自社ビル、工場、社長名義の土地、長年使ってきた機械。これらを持つ会社では、帳簿の金額と実際の価値が離れていることがよくあります。買い手は必ずそこを見ますし、価格の根拠としても問われます。このとき「評価を取るかどうか」「誰の負担で取るか」が費用の論点になります。本稿では、評価の重さの違いと、依頼する時期の判断を整理します。

なぜ評価が必要になるのか

評価が問題になる場面は、おおむね次の四つです。

  • 簿価と実勢が大きく離れている——古くから持つ土地は簿価が低く、含み益が大きいことがある。逆に取得時期によっては含み損もある
  • 買い手が調査で確認する——デューデリジェンスで不動産の評価を取ることがある。その結果が価格の議論に使われる
  • 金融機関が見る——買い手が借入で資金を調達する場合、担保としての評価が必要になる
  • 切り離しを検討している——不動産だけを手元に残す、別法人に移すといった判断の前提として金額が要る

つまり評価は、「価格の根拠が必要になったときに必要になる」ものです。持っているだけで必ず取るものではありません。不動産の扱い方そのものは「不動産を持つ会社の売却」で扱っています。

評価の重さは三段階ある

「評価を取る」と言っても、内容も費用も大きく違います。目的に対して重すぎる評価を頼めば費用の無駄になり、軽すぎれば交渉で使えません。

種類内容使える場面費用の考え方
簡易査定不動産会社などによる売却想定価格の提示自社の現状を把握する。社内での検討材料無償で応じる先もある。ただし根拠の記載は簡素
調査報告・意見書専門家が根拠を示してまとめた書面買い手への説明資料。社内の意思決定範囲と対象の数で変わるため見積もりを取る
不動産鑑定評価書不動産鑑定士による正式な鑑定評価価格の根拠として対外的に最も強い。裁判や税務の場面でも使われる最も高い。対象・目的・期限で変わる

機械設備や車両については、中古市場の相場を扱う買取業者や、機械の評価を行う専門業者に査定を依頼します。稼働しているかどうか、メンテナンスの記録があるかどうかで金額は変わります。在庫は業種によって扱いが大きく違い、値が付かない場合もあります。

費用の水準は対象と目的によって幅がありますので、複数の先から見積もりを取り、「何のために使う評価か」を伝えて比べてください。目的を伝えると、必要な重さが変わり、金額も変わります。

誰が、いつ依頼するのが有効か

費用の負担者と時期は、セットで考えます。

取り方負担効き方
売り手が交渉前に取る売り手価格の根拠を先に示せる。希望価格の説明がしやすい
買い手が調査で取る買い手買い手の前提で作られる。売り手の主張と食い違うことがある
双方で一社に依頼する折半など協議中立性は高いが、依頼先と条件の合意に時間がかかる

実務上おさえておきたいのは、交渉が進んでから出す評価は効きにくいということです。価格の話が煮詰まった後で「実はこの土地はもっと価値がある」と資料を出しても、後出しに見えてしまいます。含み益が大きい資産があるのであれば、候補先に検討してもらう段階で材料として示しておくほうが自然です。

もう一つは資料の鮮度です。数年前に取った評価は、相場が動いていれば使えません。いつ時点の評価かは必ず確認されますので、古いものがある場合は更新の要否を検討してください。

なお、買い手が実施する調査の費用を誰が負担するのかという論点は別にあります。「デューデリジェンス費用は誰が負担するか」をご覧ください。

費用をかける価値があるかの判断

評価は無料ではありませんので、かける価値があるかを先に判断します。目安として、次のいずれかに当てはまるなら検討する価値があります。

  • 総資産に占める不動産の割合が大きい——価格の議論が不動産中心になる
  • 簿価と実勢の差が大きいと見込まれる——古くから保有している、周辺の開発が進んだ
  • 複数の候補先が価格に疑問を示している——共通の根拠資料があれば議論が進む
  • 不動産を切り離す判断をする——残すか渡すかの前提として金額が要る
  • 相続や他の株主との関係で金額の根拠が要る——社内外への説明に使う

逆に、不動産の比重が小さく、価格の議論が損益中心になる会社では、正式な鑑定評価まで取る必要は乏しいことが多いといえます。まず簡易査定で当たりを付け、議論の焦点になってから重い評価に進むという順序が無駄がありません。

株価そのものの算定書を取るかどうかは、また別の判断になります。「株価算定書は必要か」で整理しています。

評価の前にやっておきたい整理

評価を依頼する前に、資産の状態を整えておくと、費用も時間も抑えられます。

  • 登記簿と現況の一致——増築部分が未登記、境界が未確定といった状態は、評価も譲渡も止めます
  • 名義の確認——社長個人の名義になっている土地に会社の建物が建っている、といった形は先に整理の方針を決めます
  • 賃貸借の状態——借地・貸地の契約書、賃料、期間を揃えます
  • 遊休資産の洗い出し——使っていない資産は、譲渡の対象にするかどうかを先に決めます
  • 固定資産台帳の整理——除却済みの資産が台帳に残っていないかを確認します

とくに未登記や境界の未確定は、後から出てくると日程に影響します。測量や登記が必要になれば、その費用と期間も見込まなければなりません。遊休資産の扱いは「事業に使っていない資産の扱い」で扱っています。

当社は成功報酬型で、相談料・着手金・月額報酬はいただきません。評価が必要かどうか、どの重さのものが要るかについては、会社の資産構成を拝見したうえで、必要な場合にだけご提案します。必要のない費用をかけていただく意味はありませんので、まずは現状の整理からご相談ください。

よくあるご質問

A.必須ではありません。不動産の比重が小さく、価格の議論が損益中心になる会社では、簡易査定で足りることが多くあります。総資産に占める不動産の割合が大きい、簿価と実勢の差が大きい、候補先が価格に疑問を示している、といった場合に検討する価値があります。まず軽い方法で当たりを付け、焦点になってから重い評価に進む順序をお勧めします。
A.対象の数、所在地、目的、期限によって大きく変わるため、一律の金額は申し上げられません。複数の先から見積もりを取り、何のために使う評価かを伝えたうえで比べてください。目的を伝えることで必要な重さが変わり、費用も変わります。
A.評価は前提の置き方で金額が変わりますので、まず前提条件を確認してください。想定した用途、比較した取引事例、稼働状況の認識などです。そのうえで、こちらの主張に根拠があるのであれば、資料を示して説明します。交渉が進んだ段階で新しい資料を出すと後出しに見えますので、含み益が大きい資産は早い段階で材料として示しておくほうが有効です。
A.権利関係の整理が先になります。借地権の有無、賃料の水準、契約の形によって評価も譲渡の設計も変わります。譲渡にあたっては、土地も一緒に渡すのか、賃貸借を継続するのかを決める必要があり、税務上の影響も生じます。顧問税理士と、必要に応じて不動産の専門家を交えて方針を決めてください。

Free Consultation

評価が必要かどうかから、ご相談ください。

資産の構成を拝見し、どの段階でどの評価が要るかをご説明します。必要のない費用はご提案しません。ご相談の段階で費用は発生しません。
フォームは24時間受け付けており、2営業日以内にご返信します。メール(info@platinumpartners.jp)でも承ります。基本合意時の中間金と成功報酬については料金体系をご覧ください。

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Author & Supervisor

執筆・監修:株式会社プラチナパートナーズ 取締役副社長 神垣 宏康

東京都千代田区(日比谷)のM&A仲介・事業承継アドバイザリーファーム、株式会社プラチナパートナーズ取締役。成功報酬型のもと、中小企業の事業承継・会社売却を初回相談から成約まで一気通貫で支援しています。役員紹介・会社概要はこちら