合格基準には、数字が3つ出てきます。総得点70〜80%程度、科目別最低50%程度、 そして相対評価です。

この3つの組み合わせが何を意味するのか。「実務経験で押し切る」ことができない設計になっている、というのがこの記事の結論です。

総得点の基準は70〜80%程度

募集要領は、合格基準をこう定めています。

本試験全体の合格基準として、総得点の70-80%程度の得点率を合格基準として設定

60問であれば、42〜48問程度の正解が目安になります。 難易度は「M&A実務を行っている者であれば、把握しておくことが期待される基本的な水準(一般的な社会人が一定期間の学習を行えば合格できる水準)」とされています。

ただし、広範な試験範囲を設定することで全体の難易度を確保する、という考え方が資料に示されています。 1問1問が難問なのではなく、範囲が広いことで難しくなるタイプの試験です。実際、公表されている出題範囲は251項目に及びます。

科目別にも最低ラインがある|50%程度

総得点だけでは合格できません。募集要領には、こう書かれています。

(特定科目のみの得点による)合格を防ぐ観点から、科目別合格最低基準(現時点では50%程度を想定)を設定

これが、この試験でいちばん実務家に効く条件です。

M&A実務が35〜40%を占めるので、実務科目だけで高得点を取れば総得点は伸びます。 しかし法務が10〜11問しかないところで半分を割れば、そこで不合格になります。 財務・税務も、倫理・行動規範も同じです。

資料2では、この方針を「一定の難易度を設定しつつ、受験者に試験範囲の網羅的な学習を求めるために」と説明しています。 得意分野で稼ぐのではなく、苦手分野をなくすことが求められる試験です。

合否は即時ではない|初回は相対評価

CBT方式の試験は、終了と同時に結果が出るものが多くあります。この試験はそうなりません。

その点では、CBT方式で試験実施するものの、合否判定は即時判定ではなく、合否判定は後日行うことを想定する。

理由は、初回試験であるために相対評価を行うことが想定されているからです。 一律の合格点をあらかじめ固定するのではなく、受験者全体の得点分布を踏まえて、最終的に試験委員会が合否を判定する設計です。

なお、評価方法についてはあらかじめ受験者に周知を行い、合否判定に対する混乱・疑義が生じないようにする、とも記載されています。

「70%取れば必ず通る」と断定できる段階ではない、ということです。目安は目安として、余裕を持った得点を目指すのが現実的な構えになります。

禁忌肢|総得点とは別の不合格ルート

倫理・行動規範の科目にだけ、禁忌肢の設定が検討されています。

倫理・行動規範に著しく反するような支援者を排除する目的で、それを正しいと理解することに大いに問題がある誤答肢について、禁忌肢を設定する。

想定されている設計は、禁忌肢を設定した設問を複数設け、それらの一定数の誤答をもって不合格とするというものです。 つまり、総得点が合格ラインを超えていても落ちる経路があるということになります。

資料2のサンプル問題では、「譲り受け側の社長と反社会的組織との交友関係を確認していたが、 成約や手続進行を優先するため、譲り渡し側社長には説明せずに取引を進める」という選択肢が禁忌肢として例示されています。

なお、作問技術やCBTの技術的問題で禁忌肢の設定が難しい場合は、 倫理・行動規範の科目別最低基準の引上げや配点の加重といった代替手段を講じる、とされています。 いずれにしても、倫理科目を軽く扱うと落ちるという設計の意図は変わりません。

科目免除はない|士業資格者も4科目すべて受験する

資料2には、はっきりこう書かれています。

試験(試験科目)免除の取扱いについては、少なくとも立ち上げ期においては設定しないことで一致した。

弁護士・公認会計士・税理士・中小企業診断士などの資格を持っていても、財務・税務や法務の科目が免除されることはありません。

これは、試験が各分野の専門性を測る試験ではないことの裏返しでもあります。 測っているのは「M&Aのプロセスの中で、その知識をどう使い、どこで専門家につなぐか」です。 士業の専門知識とは、重なりつつも別のものとして設計されています。

そして倫理・行動規範は、どの士業の試験にもない科目です。 中小M&Aガイドラインとスキルマップに規定された、この業務固有の行動規範を問う科目なので、免除の対象になりようがありません。

この記事について(出典と免責)

本記事は、中小企業庁が公表した資料をもとに、株式会社プラチナパートナーズが作成したものです。 本試験の実施主体・運営事業者が作成・監修・承認したものではありません。

試験の名称・科目構成・出題数・出題範囲・合格基準・実施時期等は、2026年9月時点で公表されている 検討会資料および企画競争募集要領に「想定」「現状案」として示された内容です。 試験名は資料上「中小M&A資格試験(仮称)」と表記されています。 実際の試験と異なる可能性がありますので、受験にあたっては必ず中小企業庁および試験運営事業者の 公式の試験案内をご確認ください。

出典:「中小M&A市場の改革に向けた方向性について」(中小企業庁・第4回 中小M&A市場の改革に向けた検討会 資料2、2026年3月17日)/ 同 資料3「試験科目詳細」/ 「令和7年度補正中小企業活性化・事業承継総合緊急支援事業(中小M&A資格試験実施事業)に係る企画競争募集要領」(中小企業庁、2026年3月27日) をもとに当社が作成。

よくあるご質問

A.総得点の70〜80%程度の得点率が合格基準として設定される想定です。加えて、特定科目のみの得点による合格を防ぐため、科目別合格最低基準(現時点では50%程度を想定)が設けられます。
A.試験はまだ実施されていないため、合格率は存在しません。初回試験は一律の合格点ではなく相対評価を踏まえて合否を判定する想定とされています。
A.分かりません。CBT方式で実施されますが、合否判定は即時判定ではなく後日行う想定であると募集要領に記載されています。
A.受けられません。試験科目免除の取扱いは、少なくとも立ち上げ期には設定しないことで一致したと資料2に記載されています。
A.倫理・行動規範の科目で禁忌肢が設定された場合、禁忌肢を設定した複数の設問のうち一定数を誤答すると不合格とする設計が想定されています。また、科目別合格最低基準を下回った場合も合格できません。

Book

この試験の勉強に使えるもの:試験範囲マップ|251項目と当社コラムの対応表で、どの項目にどの記事が対応しているか(と、当社が書けていない項目)を一覧できます。

中小M&A資格試験 合格問題集|一次資料で解く、全300問

当社取締役副社長 神垣宏康が執筆した問題集です。中小M&Aガイドライン第3版・知識スキルマップ・検討会資料「試験科目詳細」といった公表資料だけから全300問を作成し、全問に出典を明記しています。

本編180問(M&A実務55/市場動向・政策17/財務・税務37/法務32/倫理・行動規範39)+本試験と同じ60問・科目配分の模擬試験2回120問。各問に解説と出典。禁忌肢が想定される問題の明示と、付録に禁忌肢チェックリスト。付録の出題範囲対応表は、資料3の小項目から問番号を引ける形にしてあります。

中小M&A資格試験 合格テキスト|一次資料で体系的に学ぶ、4科目の要点

同じシリーズの基本書です(2026年10月3日刊行)。序章で制度創設の経緯・4科目と配点・合格基準・禁忌肢・CBTでの実施形式・学習プランを示し、第1章 M&A実務/第2章 中小M&A市場動向・中小企業政策/第3章 財務・税務/第4章 法務/第5章 倫理・行動規範の順に解説しています。付録は用語集・重要数値一覧・スキーム比較表・出題範囲対応表・学習記録シート。数値・期間・条文には出典を併記し、制度の数値は2026年10月1日時点です。

問題集で問われ方を確かめ、間違えた問から本書の該当節に戻る形を想定しています。付録の出題範囲対応表が、2冊の往復の索引になります。

本書は試験の実施主体・運営事業者が作成・監修したものではありません。制度の内容は2026年9月時点の公表資料に基づく「想定」「現状案」です。受験にあたっては公式の試験案内をご確認ください。

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Author & Supervisor

執筆・監修:株式会社プラチナパートナーズ 取締役副社長 神垣 宏康

東京都千代田区(日比谷)のM&A仲介・事業承継アドバイザリーファーム、株式会社プラチナパートナーズ取締役副社長。中小企業の事業承継・会社売却を初回相談から成約まで一気通貫で支援しています。役員紹介・会社概要はこちら