買収した会社の決算期が、自社と違う。揃えるべきか、そのままでよいか。変更には手続きと影響があります。判断の材料を整理します。
揃える理由
まず、何のために揃えるのかを整理します。
連結・グループでの集計が楽になる。決算期が違うと、同じ期間の数字を並べるのに手間がかかります。
監査・税務の作業が一度で済む。会計事務所への依頼も、時期を集約できます。
予算と実績の管理を揃えられる。グループの経営計画と、子会社の事業年度がずれていると、管理が複雑になります。
グループ通算制度を適用する場合、事業年度の扱いに要件があります。
逆に言えば、これらの必要が無ければ、揃えなくても構いません。
揃えないほうがよい場合
変更しないという判断もあります。
季節性がある事業。繁忙期の途中で期が切れると、期末の棚卸や売掛金が実態を表しにくくなります。現在の決算期が事業の区切りに合っているなら、動かす理由は薄い。
変更の期に手間がかかる。後述しますが、変更した期は月数が変わり、各種の計算に影響します。
独立して運営する方針。統合しないと決めたなら、決算期を揃える必要もありません。
「揃えるのが当然」ではありません。目的から判断してください。
変更の手続き
決算期(事業年度)は定款で定められているのが通常です。
したがって、変更には株主総会の特別決議による定款変更が必要です。
そして、税務署・都道府県・市区町村へ異動届出書を提出します。
登記は不要です(事業年度は登記事項ではありません)。
手続き自体は重くありませんが、議事録を必ず残してください。デューデリジェンスで確認される書類です。
具体的な手続きと期限は、税理士にご確認ください。
変更した期は短くなる
実務上、最も影響が出る点です。
たとえば3月決算を12月決算に変更する場合、変更を決めた時期によっては、4月から12月までの9か月が1事業年度になります。
この短い期で、次のことが起こります。
月割りの計算が変わる。減価償却費、各種の限度額。
申告期限が変わる。通常の時期とずれます。
前期比較がしにくくなる。12か月と9か月を並べることになります。
この期の数字は、そのままでは前期と比較できません。月平均で見るなどの調整が要ります。
役員報酬への影響
見落とされやすい論点です。
定期同額給与の判定は事業年度を単位としており、事業年度開始の日から3か月を経過する日までの改定が通常改定とされています。
決算期を変更すると、この起算日も変わります。
つまり、変更のタイミングによっては、改定できる時期が近い、あるいは過ぎているという事態が生じます。
役員報酬の改定と決算期の変更を、同じ時期に行う場合は、順序に注意してください。
必ず税理士に確認してから実行してください。
消費税への影響
もう一つの論点です。
消費税の納税義務の判定は、基準期間(前々事業年度)の課税売上高を基礎とします。
決算期を変更して事業年度の月数が変わると、基準期間の課税売上高の計算に影響し得ます。
また、簡易課税の選択届出や、課税事業者選択届出の適用期間にも関わります。
この判定は複雑です。決算期の変更が消費税の扱いを変えないかを、変更の前に税理士へ確認してください。
「決算期を変えたら、翌期から課税事業者になっていた」という事態は避けたい。
グループ通算制度がある場合
該当する場合の論点です。
グループ通算制度では、通算グループ内の法人の事業年度について取り扱いが定められています。
買収した会社を通算グループに加入させる場合、加入の時期に応じて事業年度が区切られることがあります。
また、加入時の資産の時価評価が必要になる場合もあります。
制度の適用の有無、加入の時期、決算期の変更。これらは相互に影響します。
グループで通算制度を使っている場合は、買収の設計段階から税理士に入ってもらってください。
いつ変更するか
タイミングの実務です。
クロージングと同時に変更する必要はありません。むしろ、買収直後は他にやることが多いため、無理に急がないほうがよい。
実務では、最初の決算を現行の期で一度締めてから、翌期に変更するという進め方が取られます。
理由は、前経営者の時代の締めを、従来の形で完了させられること。そして、変更の影響を計算する時間が取れることです。
急いで変更して、短い期の処理に追われるより、1年後のほうが落ち着いて進められます。
変更しない場合の工夫
揃えないと決めた場合の実務です。
月次の報告を揃える。決算期が違っても、月次の数字を同じ様式で出せば、グループでの管理はできます。
予算の期間を揃える。会計上の事業年度とは別に、管理会計上の期間を親会社に合わせる。
報告の時期を決める。子会社の決算が確定したら、いつまでに親会社へ報告するか。
決算期を揃えることと、管理を揃えることは別です。
多くの場合、後者だけで足ります。変更の手間とリスクを負う前に、検討してみてください。
本稿は2026年9月時点の一般的な整理です。個別の判定は必ず税理士にご確認ください。当社は税務顧問業務を行いません。