クロージングが終わり、譲渡代金が入金され、仲介手数料も支払った——これで終わりではありません。翌年には、確定申告と納税が控えています。しかも金額は小さくありません。入金された金額をそのまま使える資金と考えていると、翌年に足りなくなります。本稿では、譲渡した翌年に発生する費用と支出を整理します。具体的な税額と手続は個別の事情によりますので、必ず税理士にご確認ください。
翌年に何が起きるか
株式を譲渡した年の所得は、翌年の確定申告で申告し、納税します。譲渡した年のうちに納めるわけではありません。この時間差が、資金管理の落とし穴になります。
| 時期 | 内容 |
|---|---|
| 譲渡した年 | 譲渡代金の受領、仲介手数料・専門家費用の支払い |
| 翌年2月〜3月 | 確定申告。所得税の納付 |
| 翌年6月頃〜 | 住民税の納付(普通徴収の場合は分割) |
| 翌年度 | 国民健康保険料等の算定に影響する場合がある |
株式譲渡益への課税は20.315%(所得税15%・復興特別所得税0.315%・住民税5%)です。譲渡益が3億円であれば、税額はおおむね6,000万円を超える計算になります。
このうち住民税の5%相当は、翌年の6月頃から納付が始まります。所得税の納付から数か月遅れてやってくるため、「所得税を払ったから終わり」と考えていると、その後に請求が届くことになります。
確定申告そのものにかかる費用
申告を税理士に依頼する場合、その報酬が発生します。金額は依頼先と申告の内容によって異なりますので、事前に見積もりを取ってください。
注意したいのは、会社の顧問税理士が、個人の確定申告も担当するとは限らないという点です。会社の顧問契約は法人の税務が対象であり、オーナー個人の譲渡所得の申告は別の業務です。しかも譲渡後は、会社の所有者が買い手に変わっています。
したがって、誰に個人の申告を依頼するのかを、譲渡の前に決めておく必要があります。譲渡が終わってから探すと、株式の取得の経緯や譲渡の内容を一から説明することになり、手間も費用も増えます。
申告の手続そのものについては「株式売却後の確定申告」で整理しています。必要書類、申告期限、分離課税の扱いなどをご確認ください。
取得費が分からないと、税額が増えることがある
譲渡所得は、譲渡による収入金額から、取得費と譲渡費用を差し引いて計算します。したがって取得費が大きいほど、課税される所得は小さくなります。
問題は、取得費が分からない場合です。創業時に出資した金額の記録が残っていない、先代から相続や贈与で取得したが当時の資料がない——実務では珍しくありません。
取得費が不明な場合、概算取得費(収入金額の5%)で計算せざるを得ないことがあります。この場合、実際の取得費がそれより大きければ、その分だけ税負担が重くなります。
したがって、譲渡を検討し始めた段階で、取得の経緯と資料を確認しておくことが大切です。古い資料でも、出資の記録、贈与契約書、相続税の申告書などが手がかりになります。どの資料が取得費の証明になるかは個別の判断になりますので、税理士にご確認ください。
社会保険料と、その他の影響
税金以外にも、所得が大きく増えた年の翌年には影響が及ぶことがあります。
- 国民健康保険料——市区町村によって算定方法が異なりますが、所得に応じて保険料が変わる仕組みのため、影響を受ける場合があります
- 後期高齢者医療制度の保険料・自己負担割合——所得の状況により変わることがあります
- 各種の所得制限——所得を基準とする制度に影響する場合があります
- ふるさと納税の上限——所得が増えた年は上限も変わります
会社を退任して被用者保険から国民健康保険に切り替わる場合、所得が跳ねた年の翌年度の保険料が高くなることがあります。金額として無視できない場合がありますので、事前に見込みを確認しておくことをお勧めします。
この論点は「譲渡した翌年の住民税・社会保険料」で整理しています。制度は自治体や年度によって異なりますので、具体的な影響は税理士および各自治体の窓口にご確認ください。
資金をどう管理しておくか
実務的な対応は単純です。納税資金を、先に分けておくことです。
- 入金があった時点で、税額の見込みを別口座に移す——普段使う口座に置かない
- 住民税の分も含める——所得税だけでなく、翌年6月以降の住民税も見込む
- 社会保険料の増加分も見込む——該当する場合
- すぐに使わない——不動産の購入や投資の判断は、納税を済ませてから
- 解約に日数がかかる商品に入れない——納付期限に間に合うようにしておく
とくに四つ目は重要です。まとまった資金が入ると、その使い道の話が持ち込まれることがあります。納税を済ませる前に資金を動かすと、納付時に手元が足りなくなります。
納税資金の準備については「納税資金をどう準備するか」で整理しています。譲渡代金の受取時期と納付時期の関係を、事前に確認しておいてください。
成約前に、翌年までの見通しを立てる
ここまでの内容は、成約してから考えるのでは遅いものばかりです。譲渡を検討する段階で、翌年までの見通しを立てておく必要があります。
試算しておくべき数字は次のとおりです。①譲渡代金 ②仲介手数料と専門家費用 ③譲渡益にかかる税額 ④翌年の住民税 ⑤社会保険料の変動 ⑥最終的に手元に残る金額。
さらに、譲渡益が大きい場合はミニマムタックスの影響も検討が必要です。2025年分から3.3億円控除・22.5%、2027年分からは1.65億円控除・30%として強化されます。2026年12月31日までの譲渡契約であれば現行制度が適用されますので、時期が判断材料になり得ます。詳しくは「ミニマムタックスとは」をご覧ください。
当社では、ご契約の前に手数料を含む総額の目安を書面でご提示しています。税額の試算については、顧問税理士とご一緒に確認いただくことをお勧めしています。税務の判断は税理士の領域ですので、必ず専門家にご確認ください。ご相談の段階で費用が発生することはありません。
よくあるご質問
Free Consultation
翌年までの見通しを、先に立てましょう。
手数料を含む総額の目安をご契約前に書面でお示しします。税額の試算は顧問税理士とご一緒にご確認ください。
メール(info@platinumpartners.jp)でも承ります。