「成功報酬は一括で払うのですか」「分割にはできませんか」——ご相談の中で、ときどきいただくご質問です。手数料の金額は数千万円になることもありますので、資金繰りの観点から気になるのは当然です。本稿では、手数料の支払いが一括を原則とする理由と、譲渡代金の受取に時間差がある場合の考え方、そして分割以外の現実的な選択肢を整理します。
一括払いが原則である理由
成功報酬は、クロージング時に一括でお支払いいただくのが実務の原則です。理由は二つあります。
第一に、その時点で譲渡代金が入っているからです。株式譲渡では、クロージング日に買い手から売り手へ譲渡代金が支払われます。つまり、手数料を払うための原資が手元にある状態です。分割にする必要が、資金繰りの面では生じにくいのです。
第二に、関係が終了するタイミングだからです。クロージングをもって、仲介会社の役務は完了します。以後、売り手は会社を離れ、住所や連絡先が変わることもあります。長期にわたる分割債権を残すことは、双方にとって管理上の負担になります。
なお、当社の場合、支払いは基本合意時の中間金とクロージング時の成功報酬の二回に分かれています。これは分割払いではなく、支払時期の異なる別々の報酬という位置づけです。中間金は成功報酬額の10%で、成約時の成功報酬から全額を差し引きます(基本合意後に不成立となった場合、返金はいたしません)。ただし、基本合意後に不成立となった場合、返金はいたしません。
譲渡代金そのものが分割で入る場合
問題になるのは、譲渡代金の受取に時間差があるケースです。中小企業のM&Aでも、次のような設計は珍しくありません。
| 形 | 内容 | 手数料で論点になること |
|---|---|---|
| 分割払い | 譲渡対価を数回に分けて支払う | 手数料の算定基礎は総額か、受領済み分か |
| アーンアウト | 成約後の業績に応じて追加の対価を支払う | 不確定な部分を基準額に含めるか |
| 段階取得 | 株式の一部をまず譲渡し、後日残りを譲渡する | 各回で手数料が発生するのか |
| 役員退職金との組み合わせ | 対価の一部を退職金として受け取る | 退職金部分が基準額に入るか |
これらの場合、契約書で手数料の算定基礎と支払時期をどう定めているかがすべてです。「譲渡対価の総額を基礎とし、クロージング時に一括で支払う」と定められていれば、まだ受け取っていない分についても、クロージング時点で手数料が発生することになります。
これは売り手にとって資金繰りの負担になり得ます。したがって、対価の受取が分割になる設計を検討する段階で、手数料の支払時期も同時に確認しておく必要があります。設計が固まってから相談するのでは遅い、という性質の論点です。
アーンアウトがある場合の考え方
アーンアウトは、成約後の一定期間の業績目標の達成度に応じて、追加の対価が支払われる仕組みです。売り手と買い手の価格に対する見方が離れているときに使われます。
手数料の観点では、不確定な追加対価を基準額に含めるかどうかが論点になります。実務では、確定している部分を基礎として算定し、追加対価が実際に支払われた時点で改めて算定する、という取扱いが分かりやすい形です。まだ受け取っていない、そして受け取れるかも分からない金額に手数料を先払いするのは、売り手にとって合理的とは言えません。
ただし、これは契約の定め次第です。「対価の総額」と書かれていれば、アーンアウトの上限額まで含めて解釈される余地があります。曖昧なまま進めず、契約時に確認してください。
アーンアウトの仕組みと注意点は「アーンアウト条項とは」、税務上の扱いは「アーンアウト対価の税務」で扱っています。税務の取扱いは事情により判断が分かれますので、税理士にご確認ください。
中間金の支払いが負担になる場合
資金繰りの観点で実際に問題になりやすいのは、成功報酬より中間金です。基本合意の時点では譲渡代金がまだ入っていないため、手元資金からの支出になるからです。
当社の中間金は成功報酬額の10%です。成功報酬が2,000万円であれば中間金は200万円、4,500万円であれば450万円になります。数十万円ではなく数百万円ですので、いつ、いくら必要になるかを早い段階で把握しておくことが大切です。
具体的には、基本合意の日程が見えてきた時点で、次を確認してください。①中間金の金額 ②支払期日 ③手元資金で払えるか ④定期預金などを解約する必要があるか。解約に日数がかかる資産しかない場合は、逆算して準備を始める必要があります。
なお、会社の資金から支払うのか、オーナー個人の資金から支払うのかは、仲介契約の当事者が誰かによります。会社の資金を個人的な目的に使うことになると、税務上の問題が生じ得ますので、この点は必ず顧問税理士にご確認ください。
分割以外に検討できること
分割払いをお願いするより、実務上効果が大きい方法がいくつかあります。
- 決済の設計を見直す——譲渡代金の受取日と手数料の支払期日の間に、数営業日の余裕を設けてもらう
- 報酬体系そのものを比べる——着手金型か成功報酬型か。どちらが自社の資金繰りに合うか
- 専門家費用の発生時期をずらす——弁護士・会計士への依頼時期と支払時期を整理する
- 補助金の活用を検討する——事業承継・M&A補助金など、費用の一部が対象となる制度があります。要件や公募時期は年度により変わりますので、最新の公募要領をご確認ください
- 納税資金と分けて管理する——翌年の納税分を先に別口座に移し、使ってしまわないようにする
とくに二つ目は本質的です。着手金や月額報酬を支払う体系であれば、成約前から現金が出ていく代わりに、成功報酬が抑えられる余地があります。逆に、成約前の費用がない体系では、その分が成功報酬に織り込まれます。どちらが有利かは、成約するかどうかで変わります。詳しくは「着手金がある会社とない会社」をご覧ください。
当社は、相談料・着手金・月額報酬を0円としています。成約前のご負担を抑えることを重視した体系です。
契約前に確認しておく項目
支払条件について、契約前の確認事項を整理します。
- 支払時期——クロージング当日か、何営業日以内か
- 算定基礎——対価の総額か、受領済みの金額か
- 分割対価の扱い——譲渡代金が分割で入る場合、手数料も分割になるか
- アーンアウトの扱い——追加対価が発生した場合に改めて算定するか
- 遅延した場合——遅延損害金の定めはあるか、利率はいくらか
- 中間金——金額、時期、成功報酬からの控除、返金の可否
これらは、契約書を読めば分かるはずの事柄です。読んでも分からない書き方になっているなら、その点を質問してください。質問に対する回答の明快さは、その会社の姿勢を測る材料になります。
当社では、ご契約の前に支払時期と金額の見込みを書面でお示ししています。ご相談の段階で費用が発生することはありませんので、資金繰りの見通しも含めてご相談いただければと思います。
よくあるご質問
Free Consultation
いつ、いくら必要になるか。先に把握できます。
中間金と成功報酬の金額・時期を、ご契約の前に書面でお示しします。資金繰りの見通しも含めてご相談ください。
メール(info@platinumpartners.jp)でも承ります。