道路・舗装の仕事は、新しい道路をつくる仕事から、既にある道路を保たせる仕事へと、重心が移ってきました。この変化は感覚的なものではなく、国土交通省が公表しているインフラの老朽化データにはっきり表れています。本稿では、公表資料から道路・舗装工事業界の現在地を確認し、事業承継の観点でどこが論点になるのかを整理します。
道路・舗装工事業の現在地|許可業者数はほぼ横ばい
国土交通省「建設業許可業者数調査」(令和8年3月末現在)によれば、舗装工事業の許可を取得している業者は99,042業者で、前年比0.1%増、平成12年3月末比では12.9%増となっています。土木工事業が130,833業者(前年比0.8%減、平成12年比22.1%減)、建築工事業が140,967業者(同1.8%減、37.8%減)と長期的に減っているのに対し、舗装工事業は水準を保っています。
関連する業種では、とび・土工工事業が184,825業者(前年比0.6%増)、水道施設工事業が88,518業者(同0.1%減)、しゅんせつ工事業が58,073業者(同1.2%増)となっています。土木系のなかでは、道路・舗装に近い業種ほど業者数が維持されている傾向が読み取れます。
ただし、業者数が保たれていることと、施工能力が保たれていることは同じではありません。総務省「労働力調査」に基づく日本建設業連合会の集計では、2025年の建設業就業者数は478万人でピークの1997年(685万人)の約7割、建設技能者は296万人で同6割強です。年齢構成でも、2025年の建設業就業者のうち55歳以上が約37%、29歳以下が約12%とされています。
需要の構造|インフラの老朽化が生む維持管理の仕事
需要の側は、かなりの確度で見通せます。国土交通省のインフラメンテナンス情報によれば、建設後50年以上を経過する施設の割合は次のように推移する見込みです。
| 施設 | 対象規模 | 2030年3月 | 2040年3月 |
|---|---|---|---|
| 道路橋 | 約73万橋 | 約54% | 約75% |
| トンネル | 約1万2千本 | 約35% | 約52% |
| 河川管理施設 | 約2万8千施設 | 約42% | 約65% |
| 下水道管渠 | 総延長約49万km | 約16% | 約34% |
| 港湾施設 | 約6万2千施設 | 約44% | 約68% |
出典:国土交通省「社会資本の老朽化の現状と将来」より作成
高度経済成長期に集中的に整備された社会資本が、今後20年で一斉に更新時期を迎えます。道路橋やトンネルについては、5年に1回の頻度で近接目視を基本とする定期点検を行うこととされており、点検・診断・補修という一連の仕事が定期的に発生する構造になっています。
舗装についても同様です。新設が減る一方で、既存道路の打ち替え、切削オーバーレイ、路面の補修といった仕事は、交通量がある限り繰り返し発生します。工事の一件あたりの規模は小さくなりがちですが、件数としては安定しやすい領域です。
予算の裏づけ|第1次国土強靱化実施中期計画
予算面の裏づけとしては、政府が令和7年6月6日に閣議決定した「第1次国土強靱化実施中期計画」があります。内閣官房の公表によれば、326の施策のうち114施策を「推進が特に必要となる」と位置づけ、2026年度から2030年度までの5年間で20兆円強程度の事業規模を見込むとされています。
計画には、緊急輸送道路(約11,000km)にかかる約65,000橋の耐震化を2038年度までに100%完了させる目標や、大口径の下水道管(約5,000km)の健全度確保を2032年度までに100%とする目標などが含まれています。道路・舗装に関わる事業者にとって、当面の受注環境を読むうえでの前提になる計画です。
ただし、繰り返しになりますが、量があることと自社が受注できることは別です。技術者と機械と人が揃っていなければ、発注があっても応札できません。
制度と経営環境|価格転嫁と担い手確保
制度面では、2024年6月14日に公布された「建設業法及び公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律の一部を改正する法律」(令和6年法律第49号)の影響が大きくなっています。国土交通省の説明によれば、著しく低い労務費での見積依頼・見積提出の禁止、資材価格高騰時の変更方法の法定記載事項化、著しく短い工期による契約の禁止などが柱です。中央建設業審議会による「労務費に関する基準」は令和7年12月2日に勧告され、令和7年12月12日に施行されています(一般財団法人建設物価調査会の解説による)。
また、2024年4月から建設業にも時間外労働の上限規制が適用されました。道路工事は夜間や休日の施工が多く、交通規制を伴うために工程の自由度が低い分野です。上限規制のもとで同じ工事量をこなすには、人員か工期のどちらかに余裕が必要になります。
アスファルト合材をはじめとする資材価格の変動も、収益に直結します。改正建設業法が資材高騰時の変更方法を契約の記載事項としたのは、この負担が一方に偏ることを防ぐ趣旨です。契約実務の見直しが進んでいるかどうかは、会社ごとに差が出ている点です。
事業承継の観点で何が論点になるか
道路・舗装工事会社の承継では、次の点が焦点になります。
第一に、公共工事の受注資格です。経営事項審査の評点と入札参加資格が、受注できる工事の規模を決めます。評点は技術者の在籍状況や完成工事高に左右されるため、承継の前後で技術者が抜けると、受注可能な範囲そのものが変わります。
第二に、設備です。合材プラント、舗装機械、大型車両などを保有している場合、その稼働状況・取得時期・残存価値の把握が欠かせません。設備は評価の対象であると同時に、更新投資の負担でもあります。
第三に、後継者です。帝国データバンクの2025年調査では国内企業の後継者不在率は50.1%とされています。技術者の高齢化と経営者の高齢化が重なると、選択肢は急速に狭まります。
M&Aで引き継ぐときに整理しておきたいこと
一般に、次のような情報が確認されます。
- 建設業許可の業種・区分・有効期限、経営業務管理責任者と専任技術者の氏名・年齢
- 経営事項審査の評点推移と、入札参加資格を持つ発注機関の一覧
- 完成工事高の内訳(官/民、元請/下請、新設/維持修繕)と、主要な発注者
- 技術者・技能者の名簿(保有資格、年齢、勤続年数)と、オペレーターの確保状況
- 保有機械・車両の一覧(取得時期、稼働状況、更新予定)と、リース契約の内容
- 資材の調達先と、価格変動を契約でどう扱っているか
- 労働時間管理・社会保険の加入状況、夜間工事の労務実態
公共工事に依存している会社ほど、経審と入札資格の内容が価値の中核になります。承継のタイミングを検討する際は「M&Aを検討すべきタイミング」もあわせてご覧ください。
当社は成功報酬型のもと、道路・舗装工事業を含む中小企業の事業承継・会社売却をご支援しています。守秘義務を徹底のうえ、初期の整理から対応いたします。
調査・設計側の動きは「測量・建設コンサルタント業界の動向|公共投資と技術者要件」でも整理しています。費用の考え方は料金体系のページに公開しています。
本稿の記述は執筆時点(2026年9月)の公表資料に基づきます。最新の情報は各所管官庁の公表をご確認ください。