測量業と建設コンサルタント業は、工事の前段にある仕事です。調査し、測り、設計し、積算する。表に出にくい分野ですが、公共事業の入口を担っているため、業界の姿は公共投資の動きと技術者の確保状況にそのまま左右されます。本稿では、国土交通省が毎年公表している登録業者数の統計を軸に、業界の現在地を整理します。

業界の現在地|測量業は21年連続の減少

国土交通省「建設関連業 登録業者数調査(令和6年度)」(令和7年8月公表)によれば、令和6年度末(令和7年3月31日)現在の登録業者数は次のとおりです。

区分業者数前年度比新規登録/登録消除
測量業11,140173業者(1.5%)減283/456
建設コンサルタント3,9302業者(0.05%)減170/172
地質調査業1,2219業者(0.7%)減17/26

出典:国土交通省「建設関連業 登録業者数調査(令和6年度)」より作成

測量業は平成15年をピークに21年連続で減少しています。建設コンサルタントと地質調査業は、平成17年をピークに概ね横ばいで推移しているとされます。新規登録と登録消除の数を比べると、測量業では消除が新規を大きく上回っており(456対283)、退出が続いていることが分かります。

この構図は、建設業本体と対照的です。国土交通省「建設業許可業者数調査」によれば、建設業許可業者数は令和7年度末で483,823業者と3年連続で増加しています。工事を施工する側の業者数が横ばい〜微増であるのに対し、その前段を担う測量業だけが減り続けている、ということになります。

仕事の量は減っていない|老朽化インフラという需要

業者数が減っている一方で、仕事の量が減っているとは言えません。国土交通省のインフラメンテナンス情報によれば、全国に約73万橋ある道路橋のうち、建設後50年以上を経過するものの割合は2030年3月に約54%、2040年3月には約75%に達する見込みです。トンネル(約1万2千本)は約35%から約52%へ、河川管理施設(約2万8千施設)は約42%から約65%へ、港湾施設(約6万2千施設)は約44%から約68%へと推移します。

老朽化した施設は、点検し、診断し、補修や更新の計画を立てなければなりません。この一連の流れの入口には、必ず調査・測量・設計の仕事があります。道路橋やトンネルについては5年に1回の頻度で近接目視を基本とする定期点検を行うこととされており、点検業務は周期的に発生します。

加えて、3次元計測やBIM/CIMの導入により、成果物の形そのものが変わりつつあります。従来の図面納品から、点群データや3次元モデルの納品へ。この転換に対応できる会社とできない会社で、受注できる業務の範囲に差が生じ始めています。

予算の裏づけ|第1次国土強靱化実施中期計画

予算面では、政府が令和7年6月6日に閣議決定した「第1次国土強靱化実施中期計画」があります。内閣官房の公表によれば、326の施策のうち114施策を「推進が特に必要となる」と位置づけ、2026年度から2030年度までの5年間で20兆円強程度の事業規模を見込むとされています。緊急輸送道路(約11,000km)にかかる約65,000橋の耐震化を2038年度までに完了させる目標、大口径下水道管(約5,000km)の健全度確保を2032年度までに100%とする目標なども盛り込まれました。

これらの目標を達成するには、その前提として調査と設計が必要です。業務量そのものは、当面のあいだ確保されると読むのが自然です。問題は、それを担う技術者が足りるかどうかにあります。

制度と経営環境|登録要件と技術者の高齢化

測量業は測量法に基づく登録が必要で、営業所ごとに測量士を置くことが求められています。建設コンサルタントおよび地質調査業についても、国土交通省の登録規程に基づく登録制度があり、技術管理者の設置が要件とされています。いずれも、登録は有資格者の存在に依存しているということです。

したがって、この業界における「人手不足」は、単なる人員の問題ではなく登録の維持に直結する問題になります。有資格者が一人しかいない小規模事業者の場合、その方の引退がそのまま廃業を意味しかねません。測量業で登録消除が新規登録を上回り続けている背景には、この構造があると考えられます。

建設業全体の年齢構成も参考になります。総務省「労働力調査」に基づく日本建設業連合会の集計では、2025年の建設業就業者のうち55歳以上が約37%、29歳以下が約12%です。技術系の職種に限っても、同様の偏りがあると考えられます。

事業承継の観点で何が論点になるか

測量・建設コンサルタント会社の承継では、次の点が焦点になります。

第一に、登録の維持です。株式譲渡であれば法人が存続するため登録は一般に維持されますが、役員や技術管理者に変更があれば所定の手続が必要になります。事業譲渡の場合は、譲受側が自ら登録を有していることが通常の前提です。誰が有資格者で、承継後も在籍する見込みがあるかは、交渉の最初に確認される事項です。

第二に、発注機関との関係です。国・自治体・公団などの発注機関ごとに入札参加資格を持ち、過去の業務実績が評価に反映されます。実績と資格は法人に帰属するため、株式譲渡であれば引き継がれるのが通常ですが、技術者が抜けると応札できる業務の範囲が変わる点は注意が必要です。

第三に、後継者です。帝国データバンクの2025年調査では国内企業の後継者不在率は50.1%とされています。技術系の会社では、技術を理解している後継者でなければ現場が動かないという事情があり、親族内での承継が難しいケースが目立ちます。

M&Aで引き継ぐときに整理しておきたいこと

一般に、次のような情報が確認されます。

  • 登録の種別(測量業/建設コンサルタント/地質調査業)と登録番号、有効期限
  • 測量士・技術士・RCCMなど有資格者の一覧(資格種別、人数、年齢構成)
  • 発注機関ごとの入札参加資格と、直近数年の受注実績(業務名・金額・発注者)
  • 売上の内訳(官/民、測量/設計/調査/補償)と、発注者ごとの集中度
  • 3次元計測機器・解析ソフトなどの保有状況と、BIM/CIMへの対応状況
  • 外注先(協力会社)の一覧と、承継後も継続する見込み
  • 労働時間管理・社会保険の加入状況、繁忙期(年度末)の労務実態

技術者の一覧と受注実績の一覧、この二つが揃っていれば、話は早く進みます。逆に言えば、有資格者が高齢化してからでは、引き継げるものが減っていきます。より実務的な論点は「測量業・建設コンサルタントのM&A|技術者と登録の承継」でも整理しています。

当社は成功報酬型のもと、測量業・建設コンサルタントを含む中小企業の事業承継・会社売却をご支援しています。守秘義務を徹底のうえ、初期の整理から対応いたします。

工事側の動きは「道路・舗装工事業界の動向|インフラ老朽化と維持管理需要」でも整理しています。費用の考え方は料金体系のページに公開しています。

本稿の記述は執筆時点(2026年9月)の公表資料に基づきます。最新の情報は各所管官庁の公表をご確認ください。

よくあるご質問

A.登録の維持そのものに影響します。測量業は測量法に基づく登録が必要で、営業所ごとに測量士を置くことが求められています。建設コンサルタントおよび地質調査業についても、国土交通省の登録規程に基づく登録制度があり、技術管理者の設置が要件とされています。つまりこの業界の人手不足は、単なる人員の問題ではなく登録の維持に直結する問題です。国土交通省「建設関連業 登録業者数調査(令和6年度)」では、測量業の令和6年度の新規登録283に対し登録消除は456で、退出が続いています。有資格者が在籍しているうちに、引き継ぐ選択肢を並べておくことをおすすめします。
A.実績と資格は法人に帰属するため、株式譲渡であれば引き継がれるのが通常です。ただし、役員や技術管理者に変更があれば所定の手続が必要になります。注意が必要なのは、技術者が抜けると応札できる業務の範囲が変わる点です。発注機関ごとの入札参加資格と、直近数年の受注実績(業務名・金額・発注者)を一覧にし、あわせて測量士・技術士・RCCMなど有資格者の一覧(資格種別、人数、年齢構成)を揃えてください。この二つが揃っていれば話は早く進みます。事業譲渡の場合は譲受側が自ら登録を有していることが通常の前提となります。
A.受注できる業務の範囲に差が出始めている領域です。3次元計測やBIM/CIMの導入により、従来の図面納品から点群データや3次元モデルの納品へと成果物の形そのものが変わりつつあります。この転換に対応できる会社とできない会社で、受注できる業務の範囲に差が生じています。まずは3次元計測機器・解析ソフトなどの保有状況と対応状況を正直に整理してください。対応が遅れている場合、自社で投資して追いつく道と、対応体制を持つ相手と組む道の両方があります。どちらが現実的かは、有資格者の年齢構成と受注実績を並べてから判断できます。
A.需要と担い手が別々に動いているためです。国土交通省のインフラメンテナンス情報によれば、全国に約73万橋ある道路橋のうち建設後50年以上を経過するものの割合は2030年3月に約54%、2040年3月には約75%に達する見込みで、道路橋やトンネルは5年に1回の頻度で近接目視を基本とする定期点検を行うこととされています。政府も令和7年6月6日に「第1次国土強靱化実施中期計画」を閣議決定しました。一方、測量業の登録業者数は平成15年をピークに21年連続で減少しています。業務量は当面確保されると読むのが自然ですが、それを担う技術者がいなければ受注できません。

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Author & Supervisor

執筆・監修:株式会社プラチナパートナーズ 取締役副社長 神垣 宏康

東京都千代田区(日比谷)のM&A仲介・事業承継アドバイザリーファーム、株式会社プラチナパートナーズ取締役。成功報酬型のもと、中小企業の事業承継・会社売却を初回相談から成約まで一気通貫で支援しています。役員紹介・会社概要はこちら