警備業は、統計が毎年きちんと公表されている数少ない業種のひとつです。警察庁が「警備業の概況」として、業者数・警備員数・年齢構成・業務区分・機械警備の状況までまとめて公表しています。本稿では、この公表資料をもとに警備業界の現在地を確認し、事業承継の観点でどこが焦点になるのかを整理します。
警備業界の現在地|業者数も警備員数も増えている
警察庁「令和7年における警備業の概況」によれば、令和7年12月末現在、警備業法第4条に基づく認定業者(4条業者)は1万949業者で、前年より138業者(1.3%)増加しています。警備員数は59万6,985人で、前年より9,137人(1.5%)の増加です。雇用別では常用警備員が54万5,879人、臨時警備員が5万1,106人で、臨時の割合は8.6%でした。女性の警備員は4万5,304人、全警備員の7.6%です。
警備員数の推移を見ると、令和3年の58万9,938人から令和4年に58万2,114人まで減った後、令和5年58万4,868人、令和6年58万7,848人、令和7年59万6,985人と、3年続けて増えています。指数(令和3年=100)では101となり、数のうえでは持ち直しています。
事業者の規模はきわめて小さいのが特徴です。同資料によれば、警備員数100人未満の警備業者が9,885業者で全体の90.3%、警備員5人以下の業者が2,912業者で26.6%を占めます。営業所の数で見ても、主たる営業所1つのみの業者が9,219業者で84.2%、5営業所以下が1万669業者で97.4%です。全国の営業所総数は1万6,728営業所でした。
数字の内側|年齢構成に表れた構造的な課題
警備員数が増えていることは事実ですが、その中身を見ると別の課題が浮かびます。同資料の年齢別状況(令和7年末)は次のとおりです。
| 年齢区分 | 警備員数 | 構成比 |
|---|---|---|
| 30歳未満 | 65,028人 | 10.9% |
| 30〜39歳 | 52,968人 | 8.9% |
| 40〜49歳 | 78,479人 | 13.1% |
| 50〜59歳 | 118,001人 | 19.8% |
| 60〜64歳 | 75,001人 | 12.6% |
| 65〜69歳 | 78,496人 | 13.1% |
| 70歳以上 | 129,012人 | 21.6% |
出典:警察庁「令和7年における警備業の概況」より作成
70歳以上が21.6%と最も大きな区分になっており、60歳以上を合わせると47.3%に達します。一方で30歳未満は10.9%、30歳代は8.9%にとどまります。警備業は他業種を退職された方の再就職先としての役割を担ってきましたが、その結果として、現場を支える層の年齢が高いところに集中しているということです。
在職年数も短めです。同資料によれば、在職1年未満が18.3%、1〜3年未満が21.4%で、合わせて約4割が在職3年未満です。3〜10年未満が31.2%、10年以上が29.1%となっています。
売上高については、一般社団法人全国警備業協会が令和7年末に警備業者を対象に実施した調査で、回答のあった5,210業者の売上高の合計が3兆5,056億円余りと公表されています。
事業の中身|業務区分から見る受注の性質
警備業務は法令上4つの区分に分かれます。警察庁の同資料によれば、令和7年末時点で各区分の業務を行っている業者の割合は次のとおりです(一つの業者が複数区分を実施している場合は重複計上)。
| 区分 | 業者数 | 構成比 |
|---|---|---|
| 2号警備業務(交通誘導・雑踏) | 8,768 | 80.1% |
| うち交通誘導 | 8,241 | 75.3% |
| うち雑踏 | 5,164 | 47.2% |
| 1号警備業務(施設・巡回・保安・機械等) | 6,975 | 63.7% |
| うち施設 | 6,690 | 61.1% |
| 4号警備業務(身辺警備) | 699 | 6.4% |
| 3号警備業務(貴重品運搬等) | 638 | 5.8% |
最も多いのは交通誘導を含む2号警備業務です。これは建設工事の量に連動するため、季節や工事の発注状況に左右されやすい性質があります。一方、施設警備を中心とする1号警備業務は契約先の施設に継続的に人を配置するため、年間を通じて売上が読めます。同じ年商でも、この構成比によって将来収益の確からしさが変わります。
機械警備の動向|業者は減り、対象施設は増えている
機械警備には別の動きが見られます。同資料によれば、機械警備業者数は令和7年12月末現在で512業者、前年より30業者(5.9%)の減少です。一方、機械警備業務の対象施設数は352万5,422箇所で、前年より10万1,952箇所(2.9%)増加しました。うち住宅は195万261箇所で、令和3年比では14%増となっています。
設備面では、基地局数が令和3年の682から令和7年の617へ、待機所数が8,007から7,275へ、専用巡回車数が12,936から11,047へと減っています。専従警備員数は27,145人でほぼ横ばいです。少ない拠点と車両で、より多くの対象施設をカバーする方向に、効率化が進んでいることが読み取れます。
これは、機械警備が規模の経済の働きやすい領域であることを意味します。業者数が減り、対象施設が増えているという組み合わせは、事業の集約が進んでいることの表れとも言えます。
事業承継の観点で何が論点になるか
警備業の承継では、まず法定要件が前提条件になります。警備業を営むには都道府県公安委員会の認定を受ける必要があり、営業所ごとに、取り扱う警備業務の区分に応じて警備員指導教育責任者を選任して置くことが求められているとされています。この資格は所定の講習を経て取得するもので、すぐに補充できるものではありません。
先に見たとおり、警備業者の84.2%は営業所が1つだけです。小規模な会社では、経営者様ご自身が指導教育責任者を兼ねているケースが多く、その方が退かれると営業所の体制に穴が開きかねません。誰が有資格者で、承継後も在籍する見込みがあるかは、交渉の初期に確認される事項です。
次に、隊員の年齢構成です。60歳以上が47.3%という業界平均を踏まえれば、自社の年齢構成が平均より高いか低いかは、そのまま将来の売上の見通しに直結します。買い手は必ずここを見ます。
そして後継者です。帝国データバンクの2025年調査では国内企業の後継者不在率は50.1%とされています。警備業のように現場が人で成り立つ業種では、承継の遅れが人員の減少を招き、契約を返上せざるを得なくなるところまで進みかねません。より実務的な論点は「警備業のM&A|人手不足と法定要件のなかでの事業承継」で詳しく整理しています。
認定の取り扱い、届出の要否と期限、有資格者の配置に関する要件は、業務区分や都道府県公安委員会の運用によって異なります。実行にあたっては、所管の都道府県公安委員会および専門家にご確認ください。
M&Aで引き継ぐときに整理しておきたいこと
一般に、次のような情報が確認されます。
- 認定の状況、営業所ごとの警備員指導教育責任者の氏名・資格区分・年齢
- 各種検定資格の保有者数と配置状況(受注可能な業務の範囲に直結します)
- 売上の業務区分別内訳(施設/交通誘導/雑踏/機械警備など)と、契約期間・更新実績
- 隊員の在籍数、年齢構成、平均勤続年数、直近の採用実績と離職率
- 法定教育の実施記録、警備員名簿の整備状況
- 労働時間管理、割増賃金、仮眠時間の取り扱い、社会保険の加入状況
- 契約書における支配株主の変更に関する条項の有無
法定教育の記録と労務管理は、必ず確認される領域です。未整理の部分は潜在的な負担として評価に反映されますので、事前に点検しておくことが条件を守ることにつながります。
当社は成功報酬型のもと、警備業を含む中小企業の事業承継・会社売却をご支援しています。守秘義務を徹底のうえ、初期の整理から対応いたします。
同じく人手に支えられる業種の動きは「ビルメンテナンス業界の動向|人手不足と契約単価の見直し」でも整理しています。費用の考え方は料金体系のページに公開しています。
本稿の記述は執筆時点(2026年9月)の公表資料に基づきます。最新の情報は各所管官庁の公表をご確認ください。