「顧問税理士に相談したら、うちでもできると言われた」「弁護士に契約書を作ってもらえば、仲介は要らないのではないか」——こうしたご質問をいただくことがあります。実際、士業が担える部分は少なくありません。本稿では、仲介会社を通す場合と、士業に直接依頼する場合の費用と役割の違いを、どちらかを勧める立場を離れて整理します。税務・法務の判断はそれぞれの専門家にご確認ください。
士業と仲介会社では、報酬の決まり方が違う
まず、費用の構造そのものが異なります。ここを押さえないと比較になりません。
| 項目 | 仲介会社 | 士業への直接依頼 |
|---|---|---|
| 報酬の形 | 成功報酬型が中心。成約が条件 | 時間制(タイムチャージ)や業務ごとの定額が中心 |
| 成約しなかった場合 | 体系により、負担がないこともある | 作業した分の報酬は発生する |
| 金額の予見性 | 基準額が決まれば計算できる | 作業量により変動する |
| 対象となる業務 | 探索から成約までの全工程 | 依頼した特定の業務 |
大きな違いは、成約しなかった場合です。成功報酬型の仲介では成約しなければ報酬が発生しない設計があり得ますが、士業への依頼では、作業をした以上その分の報酬が発生します。これはどちらが得かという話ではなく、リスクを誰が負っているかの違いです。
当社は相談料・着手金・月額報酬を0円とし、成功報酬型を採っています。成功報酬は移動総資産レーマン方式(基準額=株式価値+負債総額)で算定し、最低額を2,000万円(税別)です。中間金は成功報酬額の10%で、成約時の成功報酬から全額を差し引きます(基本合意後に不成立となった場合、返金はいたしません)。ただし、基本合意後に不成立となった場合、返金はいたしません。
士業が担う領域、担いにくい領域
M&Aの工程を分解すると、それぞれに向き不向きがあることが分かります。
| 工程 | 主な担い手 | 備考 |
|---|---|---|
| 相手先の探索・打診 | 仲介会社・FA・公的機関 | 候補のネットワークと打診の実務が必要 |
| 企業概要書の作成 | 仲介会社・FA | 買い手が判断できる形に整理する作業 |
| 企業価値の試算 | 会計士・税理士・仲介会社 | 評価手法は共通。市場の相場観は経験に依存 |
| デューデリジェンス | 会計士・税理士・弁護士・社労士 | 買い手側が依頼するのが通例 |
| 契約書の作成・レビュー | 弁護士 | 法務の専門領域 |
| 登記手続 | 司法書士 | クロージング後の実務 |
| 税務の設計・申告 | 税理士 | 手取りを左右する重要な領域 |
| 交渉の中継・調整 | 仲介会社・FA | 当事者間に立って条件を詰める |
この表から分かるのは、士業が担えない工程があるということです。とくに相手先の探索と打診は、ネットワークと実務の蓄積が必要な領域で、顧問税理士がたまたま適切な買い手を知っているという幸運に頼ることになります。
逆に、相手がすでに決まっている場合は事情が変わります。同業からの打診がある、取引先から話が来ている、親族や従業員への承継を検討している——こうした場合、探索の工程は不要です。契約書の作成と税務の設計だけであれば、士業への直接依頼で完結することは十分にあり得ます。
相手が決まっている場合の費用比較
相手が決まっている案件で、士業に直接依頼した場合の費用を考えます。必要になるのは主に次の業務です。
- 企業価値の試算——価格の妥当性を検証する
- 契約書の作成・レビュー——株式譲渡契約書、表明保証、補償の設計
- 税務の設計——譲渡益、退職金、手取りの試算
- 登記・名義書換——クロージング後の手続
- 確定申告——譲渡した翌年の申告
これらの費用は、依頼する事務所と業務の範囲によって大きく異なります。必ず事前に見積もりを取ってください。とくに時間制の場合、作業が長引けば費用も増えますので、想定される総額と上限の有無を確認しておくことが大切です。
このケースでは、仲介手数料が発生しない分、総額を抑えられる可能性があります。相手が決まっているなら、仲介を使わないという判断は合理的です。当社にご相談いただいた場合も、すでに相手が決まっているお話であれば、その旨を率直にお伝えします。
ただし注意点があります。相手が決まっていても、条件の交渉は必要です。当事者同士で価格や雇用条件を詰めるのは、人間関係がある分かえって難しいことがあります。この点を誰が担うかは、考えておく必要があります。
士業に依頼するときの注意点
顧問税理士や弁護士に依頼する場合に、確認しておくべき点を挙げます。
- M&Aの経験があるか——顧問業務とM&Aの実務は別の領域です。経験の有無を率直に確認してください
- 誰の立場で助言するのか——会社の顧問である場合、譲渡後は買い手の会社の顧問になり得ます。立場の整理が必要です
- 報酬の見積もり——時間制か定額か。上限の定めはあるか
- 業務の範囲——どこまでを担い、どこからは対象外か
- 秘密保持——社内の誰まで知ることになるか
二つ目は見落とされやすい論点です。会社の顧問税理士は、譲渡後も引き続き会社に関与する可能性があります。売り手個人の利益と、会社の利益が一致しない場面では、どちらの立場で助言するのかが問題になります。この点は「M&Aと顧問税理士」で整理しています。
また、顧問税理士に相談することで情報が広がるリスクもあります。担当者が変われば、社内の誰が知ることになるか分かりません。秘密保持の観点は「M&Aの情報漏洩はなぜ起きる」をご覧ください。
併用するという選択
実務では、どちらか一方ではなく併用するのが一般的です。仲介会社を使う場合でも、税務の設計は顧問税理士が担い、契約書のレビューは弁護士が担います。
むしろ、仲介会社だけに任せきりにするのは望ましくありません。仲介会社は売り手と買い手の間に立つ立場であり、売り手個人の税務の最適化を担う立場ではないからです。手取りを左右する税務の判断は、必ず顧問税理士とご一緒に確認してください。
費用の観点では、仲介手数料と専門家費用は別々に発生します。仲介を使えば専門家費用が要らなくなるわけではありません。全体像は「M&Aで仲介手数料以外にかかる費用」「専門家費用の目安と分担」で整理しています。
したがって現実的な問いは「仲介か士業か」ではなく、「相手先の探索と交渉の中継を、誰に担ってもらうか」です。ここが必要なら仲介会社やFAを使い、不要なら士業への直接依頼で足りる——これが判断の分かれ目です。
判断の順序
最後に、判断の順序を整理します。
- ①相手は決まっているか——決まっているなら、探索の工程は不要
- ②交渉を自分で担えるか——価格や雇用条件を、相手と直接詰められるか
- ③顧問の専門家にM&Aの経験があるか——率直に確認する
- ④それぞれの費用を見積もる——仲介手数料と、士業費用の総額
- ⑤手取りで比べる——費用と税金を差し引いた金額で判断する
①と②がいずれも「はい」であれば、士業への直接依頼で進める余地は十分にあります。仲介会社を使うべき場面と、そうでない場面がある——これは率直に申し上げておくべきことだと考えています。
当社は、ご相談の段階で費用を頂戴しません。すでに相手が決まっているお話や、士業への直接依頼で足りると思われるお話であれば、その旨をお伝えします。ご判断の材料として、手数料の見込みだけでもお聞きいただければと思います。
よくあるご質問
Free Consultation
仲介が要らない場面も、率直にお伝えします。
すでに相手が決まっているお話であれば、その旨をお伝えします。ご相談の段階で費用は発生しません。
メール(info@platinumpartners.jp)でも承ります。