資料3の中小企業政策で●(優先項目)が付いている4つのうちの1つが、 「事業承継・M&A支援補助金制度」です。
この制度が試験で重視されるのは、金額の話だからではありません。 M&A支援機関登録制度と接続していて、市場の規律に効いているからです。
何を補助する制度か
事業承継やM&Aに要する費用の一部を補助する制度で、中小企業庁が所管しています。 名称や枠組みは年度によって見直されますが、大きく次のような領域が対象とされてきました。
- 専門家を使う費用……M&A支援機関に支払う仲介手数料・FA報酬、DDの費用、 士業等専門家への報酬など
- 事業承継に伴う取組の費用……承継後の設備投資や販路開拓など
- 廃業に関する費用……事業の一部を譲渡し、残りを整理する場合の費用など
中小M&Aでは、手数料そのものが補助の対象になり得る点が実務的に大きな意味を持ちます。 最低手数料が設定されている業界で、小規模な案件ほど手数料の負担感が重いという構造があるためです。
補助率・上限額・対象経費・公募時期は年度ごとに変わります。 試験でも実務でも、制度の趣旨と構造を押さえ、具体的な数字は その年度の公募要領で確認するのが正しい向き合い方です。
登録制度とつながっている
この制度の要点は、誰の支援なら補助の対象になるかにあります。
M&A支援機関の活用に係る費用については、 M&A支援機関登録制度に登録された機関による支援であることが、補助の要件とされる仕組みが取られています。
つまり——
- 中小M&Aガイドラインの遵守を宣言した機関が、M&A支援機関登録制度に登録される
- 登録された機関の支援でなければ、依頼者は補助金を使えない
- → 依頼者は登録機関を選ぶ動機を持つ
- → 機関はガイドライン遵守を宣言する動機を持つ
ガイドラインには罰則がありません。法律ではないからです。 それでも実効性を持っているのは、この補助金との接続があるからです。
資料2が示す資格制度の将来像——登録機関に対して担当者への資格取得の推奨や、 重要事項説明を資格保持者が行うことを求める検討——も、同じ構造の延長線上にあります。 組織の層(登録制度)に、個人の層(資格)を接続するという設計です。
依頼者への説明で、気をつけること
補助金は依頼者にとって関心の高い話題です。だからこそ、説明には注意が要ります。
ガイドラインが禁じる広告・営業の1つに、 「M&Aの成立の可能性やその条件等の意思決定に影響を及ぼす事項について、 虚偽若しくは事実に相違する又は誤認を招くような広告・営業」があります。
補助金について言えば、次のような説明は誤認を招き得ます。
- 「補助金が使えるので手数料は実質◯円です」……採択されるとは限りません
- 「申請すれば通ります」……審査があります
- 公募時期や要件を確認せずに「使えます」と断定する……年度ごとに変わります
正確には、「制度がある」「対象になり得る」「公募要領で要件を確認する必要がある」までです。 採択を前提に費用の話を組み立てない——これが線になります。
また、ガイドラインは契約締結前の説明事項として 手数料以外に依頼者が支払うべき費用(費用の種類、支払時期等)を挙げています。 補助金の申請に係る費用が発生する場合は、これも説明の対象になります。
支援者が判断してはいけないこと
補助金の該当性は、制度ごとに細かい要件が定められています。 対象事業者の要件(中小企業者・小規模企業者の定義、みなし大企業に該当しないか)、 対象経費の範囲、事業実施期間、実績報告の方法——いずれも公募要領に書かれています。
支援者の役割は、ここでも変わりません。
| できる | できない/すべきでない |
|---|---|
| 制度があることを伝える | 採択されると断定する |
| 公募要領の所在を示す | 要件該当性を結論づける |
| 自社が登録機関かどうかを正確に伝える | 補助額を前提に手数料の実質負担を提示する |
| 専門家や窓口につなぐ | 税務上の扱い(圧縮記帳等)を助言する |
最後の行に注意してください。補助金を受け取ったときの会計・税務の扱いは税務の論点であり、 税理士法第52条により、税務相談は無償であっても税理士以外は行えません。
ガイドラインの基本姿勢「自ら全てを抱え込むのではなく」が、ここでも当てはまります。
公的な窓口との関係
資料3の中小企業政策には、●が付いた事業承継・引継ぎ支援センターのほか、 中小企業活性化協議会、よろず支援拠点(中小機構)、事業承継ネットワークが 「公的団体における取組み」として並んでいます。
| 機関 | 主な役割 |
|---|---|
| 事業承継・引継ぎ支援センター | 各都道府県。後継者不在企業等への相談対応とマッチング支援 |
| 中小企業活性化協議会 | 経営改善・再生支援の相談窓口 |
| よろず支援拠点 | 中小機構。経営全般の相談窓口 |
| 事業承継ネットワーク | 地域の支援機関の連携の枠組み |
中小M&Aの実務では、再生局面の案件でこれらの窓口が関わることがあります。 ガイドラインにも「譲り渡し側が事業再生局面にある場合の中小M&A支援の在り方」という節が置かれています。
また、事業承継・引継ぎ支援センターは、専任条項下のセカンド・オピニオンの相談先としても、 経営者保証に関する相談先としても、ガイドラインに明記されています。 補助金の窓口としてだけでなく、実務の相談先として名前が出てくる——そこまで含めて押さえておく範囲です。
本記事は一般的な制度の説明です。補助金の要件・採択の可否・税務上の扱いについては、 各年度の公募要領および税理士等の専門家にご確認ください。
この記事について(出典と免責)
本記事は、中小企業庁が公表した資料をもとに、株式会社プラチナパートナーズが作成したものです。 本試験の実施主体・運営事業者が作成・監修・承認したものではありません。
試験の名称・科目構成・出題数・出題範囲・合格基準・実施時期等は、2026年9月時点で公表されている 検討会資料および企画競争募集要領に「想定」「現状案」として示された内容です。 試験名は資料上「中小M&A資格試験(仮称)」と表記されています。実際の試験と異なる可能性がありますので、 受験にあたっては必ず公式の試験案内をご確認ください。
本記事の法務・税務・会計に関する記述は一般的な制度の説明です。 個別の案件における判断は、必ず弁護士・税理士・公認会計士等の専門家にご確認ください。
出典:「中小M&A市場の改革に向けた方向性について」(中小企業庁・第4回 中小M&A市場の改革に向けた検討会 資料2、2026年3月17日)/ 同 資料3「試験科目詳細」/ 「中小M&A資格試験実施事業」企画競争募集要領(中小企業庁、2026年3月27日)/ 中小M&Aガイドライン(第3版)(中小企業庁、2024年8月)/ 中小M&A専門人材(個人)向け 使命・倫理行動規範・知識スキルマップ をもとに当社が作成。
よくあるご質問
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この試験の勉強に使えるもの:試験範囲マップ|251項目と当社コラムの対応表で、どの項目にどの記事が対応しているか(と、当社が書けていない項目)を一覧できます。
当社取締役副社長 神垣宏康が執筆した問題集です。中小M&Aガイドライン第3版・知識スキルマップ・検討会資料「試験科目詳細」といった公表資料だけから全300問を作成し、全問に出典を明記しています。
中小M&A資格試験 合格テキスト|一次資料で体系的に学ぶ、4科目の要点
同じシリーズの基本書です(2026年10月3日刊行)。序章で制度創設の経緯・4科目と配点・合格基準・禁忌肢・CBTでの実施形式・学習プランを示し、第1章 M&A実務/第2章 中小M&A市場動向・中小企業政策/第3章 財務・税務/第4章 法務/第5章 倫理・行動規範の順に解説しています。付録は用語集・重要数値一覧・スキーム比較表・出題範囲対応表・学習記録シート。数値・期間・条文には出典を併記し、制度の数値は2026年10月1日時点です。
問題集で問われ方を確かめ、間違えた問から本書の該当節に戻る形を想定しています。付録の出題範囲対応表が、2冊の往復の索引になります。
本書は試験の実施主体・運営事業者が作成・監修したものではありません。制度の内容は2026年9月時点の公表資料に基づく「想定」「現状案」です。受験にあたっては公式の試験案内をご確認ください。