介護サービスのなかで、最も民間企業が多い分野があります。福祉用具です。

厚生労働省の公表統計によれば、福祉用具貸与の開設主体は営利法人(会社)が94.9%、特定福祉用具販売は95.5%。他のどのサービスよりも高い比率です。本稿ではこの分野の現在地を確認します。

本稿の数値は厚生労働省「令和6(2024)年 介護サービス施設・事業所調査の概況」(令和7年12月19日公表・令和6年10月1日現在)によります。制度・税務・法務の取り扱いはご状況により異なりますので、実際のご判断にあたっては顧問の専門家にもご確認ください。

令和4年をピークに減っている

厚生労働省「令和6(2024)年 介護サービス施設・事業所調査の概況」(令和7年12月19日公表・令和6年10月1日現在)によれば、福祉用具関連の事業所数の推移は次のとおりです。

年(各年10月1日現在)福祉用具貸与特定福祉用具販売介護予防福祉用具貸与
令和2年(2020)7,5457,5297,463
令和3年(2021)7,7707,6577,648
令和4年(2022)7,9277,8007,779
令和5年(2023)7,8307,7187,702
令和6年(2024)7,7367,6057,612
ピーク(令和4年)からの増減△191(△2.4%)△195(△2.5%)△167(△2.1%)

出典:厚生労働省「令和6(2024)年 介護サービス施設・事業所調査の概況」(令和7年12月19日公表・令和6年10月1日現在)より作成

いずれも令和4年をピークに、2年続けて減っています。令和6年は貸与が94事業所(1.2%)減、販売が113事業所(1.5%)減でした。

貸与と販売の事業所数がほぼ同じ水準で推移しているのは、同じ事業者が両方の指定を持っているためです。貸与7,736に対し販売7,605と、その差はわずか131事業所にすぎません。

営利法人94.9%という突出した構成

同資料によれば、開設(経営)主体の構成は次のとおりです。

サービス営利法人(会社)社会福祉法人医療法人
特定福祉用具販売95.5%1.5%1.0%
福祉用具貸与94.9%1.7%1.3%
訪問入浴介護77.3%20.0%1.4%
地域密着型通所介護76.6%12.1%3.5%
訪問介護73.2%14.0%5.4%
訪問看護ステーション66.8%4.5%18.2%

出典:厚生労働省「令和6(2024)年 介護サービス施設・事業所調査の概況」(令和7年12月19日公表・令和6年10月1日現在)より作成

介護サービスのなかで営利法人の比率が最も高い分野です。訪問介護の73.2%、訪問看護の66.8%と比べても、20ポイント以上高い。

理由は事業の性質にあります。福祉用具は在庫と物流を持つ事業であり、身体介護のような有資格者の配置を主軸とする事業とは構造が違います。商品の仕入れ、保管、消毒、配送、回収という流れは、介護というより卸売・レンタル業に近い形をしています。

この構成は承継にとって大きな意味を持ちます。ほぼすべてが株式会社なので、株式譲渡という一般的な形が素直に使えます。

在庫とメンテナンスが価値になる

福祉用具貸与は、他の介護サービスと違って貸借対照表に資産が載る事業です。

ベッド、車いす、歩行器、手すり、床ずれ防止用具。これらは事業者が購入し、利用者に貸し出します。レンタル資産が積み上がる構造です。

そのため評価の論点も、他の介護サービスとは変わります。

  • レンタル資産の簿価と実勢。減価償却がどこまで進んでいるか。簿価がゼロでも現に稼働している用具は収入を生みます
  • 稼働率。倉庫に眠っている在庫がどれだけあるか
  • 消毒・メンテナンスの設備。自社で行うか外注か
  • 倉庫と配送体制。商圏の広さを決める要素です

つまり「介護事業のM&A」でありながら、見るべきものはレンタル業に近い。この二面性が、この分野の特徴です。

承継のときに見られる点

上記に加えて、評価の目は次のようなところに向きます。

  • 福祉用具専門相談員の在籍。指定の要件です。事業所ごとに2名以上の配置が必要になります
  • 居宅介護支援事業所との関係。利用者はケアプランを通じて来ます。紹介元が特定の1か所に偏っていないか
  • 貸与と販売、両方の指定を持っているか。ほとんどの事業者が両方持っています
  • 住宅改修への対応。手すり設置などの改修を併せて行っているか
  • 仕入先との取引条件。メーカー・卸との関係が原価を左右します
  • 報酬改定への対応。令和6年度改定では一部の用具について貸与と販売の選択制が導入されています

ピークから2年続けて減っている分野ですが、減っているぶん、残る事業者に商圏が寄る可能性があります。倉庫と配送を共有できれば規模の効果も出やすく、まとまる動きが起きやすい構造です。

分野全体は「介護業界の動向」に、実務は「福祉用具レンタル・介護用品のM&A」に整理しています。

この数字の読み方。厚生労働省の介護サービス施設・事業所調査は事業所・施設を単位に集計したものです。1つの法人が複数の事業所を運営していることがあるため、法人の数はこれより少なくなります。また調査日時点の値で、その後の開設・廃止は含みません。承継の検討で規模を見るときは、事業所の数ではなく、1つの法人がどの指定をいくつ持っているかをご確認ください。

よくあるご質問

A.厚生労働省の統計では、福祉用具貸与は令和4年の7,927をピークに令和6年は7,736、特定福祉用具販売は令和4年の7,800をピークに令和6年は7,605と、いずれも2年続けて減っています。
A.統計は構成を示すだけで理由は示しません。事実として、福祉用具貸与は94.9%、特定福祉用具販売は95.5%が営利法人(会社)です。在庫と物流を持つ事業であり、有資格者の配置を主軸とする他の介護サービスとは構造が異なります。
A.簿価と実勢は一致しないことが多く、減価償却が進んでいても現に稼働している用具は収入を生みます。稼働率と併せて確認する必要があります。ご状況によりますので個別にご相談ください。
A.別の指定ですが、ほとんどの事業者が両方を持っています。統計上も貸与7,736に対し販売7,605と、事業所数がほぼ同水準で推移しています。

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Author & Supervisor

執筆・監修:株式会社プラチナパートナーズ 取締役副社長 神垣 宏康

東京都千代田区(日比谷)のM&A仲介・事業承継アドバイザリーファーム、株式会社プラチナパートナーズ取締役副社長。中小企業の事業承継・会社売却を初回相談から成約まで一気通貫で支援しています。役員紹介・会社概要はこちら