、契約書の確認や法務デューデリジェンスで弁護士に依頼する場面があります。弁護士の増加が鈍り、地域による偏りが続いているとすれば、案件のたびに近くで適任の先生を探せるとは限りません。
また、顧問弁護士の先生がご高齢である場合、会社の承継と顧問の先生の引退が重なることがあります。長年の経緯を知る先生がいなくなると、過去の契約や紛争の背景が分からなくなります。
会社の譲渡をお考えであれば、顧問の先生に早い段階でお伝えしておくことをお勧めします。秘密保持の問題はありますが、契約書の所在と過去の経緯を整理しておくだけで、後の調査が大きく楽になります。
他の士業の動きは「税理士業界の動向」「会計事務所業界の動向」に整理しています。