造園・緑化業は、建設業のなかでも業者数が長期的に減り続けている数少ない業種です。一方で、都市の緑地をめぐる制度は2024年に大きく変わり、民間主導の緑化を後押しする枠組みが新設されました。縮小する担い手と、新しく生まれつつある需要。この二つのずれが、いまの造園業界の姿を形づくっています。
造園工事業の現在地|数少ない「減っている」業種
国土交通省「建設業許可業者数調査」(令和8年3月末現在)によれば、造園工事業の許可を取得している業者は24,070業者で、前年比1.3%減(▲326業者)です。同調査では、前年同月比で取得業者数が減少した許可業種は29業種のうち6業種のみで、造園工事業は建築工事業(▲2,626業者)、土木工事業(▲1,056業者)に次いで3番目に減少数が大きい業種でした。
長期で見ると、減少幅はさらに際立ちます。平成12年3月末の35,033業者と比べると31.3%減で、これは清掃施設工事業(53.8%減)、建築工事業(37.8%減)、さく井工事業(35.1%減)に次ぐ減少率です。同じ期間に電気工事業が23.8%増、防水工事業が189.5%増と伸びているのとは対照的です。
建設業全体では、令和8年3月末の許可業者数は483,823業者で3年連続の増加です。そのなかで造園だけが減り続けているという事実は、この分野が構造的な課題を抱えていることを示しています。
制度の動き|2024年施行の改正都市緑地法
制度の側では、大きな動きがありました。「都市緑地法等の一部を改正する法律」(令和6年法律第40号)が令和6年5月29日に公布され、同年11月8日に施行されています。国土交通省の説明によれば、気候変動への対応、生物多様性の確保、Well-beingの向上といった課題に対し、都市における緑地を質・量の両面で確保することを目的とした改正です。
柱のひとつが、優良緑地確保計画認定制度(TSUNAG)です。民間事業者等による良質な緑地確保の取組を、国土交通大臣が評価・認定する制度で、令和6年11月から運用が始まっています。認定を通じて取組の価値を「見える化」することで、民間投資を呼び込むことを狙いとしています。
もうひとつが、都市緑化支援機構の制度です。地方公共団体からの要請に基づく緑地の買入れ等を行う法人を指定する仕組みで、公益財団法人都市緑化機構が指定されています。あわせて、国土交通大臣が定める「都市における緑地の保全及び緑化の推進に関する基本的な方針(緑の基本方針)」が令和6年12月20日に公表されました(令和6年国土交通省告示第1367号)。
これらの制度は、緑地の整備・維持を「コスト」から「評価される投資」へと位置づけ直そうとするものです。造園業にとっては、発注者が公共だけでなく民間の開発事業者にも広がる可能性を意味します。
発注の構造|公共に依存しやすい収益
造園工事の発注は、公園の整備・改修、街路樹の植栽と管理、公共施設の外構といった公共案件が中心になりやすい分野です。年間を通じた維持管理の委託業務(公園管理、樹木剪定、除草など)も、地方公共団体からの発注が多くを占めます。
公共依存には、良い面と悪い面があります。良い面は、年度単位で業務量が読めることと、支払いが確実であることです。悪い面は、予算の増減にそのまま影響を受けること、入札による価格競争が起きやすいこと、そして単価の改定が容易でないことです。
この点では、公益社団法人全国ビルメンテナンス協会「ビルメンテナンス情報年鑑2026」が示す傾向が参考になります。同調査では2025年度の契約単価改定率が官公庁6.2%、民間10.0%とされ、民間のほうが改定率が高くなっています。人件費が上がる局面では、民間案件を持っている会社のほうが単価を動かしやすい、という構図が読み取れます。
改正都市緑地法による民間緑化の後押しは、この意味で、造園業の収益構造を変えうる要素です。ただし、制度が動き出したばかりであり、案件として顕在化するまでには時間がかかると見るのが自然でしょう。
経営環境|職人の高齢化と技能の継承
造園業の最大の制約は人です。総務省「労働力調査」に基づく日本建設業連合会の集計によれば、2025年の建設業就業者数は478万人で、ピークの1997年(685万人)の約7割にとどまります。建設技能者は296万人で、同じく1997年(464万人)の6割強です。年齢構成では、2025年の建設業就業者のうち55歳以上が約37%、29歳以下が約12%とされています。
造園の場合、この人の問題が「技能の継承」という形で表れます。樹木の性質を読み、剪定の判断をし、景観として仕上げる技能は、マニュアル化しにくく、年数をかけて身につくものです。人が抜けることは、単に手が減ることではなく、判断ができる人がいなくなることを意味します。
2024年4月からは建設業にも時間外労働の上限規制が適用されました。造園工事は季節性が強く、植栽の適期や剪定の時期に業務が集中しやすい分野です。繁忙期の労働時間をどう管理するかは、実務上の課題として残ります。
事業承継の観点で何が論点になるか
造園会社の承継では、次の点が焦点になります。
第一に、建設業許可の維持です。造園工事業の許可には、経営業務管理責任者と営業所ごとの専任技術者が必要です。造園施工管理技士などの有資格者が経営者様ご本人しかいない場合、退任がそのまま許可の問題になります。
第二に、公共工事の受注資格です。経営事項審査の評点と、自治体ごとの入札参加資格が、受注できる業務の範囲を決めます。維持管理の委託業務についても、過去の履行実績が評価されることが一般的です。
第三に、職人の在籍です。技能を持つ職人が承継後も残るかどうかは、買い手が最も慎重に見る点です。年齢構成、勤続年数、保有資格を一覧にしておくことが有効です。
そして後継者です。帝国データバンクの2025年調査では国内企業の後継者不在率は50.1%とされています。業者数が31%減っているという事実は、後継者がいないまま廃業を選んだ会社が積み重なってきた結果でもあると考えられます。従業員の定着については「従業員の定着|M&A後に人が辞めないための考え方」もご参考ください。
M&Aで引き継ぐときに整理しておきたいこと
一般に、次のような情報が確認されます。
- 建設業許可(造園工事業)の有効期限、経営業務管理責任者・専任技術者の氏名と年齢
- 造園施工管理技士、樹木医、植栽・剪定に関する技能資格の保有者一覧
- 経営事項審査の評点推移と、入札参加資格を持つ発注機関の一覧
- 売上の内訳(工事/維持管理委託、公共/民間)と、発注者ごとの集中度
- 年間委託業務の一覧(業務名、期間、金額、更新実績)
- 職人の名簿(年齢、勤続年数、保有資格、担当領域)と、外注職人の確保状況
- 保有機械・車両(高所作業車、チッパー等)の一覧と更新予定
- 資材・苗木の調達先と、圃場を保有している場合はその状況
造園業は、技能が人に宿る事業です。職人が在籍し、発注が続いているうちであれば、引き継ぐ価値があります。反対に、人が抜けて受注できる業務が減ってからでは、選択肢は限られます。
当社は成功報酬型のもと、造園業を含む中小企業の事業承継・会社売却をご支援しています。守秘義務を徹底のうえ、初期の整理から対応いたします。
建設業全体の動きは「建設業界の動向|担い手不足と2024年問題のなかでの事業承継」でも整理しています。費用の考え方は料金体系のページに公開しています。
本稿の記述は執筆時点(2026年9月)の公表資料に基づきます。最新の情報は各所管官庁の公表をご確認ください。